Gリ−グ

第三節

FCひなた VS 朝霧FC

SCENE 1 揺らぎ
(ラブひな・朝霧の巫女・神無月の巫女)



作者 79ERS



 ここは、日本平スタジアム。
 FCひなたのホームスタジアムである。
 ひなたにとってこの試合がGリーグでの今シーズンの3試合目。
 開幕戦の雪ん娘。
 2試合目のオンワード。
 いずれも勝利を収め、この試合を迎えていた。



 そんな中……
(大丈夫かな……)
 スタジアムのベンチで、胸に手を当て、ピッチを見つめる者がいた。
 ひなたのアシスタントコーチ、浦島景太郎。
 景太郎の心臓は景太郎の不安を表すかの様に激しく鼓動を打っていた。



 これまでひなたの監督である瀬田記康のアシスタントとして、情報収拾や選手の状況を報告し、その報告に元に瀬田が戦略を立て、その戦略に基づき練習メニューを組み、試合に備えていた。



 だが、数日前……
「景太郎君。次の試合、君に全て任せるよ」
 景太郎は不意に瀬田から声をかけられた。
 これにより今まで瀬田が行っていた戦略まで景太郎が立てることとなった。
 4試合目で対戦する朝霧FCは固い守備を特徴とするチーム。
 更に朝霧にとってはアウェイゲーム。
 相手は勝ちを狙ってこないことから普通に試合をすれば負けることはない。
 それだけに、試合全体を任せることで、景太郎に経験を積ませたい。
 そんな瀬田の思いがあった。



 それだけに、景太郎は、それまでの瀬田の戦略を思い浮かべながら、戦略を立てていく。
 予選を固い守備で相手の得点を0に抑えて勝ちあがってきた朝霧。
 これまで那覇、所沢と2試合対戦してきたがいずれも無失点。
 固い朝霧の守備を破る為の戦略が景太郎に求められた。



 その朝霧に対して景太郎が立てた戦略は一つ。
 ひたすら人数をかけて攻め続ける。
 普通中盤で、ボールをキープして、相手を圧倒してきたひなた。
 それだけに、中盤を構成していたMFの4人も前線に上げ……
 左右のサイドバッグも前線に上げて、攻撃を構成する。



 特に朝霧のDFラインは5人。
 左右のサイドバックが常に上がることで、中央だけでなく左右からもプレッシャーをかけることで、DFラインの連携を乱そうと考えていた。
 その戦略のもと、景太郎は、相手陣内での人数をかけて、攻撃するパターンを繰り返し練習してきた。



 そして、試合直前でも「人数をかけて攻撃」という戦略を確認し、ピッチに送り出した。
 瀬田は、そんな景太郎を横から見つめ、頷くだけだった。
 特にアドバイスを与えることなく、承認するだけ。
 完全に景太郎を信頼している様子だった。
 信頼されて任された景太郎。
 それだけに景太郎は不安で押し潰されそうになっていた。
 自信と経験がないだけに……



 そんな中……
 ピッチ上ではホーム用の上下オレンジのユニフォームを身に纏ったひなたの選手。
 右サイドに、アウェイ用の上は白と下の青のユニフォームを身に纏った朝霧の選手。
 それぞれのサイドにポジションを取っていた。

(よっし……行くわよ…)
 センターサークル上では、朝霧のMF稗田 柚子がボールに足をかけて、キックオフの時間を待っていた。



 ピーッ!
 そして、審判がホイッスルが鳴らした。
 試合開始。



(それっ!)
 試合開始直後、柚子は、後ろにボールを蹴り、前に走り出す。
 柚子の蹴ったボールは、朝霧のDFラインに渡り、DFラインでボールを回し始める。



 そんなDFラインでボールを回し続ける朝霧に対し……
(よしっ! いきます!)
 前線を張っていたひなたのFW前原 しのぶがボールを奪いにプレッシャーをかける。



 だが……
(ほっ!)
 ポンッ!

(よっ!)
 ポンッ!
 
(はっ!)
 ポンッ!



 だが、そんなしのぶのプレッシャーに対しても動ずることなく朝霧のDFラインはボールを回し続ける。


 常に毎日練習している朝霧のDFラインでのボール回し。
 気が合った5人だけにコンビネーションは抜群。
 息の合った動きを展開していた。



「何やってるんだ! 前からもっと人数をかけてプレッシャーをかけろ!!」
 朝霧のパス回しを止められない中、景太郎は大声をあげる。



 景太郎の声をきっかけにひなたの動きが激しさを増す。
「あらら……」
 FWのしのぶだけでなく、FWの乙姫 むつみもボールを奪おうとプレッシャーをかけ始める。
 それと共に……



(いくわよ!)
(いきます!)
(いくで!)
(いきますっ!)



 MFの成瀬川 なる、藤沢みずほ、紺野 みつね、尾上 菊子。



(いきますっ!)
(いくで!)



 サイドバックのカオラ・スゥ、浦島 可奈子。
 それまで様子見していたひなたの選手が一斉に朝霧陣内深くに入っていく。


 ひなたの選手が朝霧陣内に入ってきたところで……



(それっ!)
 ポンッ!
 ボールを持っていた稗田 こまは前に大きくボールを蹴り出す。



 こまの蹴ったボールは、一気にひなた陣内深くに入っていく。



(来たっ!)
 そのボールに対して、いち早く反応したのはひなたのDF青山 素子だった。
(よしっ!)
 素子は落下点に入る。



 だが……
(それっ!)
 そんな素子に対して、ポジション取りを挑む選手がいた。



(いくぞっ!)
 朝霧のMF姫宮 千歌音。
 素子に体をぶつけ、強引にポジションを取っていく。


(くっ……何っ!)
 千歌音に強引なポジション取りをされた素子は、押し返すことが出来ずにポジションを明け渡す。


(よしっ!)
 ポジションを奪った千歌音は、その場でジャンプ。
(それっ!)
 ポンッ!
 ヘディングで、下に落とす。



 千歌音が落としたボール。
(はっ……はっ……)
 そのボールの下に朝霧のMF稗田 柚子が走り込む。



(そりゃっ!)
 トンッ!
 そして、そのままノートラップでミドルシュートを放つ。



 柚子の放ったボールは、一直線でひなたゴールに向かっていく。



 だが……
(させるか!)
 バシッ!
 ひなたのGK浦島 はるかがボールに反応し、ゴールマウスの外にボールを弾き出した。



 両チーム通じて始めてのシュートは朝霧。
 それは惜しくも決まらなかった。



 だが、朝霧はこのプレイでコーナーキックを得る。
 朝霧の選手達がゆっくりとひなたのゴール前に入りポジションを取っていく。



(よしっ! いいぞっ!)
 そんなピッチ内の様子を朝霧の監督、天津忠博は落ち着いて見つめる。



 景太郎が戦略を立ててこの試合に臨んできたように……
 忠博もしっかり戦略を立ててこの試合に臨んできた。
 試合序盤。
 試合は忠博の立てた戦略通りに進んでいた。
                  

〜続く〜





<FCひなた>
(GK)浦島 はるか( 1)
(DF)カオラ・スゥ(19) 
(DF)市川  えみ( 6)
(DF)青山  素子( 4)
(DF)浦島 可奈子(14)
(MF)尾山  菊子( 7)
(MF)紺野 みつね(16)
(MF)成瀬川 なる(10)(2)
(MF)藤沢 みずほ( 8)
(FW)前原 しのぶ(11)(3)
(FW)乙姫 むつみ( 9)(1)



<朝霧FC>
(GK)岬原 いずみ( 1)
(DF)百合草 千佳 (14)
(DF)稗田 こま( 4)
(DF)稗田 倉子 ( 5)
(DF)御堂 志津歌( 6)
(DF)稗田 珠 (15)
(MF)如月 乙羽 ( 7)
(MF)姫宮 千歌音( 8)
(MF)稗田 柚子 (10)
(MF)力石 征子 ( 9)
(FW)熊沢 菊理 (11)

(途中経過)
FCひなた 0−0 朝霧FC
(前半5分経過)




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