ジェオは少し焦っていた。
弾数が心もとないのだ。無制限じゃないから。
相手がシールドを張れないからと言って弱いわけではない。
高度に機械化されている国の産物なのだから。
海に言われ、風はGTOの許へと行っていた。
「何しに来たんだ嬢ちゃん!!」
機内のレーダーで気づくジェオ。
「手伝いに来たんですわ」
「いらねぇっつぅの!!」
そう言いながらS2000に向けマシンガンをぶっ放す。
「あなたのロボット、弾数に制限があるはずです」
「あぁ、だがそれがどうしたってんだ?いざとなりゃぁGTOごと突っ込むだけさ」
「!! そんなことはさせません!!」
自爆覚悟でやっていることを改めて思い知らされた風。
クーデターを許してしまった自分が許せないジェオは本気だった。
「あの時俺が身を呈して守ってればこんなことにはならなかったんだ!!」
悔しそうに言うジェオは容赦なくS2000を撃ち落しにかかる。
「だからこれは俺の責任だ。嬢ちゃんらを巻き込んじまったしな」
そう言ってる間にジェオ一人で10機目を撃ち落し終わっていた。
「ち、終わったか」
GTOはマシンガンを捨てた。
「困ったときはお互い様ですわ」
ニッコリと笑いを浮かべる風。
ウィンダムはGTOの前に出る。
「おい!!」
「碧の旋風!!」
ジェオを無視し、襲い掛かるS2000に向け魔法を放つ。
風が一人で使う中では最強の攻撃魔法は、10機を切り刻んだ。
「…凄ぇ…」
やっと10機目といきなり10機、この差は大きい。
「私の魔法は私が倒れるまで使えるんです。明らかにそちらよりは多いかと思われますが」
「…嬢ちゃん、腕上げたな」
「はい?」
「以前戦ったときにはここまで強いとは思わなかったからな」
「でも貴方に勝てるかどうかは分かりませんわ」
クスクスと笑いながら答える風。
だがかつて戦った人間から"腕が上がった"と言われ、嬉しくなった。
「ようやく光さんに追いついた、ということでしょうか?」
「さぁな。魔神の性能差もあるだろうけどな」
「魔神自体はそんなに差はないんです。中にいる魔法騎士しだいですから」
「そうかい。イーグルの分析じゃあんたは防御型だそうだ。でもヒカルは柱だからな、強えなやっぱ」
「"柱"はもうありませんわ。光さんや私達が消したのですから」
「そういえばそうだったな。忘れてたぜ」
なにやら話をしておりますが…
「しょうがねぇ、嬢ちゃん、頼むぜ!!」
「あのぉ」
「どしたい?」
「そういえば名前名乗っていませんでしたわね。私は鳳凰寺
風と申します」
「ジェオ・メトロだ」
「ジェオさん、ですわね」
「"さん"付けは止めてくれないか?性に合わねぇんだ」
「でも敬称は私にとっては親愛の証ですから」
「なんだかなぁ…」
こんなことで調子狂うジェオ…
GTOはウィンダムについていく。
「左10時、右14時から来るぞ!!距離200!!」
ジェオはGTOに搭載されているレーダーでS2000の位置を把握し、風に伝えていく。
「碧の疾風!!」
弾薬が少なくなってきたGTOに代わり、敵を攻撃する風。
攻撃魔法は2つしかないが、どれも超強力である。
"紅い稲妻"・"蒼い竜巻"と共に会得し、空のような鏡を共に割ったのだから。
その為、早くも一人で20機は落とした。
「フウ」
「どうしました?ジェオさん」
「やっぱり"さん"は止してくれないか?どうも鳥肌が立つ」
そう聞いた風は思い出したように笑い出した。
「ど、どうした?」
「あ、いえ、フェリオに似てるなぁ、って」
「フェリオ…?あぁ王子か。ってなんで王子には"さん"がないんだ!?」
「止められてますから」
「俺みたいな一般人に"さん"で、セフィーロに王子は呼び捨てかよ…」
ジェオは呆れていた。
セフィーロ城にて
「ハックション!!」
"さん"付けを嫌う男のくしゃみ。
「どうしました?」
ラファーガが訊く。
「いや、なんでもない。誰かが噂したのかもな」
フェリオはそう言いながら、クレフの出した映像を見ていた。
なんか嫌な予感がした。ウィンダムがGTOの所に行った時点で。
なんか楽しそうに(ジェオは半分呆れてるが)会話してる様子がわかる。
そして何より、戦うときに一緒にくっついている。
見ているフェリオの心、穏やかさはあるものの…不安があった。
「ちくしょう…」
そう呟いた彼の言葉をプレセアは聞き逃さなかった。
「王子、どうしました?フウに何か?」
「あ、いや、なんでもないんだ」
「フウなら大丈夫ですよ。何と言っても魔法騎士ですし、あのオートザムの人がついていますから」
その言葉にフェリオはズキッと来た。
ジェオは風をサポートするように、風はジェオをサポートするように動いている。
共通しているのは、頭がいいこと。
ジェオは今はNSX艦長。戦略が練れなくては困る。
風も戦略を練るのが得意であり、二人の意見が合わないはずがなかった。
そういえば風の将来の夢はコンピュータのエンジニア。
オートザムに行けば…
そんなこと、フェリオは考えたくもなかった。
風は俺のものだ
「王子、妬いてらっしゃるのでは?」
プレセアがからかうように笑う。
「な、妬いてなんかない!!」
プイ、とそっぽ向く王子。
それを見てプレセアが笑っている。
「フウのことですから、困ってる人に手を貸してるだけですよ」
「それぐらい分かってる…!!」
フェリオの気が気でない表情にプレセアは笑っている。
まるで互いに手を取り合ってエスコートするかのように飛ぶ2つの機械。
風はジェオが敵の位置を的確に(距離ってどうなんだろう…)教えてくれるため動きやすかった。
ジェオも弾薬の節約ができるし、シールドは風が張ってくれるため精神エネルギーの消耗を低くできる。
この二人が組んだメリットは大きい。
でもやっぱり納得いかない男がいた。
二人とも無事なのは嬉しい。死者は出して欲しくない。
でもまさかこんなことになるとは思ってなかった。
柱を巡る戦いで俺は何をしたんだ?
アスコットとランティス、導師は戦った。
俺もフウやセフィーロの国民の為に戦った。
だが、フウを守ることが出来たのはファーレンの童夢の件1回だけ。
しかもフウが捕らえられてから。
俺は…自分が情けなくなってきた…
複雑な感情の中で、城から眺めることしかできなかった。