「すまない…フウ…」
シャワー室から出た男の第一声。
上半身裸にズボンでいる。

「俺は…お前を…!!」
拳を握り、血が流れた。

「フェリオ…」

実は脱がされたのは手甲と白いブレザーのみ。
そこでフェリオは我に帰り、自分のしようとしたことを恐ろしく思った。
頭を冷やすためにシャワーを浴びていたのである。

「いくら苛立ってるからって…俺は…俺は…!!」





「ヒカル」
「あ、ランティス」
光はベッドに腰掛けたままだった。

「俺はイーグルに会いに行くが、行くか?」
「うん!!」

「でも本当にイーグルが生きてたなんて信じられないよ」
「俺もだ。俺の目の前でFTOが爆発したからな」
「!!」
誰よりも近い場所でその光景を目にした男がそこにいる。
光は勿論悲しかったが、一番悲しかったのはこの男のはず。
だから本人に直接会ってみて本物かどうか確認したいのだ。
光を誘ったのは、最期の相手がノヴァだったから。
そして、イーグルのことを光が気にかけていたからである。

「あの気は間違いなくイーグルだが、一応確認しておきたい」
「でも、本物だったらこんなに良いことはないよ」
「そうだな」


光たちの目の前にオートザムの男が現れた。
それは探し人ではないが。

「どうしたんだジェオ」
「イーグルからの伝言を伝えにな」
「何てだ?」
「そっちの夕食に混ざっていいか、だとよ」
「うん!!大歓迎だよ」
「だがそれを決めるのは俺じゃない。導師と王子だ」
「あそっか。じゃぁ」
「ここからなら導師の部屋が近い。先に導師の部屋だ」


「そういうことなら大歓迎だ。喜んで受け入れるよ」
「それともう一つ…」
「…大統領だな」
「えぇ。もう埋葬されましたか?」
「いや、場所を決められずにいるから冷凍保存してある」
光は聞いてて気持ち悪くなった。
ランティスはそれを察し、連れ出した。

「大丈夫…ではなさそうだな」
「ごめん…ちょっと吐きそうなんだ…」
「分かった」
ランティスは瞬間移動で自分の部屋に光を連れて行った。


光はトイレで吐いた。
理由は遺体の話が出たから。
ザガートやエメロード姫などは自分達が手をかけてしまった。
でもその遺体は見ることもなく滅した。
だが、この城の中には遺体がある。布一枚、チャックを開ければ…
クレフはストレートに冷凍してあると言った事で、光の心が大きく揺れたのだ。

「もう…誰かが死ぬなんて嫌だよ…」
光の涙は便器に流れ落ちる。
一応落ち着いたところで流し、口をゆすいだ。

「大丈夫か?」
「ごめん…」
「謝る事ではない」
「…!!」
ランティスは光を抱きしめた。
そしてランティスを下にしたまま、ベッドに倒れこんだ。

「ラ、ランティス!?」
「お前が安らぐまで、こうして一緒にいてやる」
「ランティス…」
光は言葉に甘えて、ランティスと接している事にした。



アスコットの部屋の空気はランティスが来る前の状態だった。
鼓動の音は自分のものだろうか。響くのは状況のせいだろうか。
二人は何も言わぬまま、時が流れる。
フェリオと風の間に起きたこと、光が吐いた事等知る由もない。
ただただ横にいる人が気になってしょうがない。

アスコットが勇気を出して海の手に触れた瞬間、
アスコットは海に押し倒され、キスを交わした。
何も言わず、ただただ抱きしめてキスをする二人。

『ぷは…』
二人は顔の赤みを互いに見た。
そして笑みが出ると、海はアスコットの横で横になった。



「やはりヒカルにはきつい話だったかな…」
「すまん、私のせいだな」
「いや、尋ねた俺のせいです。やはり…」
「ん?」
「嬢ちゃん達には手を汚して欲しくない。そう思っただけですよ」
そう言うとジェオはNSXに戻っていった。

「…」
ジェオは真実を知らない。
もし彼女達の手は既に血だらけだという事を知ったらどうなるだろうか。
驚く事は驚くだろうが、逆に恐い。
彼女達はこれ以上人を殺したくないと思っていても、殺せと言われるかもしれないから。

「導師…」
「私たちが言わない方が良い」
「ではヒカルたちが…?」
「…彼女達が決める事だ。我々が決める事ではないよ」
それはシエラに言ってるようにも聞こえた。
自分達の本当のことを話す日は来るのだろうか。
そしてそれを知った人間はどうなるのだろうか。



フェリオはその事実を知った。
誰にも言ってはいけない秘密。特に魔法騎士とアスコットには。

「…シャワー、浴びてきますわ…」
風はそう言ってフェリオの部屋のシャワー室に行った。
フェリオは何も答えず、彼女がいたあたりに腰かけた。

「俺は…どうしたら良いんだ…」
さっきまで人がいた空間に呟く。助けを求めているが、返答などない。
シエラの秘密を知った彼は逃げ場を失い、追い詰められていく。
言ってしまえば自分は楽になるが、彼女達の、そしてアスコットはどうなってしまうのか。
そう考えると、言う事は許されない。
葛藤という文字しか似合わない彼の苦悩。

シャワー室。
風がシャワーを浴びるのは、只単に浴びたかったから。
これから何をするわけではない。
彼にそんな気がないのは一応確かめたし、自分自身まだ早いと思ってる。
いつはかやることだが、それは今ではない。
この先平和になって、セフィーロと東京の行き来が自由になれば、その時結婚しようと決めた。

「でももし…再び来られなかったら…」
その時はどうしようと思った。
この体を他の男の人には預けない。となると…

風は決意を固めた。
まだそうとは決まってないが、もしまた帰って会えないならば…

「フェリオ」
シャワー室から出た風はフェリオを見た。
彼は何もしていない。
葛藤から逃れる方法を模索しているのである。

「フェリオ?」
「ん…?フウか」
「考え事ですか」
「あぁ…」
「もし宜しければ…差し支えない範囲で教えてもらえませんか?」
「え?」
「あなたが何に怒っているのか分かりませんが、苦しんでいるフェリオなど見たくはありませんわ」
風は軽くキスをし、それが自分の意思であることを告げた。
力になりたい。愛する人の。

「…お前なら…どうする?」





「きっついぁなぁ」
「しょうがないだろう」
二人で12人分の食事を作るのは大変である。

「アスコットは毒の影響が分からないし、王子は怒ってるし」
「プレセアが来ないんはうちらも秘密を知りたがるからやな…」
「体力ならまだある」
「あれだけ戦ってよぅやれるなぁ」
「そうでないと務まらないからな。親衛隊長という者は」
「フッ」
この二人には伝わっていない。
イーグルの分も作らないといけないことを。
だって誰も来ないんだもん。

「それにしても、アスコットとウミはどないなっとるやろうなぁ」
「あんまり詮索しない方がいいぞ、そういうことは」
「えぇ〜?だって気になるやん」
「私に一人で12人分作れと?(汗)」
「いや、せやから作ったら行ってみようか思うとんねん」
「…そのうち嫌われないか?」
「そら困るなぁ」
「ま、なるようにしかならんだろう」

この二人に何か特別なものをあげてください。
レガシィ以外で。

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