楽器のFFTスペクトル

ピアノオルガンドラムティンパニマリンバトライアングル

ピアノ最低C音のスペクトル

ドビュッシー『沈める寺』より

最低C(ハ)音 (C0) 音は基音が 32.7 Hz のはず。しかし、このスペクトルではこの位置にピークはほとんど見られない。しかし、その倍音である 32.7×n Hz のピークは 最初の65.4 Hz から始まり10次高調波まで計算と比較したところ、 ほとんど±2 Hz の精度で正確に出ていることがわかった。 従って、弦の振動の基音は 32.7 Hz であっても楽器としての放射インピーダンスの関係で基音はほとんど出ていないことがわかる。 そのかわり、22 Hz、40 Hz (30 Hz、 40 Hz の縦目盛点線が見えていない)付近に大きなピークがある。恐らく床なり等の付随音と思われる。

オルガン最低C音のスペクトル

Also Sprach Zarathutra ボストン・小澤の冒頭部分

ついでにオルガンの最低C音も調べてみました。こちらの方は32.7 Hz の基音が盛大に出ています。

追記:この部分どうもコントラバスの協奏があるらしくスペクトルが複雑になっているようです。

そこで、オルガン独奏で単音と思われるパートを探してUpしました。Bachのコラール「装いせよ、愛する魂よ」BWV654 の冒頭の部分で、最低D音です。基音が39 Hz で第4高調波までほとんどピタリ整数倍の所にピークがありますがそれ以上は複雑です。

バスドラムのスペクトル 基音約37Hz

ついでにバスドラムのスペクトルです。
ショスタコーヴィッチ交響曲第5番のフィナーレに連発されるバスドラムの強打の内の1発です。
デュトワ指揮 モントリオール交響楽団 LONDON盤です
矢印は基音を37Hzとしたときの高調波の位置です。当然整数倍にはなっていません。
第2高調波の位置はよく合いますがそれ以上の一致は良くありません。
ちなみに第2高調波は膜の左右分割振動、第3は十字型分割振動、第4が最初の同心円状振動です。

別の楽器が協奏されている可能性もあります。

BBS で基音のピークがブロードでこれが音程がわかりにくい原因ではないかという議論があったので、別のサンプルを時間別に解析してみました。サンプル波形はキーロフ オーケストラ演奏のストラヴィンスキー「火の鳥」全曲版の11曲目、開始から1分50秒から2分のところで鳴らされます。(HEIDYさん提供)

まず波形

上の目盛の単位は秒。黄色矢印で示したtop、middle、end、tail 部に分けてFFT解析した結果を示します。時間窓長さは最長です。

これではとても音程はわかりそうにありません。


この余韻の部分だと基音のスペクトルはかなりシャープです。

ティンパニーのスペクトル 基音約130Hz C2

同じく打楽器のティンパニー ツァラトストラの冒頭直後に出てくる C2(C3? 130.8Hz)と G1(G2? 89Hz)音が交互に連打される部分のC2音のスペクトルです。 数字は高調波の次数。4 は同心円状の振動で端を叩くと出てきません。 それを除くと少なくとも円形膜の振動モードの6次高調波まではほぼ理論通りの位置にあります。超低音のピークは併奏されている弱音のオルガンの音か床鳴りかよくわかりません。

なお、最近(2008年1月)のBBSへの投稿で、ティンパニーの音程は単純な円形膜の振動モードは適用できず、ケトル(お椀部分)と空気抵抗の影響を取り入れたモデルで解析する必要があるという指摘があり、上記の解釈は暫定的なものです。

マリンバ

いわゆるシロフォンの一種マリンバの音です。音階は多分G3#  高橋美智子演奏「超絶のパーカッション」というCDの中から拾った音です。wav file はここです。

矢印1のピークは基音、2,3 は棒の撓み振動の第2、第3高調波の理論値です。ほぼ理論値の位置に高調波が出ています。少しずれるのは棒(板?)の断面積が一定でないためと思われます。×2は倍音の位置です。かすかにピークが認められるがそれ以上の整数倍音は出ていないようです。他のピークはよくわかりません。他の板が叩かれている可能性はありますがそれに対する高調波の位置は説明出来ません。

この他、HEIDYさんに提供してもらった、バルトーク「弦楽器、打楽器、チェレスタの為の音楽」Sz.106
3楽章冒頭のシロフォンソロを解析したところ、基音の2880 Hz と第2高調波 2.756 倍音のみが観測され、倍音の強度は強打するほど相対的に強くなるという傾向が見られました。

マリンバ C3

BBSで低音では共鳴管により整数倍音が強くなるのではないかとの指摘があり調べてみると確かにその傾向があることがわかりました。これは基音がC3(262Hz) のスペクトルです。黒矢印が撓み振動の高調波、青矢印が整数倍音の位置です。55 Hz 付近のピークは恐らく併奏されているバスマリンバの余韻だと思います。

実際CDを聴いていると、共鳴管がよく効いている音とそうでない音がある程度聴き分けられるような気がします。

トライアングル List ピアノ協奏曲 第1番 第3楽章 冒頭

今度はトライアングルのスペクトルです。

No.1 HEIDYさん提供の古いCDからリッピングしたものです。原盤はテープでかなりヒスノイズが入っています。比較的はっきりしたピークに番号を付けてあります。

No.2 はBS2 で放送されたN響コンサートのDVD録画(左写真の箇所)から切り出したものです。(ちなみにピアノは横山幸雄、指揮は準・メルクル)青矢印と番号は、No.1 のスペクトルの番号を付けたピークに相当する(factor 0.7 を掛けた周波数)位置を示します。 8000Hz 辺りまではかなりよく対応しており、周波数の絶対値はかなり異なりますが、少なくとも番号を付けたピークはトライアングル固有の高調波パターンと見なしていいと思います。

これらのピークがどのような振動モードに起因するか分かりません。ちなみに、写真からこのトライアングルを1辺20cm 直径 8 mm の鉄製とし、さらにこれを直線状の丸棒とみなし、その撓み振動モードの周波数を見積もると、基音は190 Hz 位になりますが、この辺りには鋭いピークは現れていません。 おそらく、この周波数では放射インピーダンス(音の放射効率)が小さいためと音としてはほとんど放射されないと推定されます。これでは音程はとれそうにないですね。

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