風呂も先に入ったし、食事もした。
今日はいろいろなことがありすぎた。
そう思うとドッと疲れが来た。

光と海はまだアスコットの部屋にいた。
ランティスと共に、フェリオの戦う術(すべ)を考えるためだった。
でも頭痛に見舞われてる人間を寝かせるべきでは?

海は肩に乗っかる頭に気付いた。
光が自分にもたれて寝てしまったらしいのだ。
それを見てクスッと笑った。

光が寝たのでどうも動けなくなった。
ランティスは運ぶとなるとまた起こす必要があると判断したらしい。
彼女が今日どんな一日を過ごしてきたのかを考えれば、納得できる。
海もそれを思うと寝かせてあげたいのだが、場所が場所。

「しょうがないなぁ…」
アスコットがベッドから降りた。
部屋にいつもいる魔獣に小声で何か言った。
魔獣が頷くと、光の肩に手を触れた。

「どうするの?」
「ベッドに寝かせるんだよ」
「い!?」
そして海の抵抗空しく、光はアスコットのベッドに寝かされた。

「ちょちょちょっとー!!何考えてるのよ!!」
「ヒカルが起きちゃうよ」
とか言いながら頭痛にもだえてますが。

一方、ランティスも納得いかなったらしい。

「…どこで寝る気だ?」
「え?そりゃもちろん…」
自室だもんね。彼はベッドに入ろうと…

『待て』
「うぐっ」
二人に肩を掴まれた。
さりげに痛い。

「いい度胸ねぇ、アスコット」
海の声が恐い。

「な、何で?」
頭痛なのでとっとと寝ようと思ってただけだが。
でも光を自分のベッドに寝せといてそんなことすりゃぁなぁ…。

「殴るわよ」
「ななな何でだよ!!」
「当たり前でしょ!!なんで女の子のいるベッドに入ろうとするのよ!!」
「これ僕のベッドだよ!!」
「でも女の子に譲ったんだったらそこで寝ないのがルールよ!!」
「えぇ!?そんなぁ〜…」
よっぽどお気に入りのベッドらしい。
てか素直だなぁ…
諦めの表情を浮かべたアスコットに、すっごく安堵の表情を浮かべた海。
頭痛の人間はこれ以上何かされたら大変らしい。
とりあえず後ろから抱いて慰める。

さて、頭痛だから部屋を出る気のなかったアスコットはどうするのか。

「しょうがないなぁ、寝袋寝袋…」
押入れらしき空間のドアを開け、捜す。

「何処で寝るの?」
「床だよ」
「ま、まさかこの部屋の…?」
「うん。そうだよ」
頭痛の中、片手で出した。

「ベッドが使えないんだからね」
「女の子が寝てる部屋で寝ようっていうのがいい度胸よ」
「え?…まさか…」
「えぇ。寝るなら別の部屋でね」
「ひ、酷い…」
寝袋をぎゅっと抱いて動かないと抗議のポーズ。

「子供かあんたは」
海は呆れた。
でも年齢だけなら子供だよ。


ランティスはベッドに腰掛けた。
そして、光の額に触れ、髪に触れた。
それは寝袋探しの時からだったが。
海はランティスに何をどう言えば良いのか分からなかった。
恋人同士だけど…場所が場所。
アスコットがだだこねて動こうともしない、彼の部屋。
確かに別のカップルに占拠されて追い出されるのはかわいそうだが…

ランティスは光にキスをした後、部屋を後にした。
それを呆然と見た海だった。

「い、意外にキザなのね。ランティスって」
「え?」
「さぁほら、アスコットも出て行くの」
「ちょ、ちょっと待ってよ」
「何よ」
「何で出て行かなくちゃいけないんだよ」
「だからヒカルが寝てるからよ」
「でもさ、そうしたらヒカルと一緒に寝れば良いじゃん」
「い…?」
「だって昔はカルディナと一緒に寝てたし、ラファーガもカルディナと寝てるし」
「あ、あのねぇ…それはアスコットがうんと小さかった時のことでしょ?それにラファーガとは夫婦だからじゃない」
「じゃ、じゃぁさ…」
アスコットは顔が赤かった。

「何?」
「僕が部屋を出たら…一緒にいてくれる?」
「いぃ!?」
海も赤くなった。

「ちょちょちょっとぉ!?」
「…だ…ダメかな…」

二人の心臓の鼓動が響く。
その時だった。

「行こう!!海ちゃん!!アスコット!!」
『いぃ!?』
顔を真っ赤にした二人が見たのは、ベッドで立っている光だった。

『ヒカル!?』
よく見れば目は閉じている…

「ね、寝ぼけてるわ…」
「え?あ!!」
海とアスコットは光に引っ張られた。

「どどどこに行くんだ!?」
「決まってるよ!!セフィーロを守るんだ!!」
「やっぱり…」
しょうがないのでついていく。

でも、ドアを開けた瞬間…

『ランティス!!』
「…」
寝ぼけた光をひょいと持ち上げ、どっかに行ってしまった。

「…もしかしてずぅっと部屋の外で待ってたって事?」
「た、多分…」
相変わらず、掴み所が分からない男だと二人は思った。
そして、やはり光は掛替えのない存在なのだ、とも。
顔を見合わせた二人はクスっと笑った。

「なんか羨ましいわね」
「そうだね」
「…寝よっか」
「え?」
「…一緒に」
海は顔を赤くして言った。
釣られて赤くなったアスコットは、エスコートした。
そしてドアが閉められた。



「光さん!!ランティスさん!!」
風が二人を発見したのは、トレーニングルームが通り道だったから。

「寝てるだけだ」
「そうですか」
風は安堵の溜め息をついた。

ランティスはフェリオとラファーガを見た。
二人とも真剣に修行をしている。

「王子を頼む」
そう言って彼はその場を去った。
一瞬はい、と答えたが、その後に真っ赤に染まった風だった。

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