|
2006年1月19日、ブラック隊員はとあるオフ会に参加した。メインはカラオケで、その後タイ料理屋へ行った。
カラオケに間に合わず、タイ料理から合流した人がいた。彼女は、得体の知れないものたちに、生活を脅かされていると話した。夜中に金縛りにあって、上からのしかかられたりしたという。
「じゃあ、おうちの見取り図を簡単に、このメモ用紙に書いて下さい。簡単でいいですよ。」
「この辺に出るんですよ。階段を上がってきて、この辺りでウロウロするんです。」
「ああ、この場所がお気に入りなんですね。」
お気に入りの場所から気配を探る。その正体は生霊でも死霊でもなかった。妖怪のそれだ。
「これ、座敷童ですね。」
「え?!本当ですか?」
「ええ。悪い事をしないように、これから説得します。」
ブラック隊員が心の中で話しかけると、間取り図の中から座敷童が現れ、説得に応じてくれた。一緒に食卓を囲み、タイ料理をつまんだ。
「俺はもう、四千年も生きているんだ。武蔵の国はさ、昔は山と森しかなかったんだよ。その頃は俺たち、木の実を食べて暮らしていたんだがな、人間が山に入ってきてからは、家の中に入るようになってさ、でも、基本的には山の方が好きなんだ。今じゃ、山も森も残っちゃいねえから、仕方なく人間の家に入っているだけのことなんだ。」
「君は座敷童なんでしょう?」
「人間が勝手にそう呼んでるだよ。」
「でも、いいものを持ってきたり、できるんでしょう?」
「ああ。だけどな、それは人間と暮らして行く上で折り合いをつけるために、仕事をすることに決めただけの事なんだ。だから、俺は今は働いていない。働かなくなってもう、百年は経つかなあ。」
「じゃ、明治時代くらいまでは働いていたんだね。近代化による宅地造成には、ついていけなくなったんだね?」
「ああ、ついて行けねえなあ。家だらけで、俺らには居場所がねえよ。」
「お食事、美味しい?」
「ああ、百年ぶりくらいで食べた。旨いなあ。」
「うちに来てくれたら、もっと美味しいもの、ご馳走するよ。ボルシチって知ってる?」
「あ、それはロシアのチャンコじゃねえか。それを食わせてくれるのか?」
「今度の水曜日に牛肉が届くから、そうしたら作ってご馳走するよ。だから、うちにおいでよ。もう、この人には迷惑をかけずにさあ。」
「ああ、いいよ。ロシアのチャンコなら文句はない。すっごく食いたいもんなあ。」
「じゃあさ、君は俺のうちに引越ししてくれるね?もう、この人には迷惑をかけないね?」
「ああ、約束する。男同士の約束だ!」
帰宅する道々、ブラック隊員は座敷童と話し合った。
「お名前は?」
「そうだな…権兵衛でいいよ。」
「名無しの権兵衛ってことだね?」
「ああ。」
こうして座敷童の権兵衛と友達になったブラック隊員であった。が、仕事はそれで終わりではなかった。件の彼女の家の中にいる妖怪全員を外へ出さなくてはならなかったのである。それには、権兵衛が協力してくれた。
数日かけて妖怪たちを全員、ブラック隊員の家に引越しさせると、ブラック隊員は件の彼女にメールで連絡をしてみた。返事はなかなかよい感じで、妖怪たちが出て行ってから、ぐっすり眠る事が出来たという。
そして、妖怪全員の今後の身のふり方を、一緒に考えた。座敷童二人と小鬼一人は、ブラック隊員を手伝いたいという。すねこすり五匹は、人間に生まれ変りたいというので、姿かたちを変えさせ、死霊ヒーラーズたちに加入させた。稲荷神社を追い出されたという狐も、ブラック隊員を手伝いたいというので、姿かたちを人間のそれに変えさせ、やはり死霊ヒーラーズたちと一緒に修行に入ってもらった。だるまが一人だけ、今後の事をゆっくり考えたいという。
そんな風に、突然妖怪の友達が出来た今日この頃のブラック隊員、1/27の金曜日、ウォーキング中に多摩川の龍神さんから突然話しかけられた。映画「千と千尋の神隠し」に出てくる白龍そっくりの姿で、もっと巨大な方だ。歩きながらお話した。
「そなたはわしが怖くないのか?」
「ええ。あなたには悪意を感じませんから、怖くありません。」
「珍しい人間だな。」
「あなたたちは外国で言う精霊というのに近いですね。日本では妖怪と言いますが。」
「そうじゃ。」
「俺が思うに、あなたは多摩川の源流から生まれたのでしょう?」
「その通りじゃ。」
「川の水はH2Oだけではありませんよね。つまり、プランクトンやらミネラルやら、水の湧き出るパワーやら、そういったものが集まって、あなたになったのでしょう?」
「その通りじゃ。物分りのいい奴じゃ。」
どうやら、龍神さんは、ブラック隊員をお気に召したようで、うちへついて行くと仰る。龍神さんは、台所にあるボルシチの鍋に顔を突っ込んで、中身を食べ始めた。
「それが食べたかったんですか。」
「ああ。ロシアのチャンコが食べられると聞いたのでな。」
「座敷童が言っていましたか。」
「そう。」
スパゲッティーの夕飯を一緒に食べ、龍神さんは嬉し涙を流しておいでだった。このようにして人と食事したのは、初めての事だそうだ。
妖怪さんたちとの合議の結果、除霊戦隊には、妖怪部隊が新たに結成されることになったのである。
2006.1/28 |