目次

ニューヨーク・世界貿易センタービル
「最後の102分間」
The New York Times より

午前8時46分 (ノースタワー崩壊迄1時間42分)

ノースタワー、91階、「American Bureau of Shipping」

衝撃が走ったのは午前8時46分26秒だった。

連邦調査官の推定では、翼幅156フィート、10000ガロンの燃料をつんだAmerican Airlinesの11便、Boeing 767が、時速470マイルで飛行していた。

ノースターワーまでの、最後の2ブロックを、あと、1〜2秒の速度だった。

飛行機は、94階から98階にかけてのフロアを切り裂き、直接、「Marsh&McLennan」社のオフィスに突っ込み、鉄骨、壁板、ファイルキャビネット、コンピューターデスクを粉々にした。

飛行機の燃料は火を放ち、通り道にある、すべてを焼き払った。

飛行機の着陸装置は、5ブロック先のRector Streetまで飛ばされた。

突入階の3階下にあるSteve McIntyreのオフィスでは、その瞬間、何の振動もなかった。

帆船の形をした石板の文鎮も、本箱におかれた、家族のスナップ写真もそのままだった。

Mr. McIntyreは、まだ、動いているコンピューターの前にいた。

そこへ襲ったのが、鞭で打ちのめされるような衝撃だった。

強力な衝撃波が、インパクトゾーンから、上下の階に、猛烈な速さで、広がった。

衝撃波は、3〜4秒おきに、タワーの最上階と最下層の階に当たって跳ね返り、巨大な船が嵐にあったときのように建物を揺すぶった。

「畜生、早く逃げ出すんだ」

「American Bureau of Shipping」の技師で、建築家の、Greg Sharkは、ゆれ続けるMcIntyreのオフィスの外に立ちすくんだまま叫んだ。

彼らは、何とか生き残った。

二人には後で分かったことだが、彼らが脱出できる可能性は、ごく僅かだった。

出口を探しまわったときの、彼らの資料には、境目となった地域についての調査報告がある。

上の階に閉じ込められた人々には、突破できない難攻不落のゾーンがあった。

Mr. McIntyre、Mr. Sharkと9人の他の従業員は無傷だった。

北西のコーナーにあるA.B.S.レセプションエリアを出て左へ曲がり、タワーの中心部にあるエレベーターや階段のある場所へと走った。

Mr. McIntyreは、おぼろげな記憶の中で、思い出す。

破壊された階段、うねるような煙、階段を滝のように流れる水の音。

まるで山登りの途中で、谷川に出会ったようだった。

その水は、多分、切断されたスプリンクラーからあふれ出したものだった。

他のものが誰もいない、悪臭と暗闇の中で、彼は上を見上げた。

階段の吹き抜けは、火やスチールの構造物ではなく、いわゆる、シートロックと呼ばれる、石工や石板の巨大な塊りでふさがれていた。

それは、吹き抜けを保護するために、吹き抜けを取り巻いていたものだった。

巨大な厚さのシートロックが、吹き抜けを塞ぎ、92階以上のフロアからの通路を閉ざしていた。

Going down the stairs, it made a slightly less formidable obstruction.
This is no good,"

Mr. McIntyreは思い出して言う。

Mr. McIntyreは、殆ど、自分で気がついていないようだったが、彼は、そのとき、生死の境目にいたのである。

彼の上にある19のフロアでは1344人の人がいた。

気を失ったひと、無傷の人、電話で助けを呼ぶ人、その後、誰もそこから生還できなかったのだ。

下の90のフロアには、他の数千人の人がいた。

気を失ったひとも、無傷の人も、電話で助けを呼ぶ人も、その殆どすべての人が生き残った。

Mr. McIntyreがあとで語った。

この階段は、ひどい状況だったが、他の二つの非常階段は、もっとひどかった。

そこで、彼は、ビルの中央部の北西にある、最初の階段へ戻った。

彼が中へ踏み込んだ途端、二枚の汚れた石膏板のうえで滑って転んだ。

怪我はなかった。

立ち上がり、下のほうに明かりのあるのに気づく。

「こちらです!」という声が聞こえた。

91階から一緒になったA.B.S. の同僚達だった。

ひとつ上の92階では、「Carr Futures」の従業員達が、A.B.S.の人たちと全く同じように出口を捜し求めた。

彼らには分からなかった。瓦礫を境に、彼らは不運な側にいることを。

92階のCarr Futuresのオフィスでは、Damian Meehanが、ブロンクスで消防士をしている、弟のEugeneに電話した。

「最悪の状況だ、エレベーターは壊れている」 Mr. Meehanは弟に言った。

「正面玄関へ出て、煙があるか調べるんだ」 Eugene Meehanは、兄に言ったことを思い出す。

弟の声を聞き、兄は電話を下に置き、正面玄関へ行く。

電話機から、弟の耳に聞こえてきたのは、叫び声と騒乱だった。しかし、パニックではなかった。

数分後、Damian Meehan が戻り、正面玄関は煙で一杯だと伝えた。

「階段へ行くんだ」 Eugeneはすすめた。

「煙が来る方向を見て、反対側へ行くんだ」

そして、彼はDamianの最後の声を聞いた。

「彼は云ったんだ『We've got to go』 だったか 『We're going』」だったか。

Eugene Meehanは云った。

「思い出すのもつらいよ、しかし、『We』といったのは覚えている」 

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