| 10時00分 |
| ノースタワー、92階、Carr Futures社、崩壊迄 28分 |
ニューヨークの大西洋側、20マイル先で、Arline Nussbaumは、彼女の息子、Jeffrey Nussbaumから電話をうけた。
彼女はそのときの、息子の最後の言葉を思い出す。
「母さん、さっきの爆発音、何?」 Jeffreyは尋ねた。
「サウスタワーが、今、崩壊した音よ」
「ああ、もう駄目だ」
「愛してる、母さん、いろいろ有難う」
そして、電話は通じなくなった。
息子から、50ヤードしか離れていないのに、息子には見ることが出来なかった光景を、母は、テレビで見てしまった。
サウスタワーの16分前に激突されたノースタワーは、まだ倒れていなかった。
しかし、ゆっくりと、確実に、崩壊しつつあった。
電話の呼び出しは少なくなり、窓から落ちる人々の数は増えていった。
その朝、92階の「Carr Futures」のオフィスは、いつもより忙しかった。
68人の男女がそのフロアで働いており、うち、67人はCarr社の従業員だった。
約24人のブローカーが、午前8時からの特別会議に呼び出されていた。
建物が、車のアンテナのように、前後に揺れ、ドアフレームがねじれ、ドアが閉じられてあかなくなり、その会議室には、多くの人が閉じ込められた。
残りの Carrの従業員、約40人は西側の未使用の広い場所に移った。
Jeffrey Nussbaumは、Andy Friedmanと共有の携帯電話を使い、彼の母に電話した。
その朝、息子、Christopherが犠牲になった、Joan Dincuffによると、Carr社の犠牲者の家族にかかった電話は、全体で、31回に上る。
Carr社は旅客機が突入した階の2階下にあり、突入時には全員生存していた。しかし、誰もそこから出ることができなかった。
10時05分から10時25分までの、ビデオでは、炎は西側に広がり、92階の北の面を横切って避難口を襲っている。
10時18分、特別会議に呼び出されたトレーダー、Tom McGinnisは、妻、Iliana McGinnisに電話する。
この電話のやり取りは、今も、彼女の記憶に焼き付けられている。
「最悪だっ、最悪の状態だっ」 彼は言った。
「わかってるわ」 McGinnis夫人は言った。
彼女は、飛行機の突入のときまでに、会議が終わっていればと願っていたのだった。
「これは、この国への挑戦だ、まるで第三次世界大戦だ」
夫の答え方が、ただならぬのに気づいた夫人は、夫に問いかける。
「あなた、大丈夫、どうなの?」
「僕達は、92階の部屋にいる、ここから、出られないんだ」
「誰と一緒なの?」と聞く夫人。
「Joey HollandとBrendan DolanとElkin Yuen」 三人の、昔からの、友人の名を上げる夫。
「愛してるよ、それから、Caitlinのこと頼んだよ」
いきなり、別れの言葉を告げられた妻は
「落ち着いて、あなた」 と夫をたしなめる。
「あなた、男でしょ、強くて、機転が利くのよ」
「男なら、そこから出てきなさいよ」
「君は、解かっちゃいないんだ」 夫は言う。
「上の階から、みんな、下へ飛び下りてるんだ」
10時25分、炎は荒れ狂い92階の西側を襲う。
人々は窓際から飛びのき、床に倒れる。
夫は、もう一度、彼女と愛娘、Caitlinを愛していた、と伝える。
「お願い、電話、切らないで」 妻は夫に哀願する。
「一階へ降りなきゃならないんだ」 夫は妻に伝える。
電話の声が遠くなり聞こえなくなる。
10時26分、タワーが砕け散る2分前のことだった。
世界貿易センターは崩壊し、静寂に包まれた。
