光と海は魔神から降りた。

「どうしたんだウミ!?」
アスコットは未だにセレスの胸の宝石にいる。
彼が見た二人は、ただ泣いてるだけだった。

アスコットも降りてきた。

「一体どうしたんだよ!!」
「…」
海はアスコットの肩を掴み、泣いた。
もはや何がなんだか分からないアスコット。

(…ッ!!)
握力が強いとは言えない彼女の指。
だが力いっぱい掴まれ、肩に痛みが走った。

「どうした?」
ランティスが振り返ろうとすると、光はランティスを抱いて泣いた。

二人の男は顔を見合わせたが、分からない。
とりあえず落ち着くのを待つことにした。





「隙だらけだ!!」
「甘い!!」
ジェオのフィンガービームは5本とも避けられた。

「ちっ!!」
「何を考えているんでしょうか」
「あれじゃ体がもたないはずだろ!!」

「くっ!!」
「来やがったか」
「でも!!」
『負けられるかぁ!!』

常人ならば気絶するかというGを体に受けているシルビア達。
高機動性機体のもう一つの弱点は、人間へのGの影響である。
耐Gスーツに身を包み、耐Gホースを装着してなんとか動かしている。
更には機体への負担も大きい。特にRX7は剛性が低い分、空中分解を起こす可能性が出てくる。

彼らには守るべきものがある。
それはGTR。自分達の母艦。
そしてオートザム。正確にはそこに残した家族、友人等だ。
サターンたちクーデター首謀者から彼らを守らなければならない。
もし刃向かえばそれは死よりも苦しいことになる。
精神エネルギー吸収。強制的に生かされ、精神エネルギーを慢性的に失う苦痛。

ではNSXはどうなのか。
恐らくもう家族はそんな目に遭わされているだろう。
だがそれでも貫き通すものがある。
彼らは心の中で涙を流し、心を鬼にして、怒りをバネとして戦う。
ハリアーの仇を討つため、平和なオートザムを取り戻すため、自分の為に。
だがそれはエゴかもしれない。
サターンの下につけば家族はそんな目に遭わされなかっただろう。
そして、同胞と戦うこともなく、殺すということをしなくても済んだかもしれない。
後には引き下がれない。今NSXに乗ってる人間は覚悟を決めて乗っているのだから。

戦う目的を見失ったとき、それは己の敗北を意味する。
圧倒的不利な立場に立たされているのは、GTRではなくNSXなのだ。
もし戦いに疑問を持つ者が現れたら、それが発端でNSXが沈んでしまう。
ジェオ・メトロが艦を降りろと言ったのは、自分は目的を見失わないという自信があったからだろうか。
イーグル・ビジョンはNSXのカリスマとして、240名全員の意思を統率するのだろうか。

互いに退く事はできない。
つまり、どちらかが全滅するまで戦うということ…





コンコンとドアを叩く。
何も返答がないのにドアが開いた。

「…まったく…」
呆れていた。

「フウ、起きなさい。フウ」
ペチペチと頬を叩く。
イスに座り机にもたれていた人間はようやく気付いた。

「…プレセアさん…?」
「何のんきに寝てるのよ」
「あ…」
「ホラ行くわよ」
「…え?」


「何するんだ!!」
「ウチらがキレてるん知りません?」
カルディナは布団を思い切りはいだ。

「あ?」
「あんたらみたいなバカップル見てるとごっつ腹立つっちゅうねん!!」
「バカップル…?おいおい俺達は」
「ふざけたこと言うんもたいがいにしぃや」
「何だと!!」
「ほな行くで!!」
「お、おい!!」
フェリオは強制的に引きずられた。


『!!』
プレセアに連れられてやって来た風と、カルディナに引きずられて来たフェリオが遭遇した。
目を見る前に互いに顔を背けてしまった。





「何があったんだ?」
アスコットはようやく落ち着きを取り戻した海に訊く。
肩が痛かったが何も言わず、優しく抱きしめていた。

「私たち…本当にあの二人の為になることをしたの…?」
「え?」

光も落ち着いてきたが、海の一言は自分の一言でもあった。

「ジゴクは…そういう所なのか」
ランティスは光に目線を合わせた。

「ランティス、何か分かったの!?」
「…地獄は…悪い事をした人が行くところなの…」
海が答えた。
アスコットはショックを覚える以外に何も出来なかった。
だが、強く抱きしめた。

「じゃぁ…僕はジゴク行きだね」
「私もよ…」
「ううん、ウミはテンゴクだよ」
「そんなことない!!」
「ううん」

「…そういうことか」
「…」
光は何も答えなかった。
アスコットたちも何も言えなかった。

「エメロード姫は…?」
アスコットが不安になって訊いた。
その不安は、彼女の生前の行いで決まるシステムへの不安だったが…。


エメロード姫は心の強さでセフィーロの柱になった。
彼女はザガートとの恋に落ちるまではセフィーロの平和を祈った。
だがそれ以降、彼を想う事によりセフィーロは危機に瀕することになった。
そこで、自分の命と引き換えにセフィーロの平和を守るべく、魔法騎士を招喚した。
最期は恋人を殺された恨みだけで戦った。二つの人格を持って。

果たして彼女は地獄に行ったのだろうか。
恋をして、国を守る為に死を選んだ彼女は、地獄に行ったのか。


ザガートは彼女の運命を変えるために戦いを挑んだ。
彼女を救うという名目で戦いを挑んできた人間を次々に葬った。
最期は自分の手で直接魔法騎士を殺しにかかった。
彼女を殺す事が分かっていながら。

彼はどっちに行ったのか。
多くの人命を無用な殺戮で奪っていった。
それが彼女を守る為だと言うのなら、それは許されるのだろうか。

ランティスもアスコットも、答えを導き出せない。
いや、導き出さない。考えたくもなかったからだ。


薄暗い空間。
その中で球体の結界が二つある。
何かを模索するようにもがいているかのようだった。
誰も何も言わず、静かに時が流れていく。

"表"では壮絶な戦いが繰り広げられている事を忘れて。

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