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第一話

――あなたに夢を贈ります――

☆☆☆

「サンタさーん、プレゼントちょーだいよぉー。」

「サンタクロースさーん、今日の夜はプレゼント配り、大変だねぇー。ちゃんと俺の家にも来てくれよなぁー?」

・・・嘘だろ?今は夏のはずだ。

「・・・お前ら何言ってんだよ?今は夏だろ、夏。気温30度以上の夏真っ盛りの時期じゃねぇかよ!?」

「えー?サンタさーん?サンタさんはお爺さんだからボケちゃったのぉー?」

「窓の外、見てごらんよー?雪が降ってるよぉー?サンタクロースのお爺さーん、夏に雪は降らないよぉー?」

「黙れ!雪なんて降ってるわけがな・・・」

俺の目に、一面の銀世界が映った。

・・・これは間違いなく・・・間違いなく・・・雪だ。

「・・・嘘だろ・・・?信じらんねぇ・・・。」

「あはは、サンタさん、老化現象ーっ?」

「やっぱりお爺さんだからー?」

「きゃははははは・・・・。」

「あははははは・・・・・。」

頭の中で笑い声が響いている。

・・・畜生っ・・・・・・。・・・これだから・・・これだから・・クリスマスなんか・・・

大っ嫌いなんだよっ・・・。

なんだよ・・・みんな・・・サンタ、サンタって・・・サンタクロース、サンタクロースって・・・。

・・・俺だって・・・好きでこんな・・・名前してるわけじゃねぇんだよっ!!

ベロッ

不意に耳に生温かくてザラザラしたものが触れた。

「うわっ!」

がばっ

飛び起きた。・・・さっきまでとは違う場所にいる・・・ここは・・・俺の部屋・・・だ。

どうやら、さっきまで夢を見ていたらしい。机の上で居眠りしちまったみたいだ。

「茶毛丸(ちゃげまる)・・・?」

俺のすぐ横には、猫の茶毛丸が座っていた。

「・・・お前が・・・起こしてくれたのか?」

俺が茶毛丸を抱き上げると、茶毛丸は目を細めた。まるで笑ったみたいだった。

「なんだよ茶毛丸ーっ。もっと早く起こしてくれよーっ。」

それだったらあんな夢見なくて済んだのに。

「ジー、ジー。」

外からは蝉の鳴き声が聞こえる。・・・よかった・・・冬じゃない・・・夏だ・・・。

「でも茶毛丸、起こしてくれてありがとな。」

茶毛丸の頭を撫でてやる。茶毛丸は嬉しそうに、

「にゃあー。」

と鳴いた。

「三太(さんた)−。ご飯よー。」

母さんが俺を呼んだ。俺は途端に憂鬱な気分になった。下の名前で呼ばれるのは好きじゃないからだ。

そうだ。俺はこの名前のせいで12月後半、嫌な思いをしなきゃならないんだ!

・・・三太。・・・とても日本的、江戸っ子的な名前だと思う。

でも・・・なんで西洋文化、キリスト教、クリスマスに、同じ名前のサンタなんていう爺さんがいるんだ!?

どうして江戸っ子と白髭生やした爺さんの名前が一緒なんだ!?

畜生っ、ふざけてんじゃねぇよ!

「にゃうっ。」

茶毛丸が腕から飛び降りた。怒り狂った表情の俺を見て、身に危険でも感じたんだろうか。

そのまま茶毛丸は、開きっぱなしになっていたドアから出て行ってしまった。

「三太ー、ご飯冷めちゃうわよー!聞いてるのー?」

台所から聞こえる母さんの声。

「うるさいなぁ、ちゃんと聞こえてるよー!」

俺はダイニングルームへ向かった。

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