光たちは考え続けていた。
ジェオの考えてることをまだ確認はしていないが、分かったから。
風は思いつめていた。自分のせいで、と。
だが、だからこそ答えを出した。

魔法騎士としてセフィーロを救ったことに慢心を抱いていたのかもしれない。
二年もブランクがあったのに。
どんなに辛い戦いになるかも考えていなかった。
だからこそ、身をもって知った。
そのせいで責任を感じ死に急ごうとする人がいる。
私が殺すのも同然…
もうあんな思いはしたくない。
自分のせいで誰かが死ぬなんてことは。

決心、答を出したその瞳は、かつて見た事が無いほどの強い意思を宿していた。
クレフたちはその瞳を見て、ジェオを救い出す道を彼女達に託すことにした。
一人いないが。

クレフは、海は別の形で答えを出すことを知っていた。
辛い現実を受け止めているのは光たちだけではないことも。
だがジェオの真相を海は知らないし、精獣たちの被害を光と風は知らない。

全ては朝に賭けることにした。




「え…?」
アスコットは海の言葉に驚いていた。

「良いでしょ?」
「僕は招換士で、導師はセフィーロ最高位の魔道士だからできるんだ」
「忘れてない?私は魔法騎士よ。セフィーロを救う、ね」
「でも…これ以上ウミを辛い目に遭わせたくないんだ…」
「アスコット…私は何も出来ない方が辛いわ」
「ウミはセフィーロを守ってくれたじゃないか!!」
「でも、私の気持ちも分かってよ…」
「ウミ…」

夜の沈黙は続く。
静まり返ったこの森は、魔神がぽつんと立っているだけだった。

「…僕は…導師じゃないから上手くいかないかもしれない…」
「え?」
「"魔法伝承"を使えるのは導師だけなんだ」
「…そうなの…」
「でも、できないわけじゃないんだ。僕の招換魔法のように」
「え?」
「心を合わせれば…できるかも知れない」
「…心を…合わせる…?」
「うん…」
「なら、できないわけじゃないわね」
「え?」
「なんか…上手くいきそうな気がするのよ。分からないけど」
「ウミ…」
「あ、でもセレスに乗ってたらまずいかしら?」
「でも呼吸ができないんでしょ?」
「アスコットはどうしてるのよ?」
「結界みたいなものを張ってるからね」
「先に言いなさーい!!」
海はセレスの手に降りてきた。
でも早く早くという感じに焦っている。

「処可呼吸(ラティオ)」
海は何かに包まれた感覚を覚えたが、それが消えた。
恐る恐る息を吸うと…ちゃんと呼吸ができる。

「フゥ…」
「さっきの顔、凄かった…」
「ムッ乙女のそんな顔を見るなー!!」
ポカポカ叩く。アスコットはセレスの手から落ちそうになった。

「わ、わ!!」
「あっと」
海が急いで腕を掴み、引っ張る。

落ち着きを取り戻す。
二人はセレスの手の上で森を眺める。
「行くよ」
「う、うん」
二人は手を繋いだ。
心を合わせるのは結構難しく、二人とも苦戦していた。
単純に、アスコットが送り海が受け取るのだが、何故かそれができない。
互いを意識してしまい、集中できないでいた。

だが、慣れてきた。
アスコットは魔法を送ることに集中し始め、海も受け取ることに集中し始めた。
そしてそれがつながった瞬間、海は胸の奥から言葉がこみ上げてきた。


『トリビュート!!』

その声と共に、森中から光りが出た。
そして、その光りは柱となり、天高く伸びていった。
3秒もしないうちに柱は下のほうから消えた。

終わった。

セレスの手の上では二人が座り込んだ。
心を合わせることに苦労したこと、大きな魔法だったことによる心の使い方、
きちんと弔ったことへの安堵感から、力が入らなかった。
セレスの手には二人分の涙がこぼれていた。
二人は背中を合わせ互いを支え合って座っている。
まるで手を合わせるかのように。



城ではクレフとランティスが察知していた。
光たちはまだ考えている間だった。

(ウミ…)
(クレフ!?起きてるの!?)
(あぁ。…終わったようだな)
(…えぇ。アスコットのおかげよ)
(ありがとう)
(え?)
(おまえがいなければ、アスコットは死んでいた)
(…!!)
(それに、言わねばならんことがあったな)
(?)
(お前が私のことを想っていてくれたことにも、感謝している)
(…!!知ってたの!?)
(あぁ、だが、)
(そっか……プレセアを不幸にしちゃダメよ!!私が許さないわ)
(…すまんな)
(ううん、私にはクレフをどうこうする権利なんかないんだもん)
(すまない)
(ううん、クレフが幸せなら良いわ)
(ありがとう、ウミ)


「アスコット」
「なに?」
振り向いた彼は自分と同じく涙を拭き終わった後だった。
「お墓、作ってあげようよ」
「そうだね。でも石がない…」
「アレを使うのよ」
指差したものは、無人機の残骸

「え!?な!?」
「私達の世界ではね、平和を訴えるために武器でお墓を作ることがあるのよ」
「武器…で…?」
「二度と悲劇が起こらないように、忘れないようにするためにね」
「…そうなんだ…」
「セレスとアスコットのお友達の力を借りればできるわ」
「そうだね」

海はセレスに乗った。

「魔獣招換!!」
アスコットは十数体の大型魔獣を招換した。
残骸は軽いものではないため、力が強い魔獣を呼んだのだ。

こうして"作業"は始まった。
と言っても、一箇所に積み重ねていったり、横からブッ挿したりという適当な造形だが。
気がついてみれば、まるで鳥のような形をしている。
それに気づいたからか鳥を意識した作り方になり、結局鳥形になった。
月に照らされたそれは、森に"何かあったこと"だけは伝えていた。



城に戻る際、海はセレスではなくアスコットの魔獣に乗ることにした。
アスコットは上空で待機していた魔獣を降下させ、それに乗り込んだときに海も乗ったのだ。
その頭には招換士の大きな帽子が乗っかっている。
「ウミ?」
「さ、早く帰って寝ないとね」
「あ、うん。そうだね」

「アスコット」
「何?」
「帽子、ありがとうね」
「いや…良いよ。目隠しとかマスクになればと思ってたんだ」
「洗濯してから返すわね」
「い、良いよ別に」
「そんなこと言わないの」

こうして海達はセフィーロ城についた。

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