さてバカップルが仲直りした。
これで地球のバカップルの定義となんら変わりはなくなるのかも。

肩を抱かれ、一緒に歩く風。
もはやこうなったら誰もからかいやしないだろう…。

どんな会話がなされたか分からないが、二人の仲は深くなったようだ。
多分日本ではこういうのを「雨降って地固まる」という。

海も光もこんなにイチャツクなんて思っていなかった。
なのでその状態で入ってきた風を見て

「正真正銘のバカップルねぇ…」
海はもう呆れていた。
光は何も言わず、二人を見て顔を赤くしていた。
なるほど海の言った通りかもしれない、と。



さて、厨房ではいつも通りカルディナとラファーガが晩飯を作っている。
そこにプレセアも加わった。

「どうやった?導師は」
「ちょっと元気がなくなってたみたいだけど、今はもう大丈夫」
「それは何よりだ」
ラファーガが微笑みながらフライパンを返した。

「問題はあの子達の方ね」
「まぁ特にヒカルやな」
「昔よりも"死"に敏感になってるようだな」
「アスコットのことを聞いて一番ショック受け取ったもんなぁ」
「それで本当に死んだら、あの子達また泣いちゃうわ」
彼女達だけではない。多分泣くのは。

「それに、私との約束はそんなことじゃないのにね」
『約束?』
「魔法騎士を守るって約束したんだけど、死んでいいなんて言った覚えがないわ」
「ま、それはウミが言うとうやろうから大丈夫やろ」
育ての親であり、姉代わりの人の確信。

こうして料理を作っていくのであった。



「そういえば…いつNSXに行くんですか?」
『あ』
風に言われて気付いた。

「…もう行っちゃう?」
「そうだね。遅れたら大変だよ」
「アスコットはどうするんだ?」
「寝かしておくわ。まだ治ってないみたいだし」
でも

「起きたら二人で引っ叩くもの」
海が燃えている。
光と風は汗ジト。
フェリオはアスコットが本当に可哀想に思えた。



「よぉしっ!!甲板清掃完了!!」
「お疲れ様です。ジェオ」
「イーグルは楽だよなぁ」
「そうでもないですよ。ウミに"NSXには城壁を伝って行け"って言われたんですから」
「そんなことできるのか!?」
「う〜ん…まぁやれないことはないと思いますが…」
ワイヤーを駆使すればね。

「でももしそんな時に血を吐いたらどうすんだよ」
「その時は下に被る人がいないかどうかをちゃんと見ますよ」
『そういう問題じゃないだろ…』
「アハハ。でも改善はしてるようですから大丈夫ですよ」
『本当に?』
「えぇ」
イーグルは光と似てる部分がある。
自分の身に何か起こっても、周りを心配させまいと隠してしまうのだ。
それを警戒するジェオとザズ。いや、NSX御一行。
艦長はいつのまにか囲まれている。

「だ、大丈夫ですってば」
『ほんとうに?』
200人近い人数に言われた。が

「えぇ。さて、呼ぶ手間が省けたので今言います。鎮魂歌は30分後。ですから正装に着替えてきてください」
『了解!!』
多くの人間が少ない出入り口を目指す。
だが軍なので統率が取れ、スムースに動いている。




「ぷぷぷ〜」
「お前にまで心配をかけたのか」
クレフはベッドの上でモコナを手に抱いた。
モコナは泣きそうな顔でクレフを見た。

「心配するな。死ぬ気はないよ」
死ねないと思った。
プレセアとカムリを残して死ねるもんかと思った。

「この国はまだ若い。分からぬ者がいれば私が手を差し伸べなければならないからな」
「ぷぷぷ」
「だがもし…私が死ぬような事があれば、プレセアとカムリを頼むぞ。モコナ」
「ぷぷぷぷー!!」
泣いて首らしきものを横に振った。

「ぷぷぷ!!」
「え?だがお前に何が…?」
「ぷぷぷぷぷー!!」
「…何故…シエラも…お前も…そこまでするんだ…」
「ぷぷぷー!!」
モコナは抱きしめた。
今まで何度飛びつかれたか分からないが、こんなに力いっぱい抱きしめてくるのは初めてだった。

「…ありがとう」
クレフは抱き返した。

本当に死ねなくなったとクレフは少し笑った。
家族のため、そして自分を必要としてくれる存在のため。
自分にそれほどの価値があるとは思ってなかったが、死ねなくなったな、と。
そうなれば今度は生きる覚悟をしなければならない。
人をこの手にかける、という覚悟を。

747年も生きてきたのだ。戦いの世の中も多く見た。
そして、自分もそれに加わった…
仲間を守る為、自分自身を守る為…
人を殺したことがないといえばウソになる…
だがエメロード姫が柱に就くあたりから、そんなことは一切なくなった。
彼女は真に平和を求めた。
だがそれは叶わぬ結末を迎えた…いや、魔法騎士が成し遂げた。
そしてまた、戦いに挑む自分がいる。

昔は家族を持とうなど思えなかった。
何人手をかけたか分からない。
たとえ戦争で英雄になっても、それは人殺しだ。
魔法騎士と同じような苦しみを何度も味わった。

そして、ランサーの言葉が自分を締め付けた。
彼女達の手を汚させたのは、自分。
特に光はランサーに言われた事に心が揺れている。

だからこそ自分が戦う。
彼女達をもうあんな目に遭わせない為に。
セフィーロの平和を守る為に。
そして自分自身のために。

彼女達を戦わせずに、ということは。
自分一人で、いやシエラと二人だけで戦うという意味になるのか。
果たして生き残れるのか?
3人の少女は3人の男と力を併せて、ようやく互角に戦ったのだ。
セフィーロを守る為に来たと言うオートザムのメカもいる。
彼らの力は知ってる。自分の結界を破ったのだから。
だが、彼らと力を合わせても、生き残れるのか…?

クレフの苦悩は尽きない。
ランティスや光の願った彼の安息は、城の者全員が願っている。
だが、そうさせない現実がやってきている。
彼は確かに強大な力を持ち、強大な心の強さを持っている。
だが、彼を支えてくれる人達がいてくれて、彼は生きている。
今まで何度感謝したかされたか分からない。
地球の言葉だと「持ちつ持たれつ」だろうか。



「…早う作りすぎたかな…」
「う〜む…」
「まだちょっと早いわよねぇ」
何故かテーブルの上に並べられた料理たち。
それらが食されるのは2時間も後の事なのだが…

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