「どこに置こうかなぁ…」
アスコットはレーダーを置く場所で迷っていた。
「ねぇ、これ電源どうするの?」
台車の上にちゃっかり乗ってる海。
「デンゲン?」
「ほら、コンセントが…」
家庭用コンセントをひょいっと。
ご家庭に一台いかが?
「…雷で良いなら僕と導師とランティスで交代しながら…」
「多分壊れるわよ」
「…かなぁ…」
とりあえず広い場所に持って行こうとすると、クレフが横の通路から来た。
「何やってるんだ…?」
『あ』
アスコットは事情を説明した。
海はクレフを見ることができなかった。
多分明日にならないと辛いから…
「ならば大広間にでも置くとするか。こんな大きいものがあっても邪魔にはならんだろう」
「じゃぁ」
「待て。これはどうやって動くのか聞いてるのか?」
『あ』
「…聞いてないようだな」
「すみません…」
使用上の注意をよく確認してからにしましょう。
「しょうがないからジェオを待つしかないな」
「え〜!?」
海、大ブーイング。
「ど、どうしたというのだ?」
「あ、あいつに聞くの〜!?」
よっぽど嫌われています。
でもクレフの方一瞬だけ見てまた顔を背けてるけど…。
「何があったんだ?」
アスコットに説明を求めるクレフ。
二つの意味で訊いてるんだが…
「…実は…」
ということで、また説明するアスコット(海は補完、つうか悪口だけ)。
海のことに触れなかったのは彼女を気遣ってである。
「成程。そういうことか。その機械の事については私から言っておこう」
「でも、あの人たちって信じて良いのかなぁ」
「…私には分からん。NSXのクルー全員と会ったわけじゃないからな」
「どういうこと?」
海がアスコットに訊く。
「アルシオーネみたいなのが出るんじゃないかなぁって」
「裏切りってやつね」
「うん。以前ノヴァって奴が城で出した魔物のように、城の中が危なくなるかもしれないんだ」
「なるほどね…」
「今でも戦いで大変なのにまたノヴァが出たらと考えると…」
「それは心配ないわ。光がそう言ってるんだもの」
「…」
クレフは考え事をしていた。
「考えたくはないが…」
『ん?』
「あ、いや、なんでもない」
そう言うとクレフは自分の部屋に戻った。
海とアスコットは互いの顔を見て、首を傾げていた。
「光さん、大丈夫ですか?」
「へ、平気平気…あっと」
前が見えなくてバランスを崩してしまった。
「よっと」
「ほら」
フェリオとプレセアが光と大きな花束を支えてくれた。
「ありがとう」
「ホッ…」
二人の魔法剣士の休息。
プレセアが花束を綺麗に区分けして花瓶に入れていく。
「風ちゃん、大丈夫か?」
「えぇ、もう大丈夫です」
「あ、あのね…風ちゃん」
「はい?」
「ゴメン!!」
「な、どうしたんですか!?」
「明日から…風ちゃんには戦って欲しくないんだ」
一同思わず光を見た。
「…どうして!?」
「私の力じゃ…風ちゃんを守れない…!!」
「いえ!!戦います!!」
「風ちゃんが危ない目にあったんだ。怖いんだ…風ちゃんを失うことが…」
「…私は…足手まとい…ということですか」
「違うんだ!!私が弱いから、また風ちゃんが危ない目に遭うかもしれないからなんだ!!」
「光さん…。心配してくださるのはありがたいんですが、私は戦います」
ニッコリと笑い、光を抱きしめる風。
「ただ、視力をどうにかしないといけませんわね」
「視力…受験勉強で落ちちゃったのか!?」
「まだ測ってないので分かりませんが…もしかしたらただ疲れていただけかも知れませんわ」
「風ちゃん…」
「目にいい食べ物ならあるわよ」
プレセアが何か箱から出した。
「イーシーユーっていうんだけどね。健康食品なのよ」
「頭脳明快が一番の効果じゃないのか?」
フェリオが指をさす。
「でも目にも良いですよ。あとは筋肉痛とか…」
「な、なんでもありですわね…」
世にも恐ろしい食品、イーシーユー。
何この"神様の食事"みたいなものは。
「飲んでみて。ヒカルもいる?」
「あ、ハイ」
「あ、うん」
神様の食事の味とは
「スッパーーーイ!!」
「う、梅干やレモンとかいうレベルじゃありませんわ…」
二人は急いで水を飲む。
『ハァッハァッハァッ…フゥッ』
神様の食事は半端じゃない。
「アハハハハハハ!!」
「ぷぷぷっぷぷー!!」
プレセアは笑いこけていた。
モコナ爆笑。
「お前って怖いな…」
フェリオが退き笑い…
『プレセア(さん)ー!!』
「でも妊娠したらずっとそれが欲しくなるのよ」
「…そ、そうですか…」
「…俺はいらない…」
フェリオは昔同じ目にあったことがあるのかもしれない。
「ほら、これ食べて機嫌直して」
「こ、これ何…?」
警戒モード。猫耳シッポにプラスして毛が逆立ってます。
「ブイテックよ」
『ブイテック?』
「どれ」
フェリオが食べてみる。
「お、これは本当だな」
「私ウソは言った覚えありませんが?」
フェリオに向けて一瞬黒い笑顔。
確かにウソは言ってないが…
恐る恐る食べてみる。
「…甘ーい!!」
「とってもおいしいですわ」
「私の大好物なのよ」
「これ、まだあるか?」
「まだまだあるわよ」
こうして機嫌をすっかり良くしてしまった。
プレセア、いやシエラって…怖いかも。
「あとでウミにもあげないとね」
それ、分かってて言ってます?
「いや…海ちゃん甘いもの苦手だから…」
「ご自分でケーキを作られるのですが、試食は他の方ですしね」
『…それって実験台?』
やはりこの反応しかない。
「アスコットが可哀想かもしれんな」
フェリオは彼に同情した。
「でもすっごく美味しいんだよ!!」
「どれも絶妙な味ですから」
「え?何々?」
本人登場。
「あ、海ちゃん!!」
「海さん!!それにアスコットさん」
「風、起きてて大丈夫なの?」
「はい。もう大丈夫ですわ」
「良かった…」
海はその場でへたり込んだ。
「ウミ、ちょっと」
とオイデオイデするプレセア。
「じゃぁ僕はこれで…」
アスコットはプレセアの顔を見ることができなかった。
プレセアの笑顔は分かる人には分かった。
黒い。
そして…
「ーーーーー!!!!!」
言葉にもならなかったという。
しかもブイテックを食べることができない海。
「ひどい…酷すぎる…」
風のいるベッドでおとなしく拗ねて泣いていたのは言うまでも無い。