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第三話
・・・なんで・・・俺は・・・笑ったんだ?
「にゃう?」
茶毛丸が俺の顔を覗き込んでいる。
夕食後、俺は自分の部屋に戻り、机にほおづえをつきながら考えていた。
「・・・茶毛丸、赤ん坊ってさ、一体何考えてるんだろうな・・・。」
赤ん坊のときの俺。一体、何を考えてたんだろう・・・?
赤ん坊だって、何も考えていないわけではないと思う。
きっと、何かを考えているはずだ。
・・・あのときの俺も・・・『三太』の名前を聞いて笑ったときの俺も・・・
・・・何かを考えていたはずだ・・・。
ポトッ
「・・・ん?」
そのとき、かすかな物音が聞こえた。・・・暖炉の方からか?
「茶毛丸、ちょっと見てみようか・・・。」
俺と茶毛丸は暖炉の方に歩いていった。俺ん家は古い。なんとレンガ造りの家だ。
かの有名なブタ三兄弟の末っ子の家とお揃いだ。
そしてクリスマス白髭爺さんの侵入口を思わせる、煙突と暖炉も付いている。
・・・でも冬は電気ストーブを俺は使っているし、はっきりいってこれは不必要なものだ。
・・・これのせいで更に俺のクリスマスイメージが強まる、とか言われるし・・・。防犯上も問題があるし。
ポロポロ・・・
暖炉に土が落ちてきた。普通に考えて、土なんかが降ってくるわけがない。
・・・今までもそんな事はなかったし。
考えられるのは・・・
「・・・泥棒?」
誰かが煙突に足をかけているということしか考えられない。
・・・だけど、今どき煙突から侵入しようなんて思う泥棒がいるなんてな・・・。
「にゃあっ!!」
感心してる場合じゃないだろ!・・・とでも言いたそうに、茶毛丸が俺を見ている。
「あ・・・すまん・・・。」
俺が茶毛丸に言った、その時だった。
「うわぁぁーっ!」
ドスーン
もの凄い音がした。煙突から泥棒が落ちたのか?・・・だとしたら。なんてマヌケな泥棒だろう。
・・・なんて考えてる場合じゃないだろう、俺!
相手が凶器を持った極悪な強盗だったらどうするんだ!?
・・・黒薄三太、人生最大の危機だ!!
・・・そうだ、警察!早く警察に電話を・・・!!
俺が駆け出そうとしたときだった。
「こんにちはっ!」
「ひぃっ!」
思わず立ち止まってしまった。暖炉から落ちてきた泥棒が、俺に挨拶したようだ。
意外に礼儀正しい泥棒だ・・・・・・いや、泥棒を職としている時点で礼儀正しくないか・・・・・・・・。
全く、この泥棒はなんなんだ・・・?
くるりっ
思わず後ろを振り返る。泥棒の全貌が目に入る。全身ススだらけだ。
茶色い髪、青色の目、鼻の上に乗る小さな眼鏡・・・
そしてクリスマス爺さんを思わせる、真っ赤なコスチューム。
・・・歳は俺とあまり変わらない女のようだ。
「青目・・・?外国人か・・・?」
俺、絶対こいつの国の言葉では自己紹介しねぇぞ!
・・・三太黒薄(サンタクロース)なんて言えるかっ!!
・・・なんて考えてる場合じゃない気もするが・・・・・・・・。
ん・・・待て・・・外国人?
さっきこいつ、流暢な日本語を喋っていたような気が・・・?
「初めましてっ!サンタ見習いのティリア・ウェーザですっ!」
泥棒が俺を見てにっこり笑いながら言った。
「さっ、三太見習いっ・・・?」
お、俺を見習ってどうするんだっ・・・?
いや、それに初対面の人間、しかも泥棒に見習われる覚えなんかないぞ・・・?
・・・ところで自己紹介する泥棒って何なんだ?
「・・・あんた何者?」
「だーかーら、サンタ見習いのティリア・ウェーザですっ!」
ティリアと名乗る泥棒(?)が、自分の服に付いたススを払いながら言った。
「あ、おい、俺の部屋汚すなよ!」
「・・・あ、すんません。」
・・・やけに素直な泥棒だな・・・。
「ところで何だよ、三太見習いって?」
「皆に夢を届けるサンタという職業の見習いですっ!」
・・・皆に夢を届ける・・・?・・・ああ、サンタって、クリスマス白髭爺さんの方のサンタか。
「・・・それは俺に対する嫌がらせか?」
「はいぃ?」
そのとき。
「三太!?何なんださっきの音は!?」
バン!
豪快に扉を開けて、父さんと母さんが部屋に入ってきた。
「・・・なんか来るの遅くねぇか?」
「ババ抜きの決着がつくまで動けなかったんだ!仕方ないじゃないか!」
・・・仕方ない?あんたら、息子とトランプゲームのどっちが大切なんだ?
「ちなみに俺が勝ったぞ!」
自慢げな父さんを見てたら呆れてきた。
「・・・そのことはもういいよ・・・。それよりさ・・・なんか暖炉に日本語ペラペラの外国人泥棒が落ち・・・」
「おお!次郎さんに一子さんですか!?」
自称サンタ見習いが俺の言葉を遮って、父さんと母さんの所へ駆け寄った。
「初めましてっ!今日からこちらでお世話になります、ティリア・ウェーザですっ!よろしくお願いしますっ!」
ぺこっ
自称サンタ見習いが頭を下げた。
「あら、ティリアちゃんなのっ!?」
「大きくなったなぁー。」
父さんと母さんが口々に言った。・・・一体何なんだ?
「でもティリアちゃーん?あなた一体どこから入ってきたの?」
「煙突です!」
「玄関から入ってくれればいいんだぞ?」
「いえ、でも私、トナカイで来ましたんで・・・煙突の方が何かと都合がよくて・・・。」
とっ、トナカイで来た?・・・いや、ちょっと待て、こいつと父さんと母さんは知り合いだったのかっ!?
・・・さっぱり状況が理解できない・・・。
「あ、そうだわ、ティリアちゃん。この子、私達の息子の三太よ。仲良くしてあげてね。」
母さんが俺を指差しながら言った。
「三太さん、よろしくお願いしますっ!」
「・・・はぁ、どうも。」
いや、だからあんた何者だよ?
「三太、今日からこのティリアちゃんがね、我が家に住むことになるからね。」
「はーーっ!?俺、そんなこと全然聞いてねぇぞー!?」
「・・・あら、そうだったかしら?」
「しかも住む、って何だー!?よ、養女か!?」
「あら違うわよ・・・。・・・うーんとね、いわゆるホームステイってやつかしら?」
「そもそもこいつ誰だよ!?なんで煙突から降ってくるんだよ!?
あ゛ーーーっ、もう、全く状況が理解できねぇんだけど!?・・・一から順を追って説明してくれよっ!?」
俺の頭の中はパニック状態だ。
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