目次

ニューヨーク・世界貿易センタービル
「最後の102分間」
The New York Times より

午前9時38分(ノースタワー 崩壊迄54分)
サウスタワー、97階、Fiduciary Trust;93階、Aon Corp.

「エド、気を付けて!」

Fiduciary Trustの人的資源担当ディレクター、Alayne Gentul が叫んだ。

熱気と煙で一杯になったサウスタワー97階、Edgar Emeryが立っていた机から、彼が滑り落ちたのだ。

彼女の同僚のEmeryは煙を噴出していた換気ダクトを彼のブレザーを使って封印しようとしていた。

このフロアで働くFiduciary の従業員を避難させるために、EmeryとGentulは、彼ら自身のオフィスから7階上に登った。

Mrs.Gentul が彼女の夫と電話で話しているとき、夫は、その場で何がおきているかを聞くことが出来た。

Emeryが立ち上がりコートで排気口をふさぎ、続いて、頭上のスプリンクラーめがけて靴を投げつけ、水を出させようとした。

「スプリンカーは動いていないわ」 Mrs.Gentul は夫に言う。

「留まるべきか、行くべきか、私たちにはわからない」

「私なら、火のある、下のほうへは行かないわ」

運命の分かれ道にあるものが、同僚や、来客に手を貸すために、立ち止まったために危機に陥る。

という例が、いくつか、明らかになっている

オフィスが90階から97階にまたがるFiduciary社のGentulとEmeryは、上の階にいる他の人を助ける、という運命的な決定をした。

広場を横切って最初の飛行機が突入した時、火の玉は、Emeryがいた90階の西の正面を横切って燃え上がった。

近くで働いた人的資源部門のメンバーAnne Foodim は

「私は、顔に熱気を感じました」 と言った。

「さあ、行こう」

Ms. Foodim他、5人の従業員を階段へ誘導し、12階下って78階の高速エレベーターまで着き、元気付けるように、Emeryは、云った。

「化学療法を終えることができたんだから、その階段を下りることもできるでしょう」

息を切らせている Ms. Foodimに云った。

彼女は、化学療法のラウンドを終了したばかりだった。

Emeryは、全員がエレベーターに乗ったのを確かめ、Foodimさんの肩を押し
エレベーターの扉を閉じさせ、Alayne Gentul と合流するため踵を返した。

Mr. Emery同様、Mrs. Gentulは2番目の飛行機が激突する前、外のグループを集めた。

受付係、Mona Dunnは、90階で、従業員が、いつビルを出るべきか、とか、ビルを出るべきかどうか、について討論していたのを見た。

Mrs. Gentulは、直ちに、問題を解決した。

「下へ降りなさい、整然と、下へ降りるんです。」

と言い、階段を指差した。

「まるで先生が、『それでいいんです。それで』 と言うようでした」 

Mrs. Dunn は思い出した。

Mrs. Gentul と、Mr. Emeryは、一緒に、97階でコンピュータバックアップ作業に取り組んでいた、6人を避難させに向かったとMrs. Gentul は夫に話した。

Mr. Emery は97階で、階段を探しているとき、妻、Elizabeth に携帯で電話している。

Mrs. Emeryが最後に聞いたのはEd Emeryのすぐ近くで、Alayne Gentul が叫ぶ声だった。

「階段はどこ? 階段はどこ?」

すぐ近くでは、別の電話が通じていた。

Fiduciaryの技術担当役員、Edmund McNallyは、床がめくれ上がり始めるのを見て、妻のLizに電話した。

Mr. McNallyは、彼の生命保険証書と従業員ボーナスプログラムのことを、急いで話した。

「彼は言ったんです。私が彼のすべてだった。彼が私を愛している」

Mrs. McNallyは云った。

そして、二人が最後に交わしたのは、別れの言葉だった。

そのあと、また、Mrs. McNallyの電話が鳴った。

夫は、恥ずかしげに、彼女の40歳の誕生日のために、ローマ旅行を予約していたことを言った。

「彼、云ったんです。『リズ、予約をキャンセルしなきゃ。』」

Mrs. McNallyは云った。


93階の、Aonの保険ブローカー、Gregory Milanowycz(25歳)は、他のものに逃げるようすすめ、何人かが生き残った。

しかし、彼自身は、例のアナウンスを聞いて、オフィスに戻った。

彼の父、Joseph Milanowycz が彼に電話したとき、彼は泣いて訴えた。

「どうして、アナウンスを聞いてしまったんだ。聞くんじゃなかった」

そのとき、彼は逃げ場を失っていた。

彼は、彼と一緒にいる他の30人が、どうすればいいのか消防に聞いてくれ、と、父に頼んだ。

とにかく姿勢を低くしているんだ、消防士がそちらへ向かっている、と父は言った。

そして、父は、彼の息子が、他の者に大声で叫んでいるのを聞いた。

「消防士が来るぞ。父さんが電話で言っている。消防士が来るんだ、みんな下へ降りられるんだ」

状況が最も絶望的であった時にさえ、閉じ込められた人々は、まだ、他の人の様子に注意を払っていた。


87階では、Keefe, Bruyette & Woodsの20人のグループが、 「New York State Department of Taxation and Finance」の会議室に避難していた。

あと数分という時間に、Eric Thorpeは、妻、Linda Perry Thorpe に電話しようとしていた。

Ms. Thorpeは、隣のアパートで、夫からの電話を待っていた。

タワーからかかった電話では話し声がなかった。

Ms. Thorpe と隣人は、周囲の騒音を聞いているだけだった。

Thorpeさんは、そのときのことを、思い出して、あえぐように言った。

「後ろの声が、全部聞こえるんです」

「 誰かが尋ねる声、『消火器はどこだ?』」

「他の誰か、『それは、もう、窓の外へ投げだされたよ。』」

「『気を失っている人はいませんか?』 という声を聞きました」

「いくつかの声は冷静でした」

「気が変になり、絶叫する人もいました」

「私には、彼が何を言っているのか解かりませんでした。」

「彼は正気ではなかったのです」

「別の人が彼をなだめているのが聞こえていました」

「『大丈夫、大丈夫だからね』」

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