「避難する人は避難したみたいだよ」
アスコットが海に言った。

「良かった…」
「でも…何人かは残って…戦うって言うんだ…」
「なんですって!?」



クレフとプレセアはその事実を城で知った。

「そんな…!!」
(バカなことは考えるな!!早く城に来るんだ!!)
クレフは念でそう言った。

「自分が住むところを守れないなんて、そっちの方が嫌なんですよ。俺は」
「僕も、ね」
「勝手に踏み荒らされて黙っていられる訳がないでしょうが」
「バカ者ども!!お前達では絶対に死ぬのがオチだ!!」
「何もしないで怯えてるよりはずっとマシってものですよ!!」
「な…!!」

クレフは走り出した。

「精獣招喚!!」
グリフォンを出し、急いで飛び乗る。

「導師!!」
「お前はここにいろ!!」
そう言い残し、彼は城を後にした。
プレセアはそこでペタン…と膝をついてしまった。

「導師…」
理解できない子供二人を横に、シエラは無事を祈った。



「全チェック完了!!」
「よっしゃ!!ランサー、行くぜ!!」
GTRから、黒いRX7が出た。

ビーッと警報が鳴り、それが分かった。

『ランサー!!』
「待たせたな!!」
「魔法騎士!!マリノとシュコダを頼むぜ!!」
ジェオはそう言うと、飛び出していった。

「なんで直ってるんだよてめえの機体は!!」
「お前には言ってなかったな…死んだ奴らの為だ!!」
少しだけ改良が加えられたランサーのRX7。
その最大の点は、エネルギーの消耗が少ない事。

「圧縮比を落としたのか」
「あぁ。これで息切れしないで戦えるってもんだ!!」
「パワーを犠牲にした機体で俺に勝てるとでも思ってるのか!!」
「あぁ。てめぇには負けられねぇよ!!」
二人の男は激しくぶつかり合う。
パワーが落ちたとはいえ、トータルバランスを重視したセッティングに変えている。
その為、実は以前と大して動きに差が出にくくなっていた。
いや、以前よりも勝る部分があってもおかしくはない。
無駄な動きを排除できるからだ。


光と海は構える。それぞれの得意な"剣"で。
問題は、ランティスはともかくアスコットの精神的なこと、
そして、風の動き方だろうか。


「なんなんだこいつら!!」
マリノ、シュコダ、シルビア、ランサーに入って来た突然の通信。
それは光と風、ランティスにも聞こえていた。

「どうしたの!?」
「か…体が勝手に…!!ぐぁ!!」
『おい!!何があった!?』

通信の意味を理解できたのは、実は風とアスコットのみ。

「まさか!!」
風がバッと見た。

「始まったんだ…!!」
「始まったって何が?!」
「カルディナとラファーガ、フェリオ達が戦い始めたんだ!!」
『なんですって!?』
「だからフェリオは僕に魔獣を貸してくれって言ったんだ!!普通の人達じゃ勝てない相手だから…!!」
「フェリオ…!!」



「どぉりゃぁぁ!!」
ラファーガの剣圧が冴え渡る。
人を極力殺さないよう、足を斬っているのだ。

「は!!とぉ!!でやぁ!!」
フェリオも大きな剣を振り、オートザムの特殊部隊を始末していく。
もちろん、殺しなどするはずがない。
だが、甘さは命取り。フェリオは肝に銘じて戦っている。

そして、とある兵士が通信してきた理由、体が勝手に…とは、もちろんカルディナだ。
彼女は隠れながら人を操っている。
相手の武器を用い、同士討ちをさせているのだ。
一応急所は外し、殺さないようには気をつけているが。

更に…

「稲妻召来!!」
『導師!!』
「来るぞ!!気をつけろ!!」
「まさかプレセアも!?」
「いや、あいつは城にいる」
その言葉を受けて一番安心したのは、カルディナだった。

相手は1000人。一方、セフィーロは人は実質4人。
戦うつもりでいた"一般の住民"は、魔獣によって強制的に運ばれたのだ。
戦う魔獣は100を超える。
それぞれがそれぞれの属性の魔法を使う。
こうして、オートザムの特殊部隊はまさかの苦戦を強いられる事になる。


「そんなバカな!!インフィニティが苦戦してるって言うの!?」
「特殊強襲部隊だったってのか…!!」
『特殊?』
「だが、なんとかできているようだ」
ランティスの言葉に、安堵した。


「アスコット、お前は王子達の許へ行ってくれ」
『え?』
「魔獣の言葉が分かるのはお前だけだ」
「で、でも!!」
「では私が行きますわ」
『風(ちゃん!?)』
「正直に言えば、私はここでは足手まといにしかなりませんわ」
「誰がいつそう言った」
「私自身が前から思っていたことです」
「風ちゃんが足手まといだなんてウソだ!!」
「そうよ!!風を足手まといだなんていう奴は許せないわ!!」
「そうだよ。じゃないとここには来ないはずだろ?」
「皆さん…」

ランティスの狙いはもう一つあった。
それは、アスコットに魔獣使いとしての誇りを取り戻させる事。
魔獣を戦わせることに怯えを持ってしまった彼を、見ていたくはなかったからだ。

「やはりアスコット、お前が行ってくるんだ」
「ランティスさん!!」
「王子達には導師がおられる」
『クレフ(さん)が!?』
「回復魔法や防御魔法など、あの人ならば容易いことだ」
見抜く。
ランティスは風がフェリオの事を気にしているのを知っている。
だが、今抜けてしまえば回復魔法をできる人間がいなくなってしまう。
自分やアスコットが魔神の中に入ったとはいえ、何が起こるか分からない。
それに、ランティスと導師の信頼関係は強い。

全てはランティスの頭の中で描いた、"彼の最善の方法"なのだ。
だが、風はそれを受け入れようとはしない。
彼女にとって、フェリオはもう無くてはならない存在。
いくらクレフやラファーガがいるとは言え、心配なものは心配なのだ。

海は風の側につく。
光は…実は板挟みになってしまっている。
ランティスの言う事が一番正しい選択肢だとは思っている。
だが、風の気持ちが分からないはずが無い。
彼女だけが、愛する人と共に戦うことができていないのだ。

人にはそれぞれの役目というものがある。
魔法騎士をやっていて、自然と風の役割はサポートが中心になっていた。
攻撃魔法も兼ね備えた、オールラウンダー。
彼女がいてくれたことを光と海は心から感謝している。