「GTRは?」
「2隻合流した後、動きはないようです」
「寄り添ってるような感じ、か…」
「ですが城に近すぎますので、警戒を厳に」
「あぁ」
セフィーロ城から目視できる地点に33番がいた。
そこに34番がやってきて、すぐ隣に接弦したのだ。
NSXは警戒を強めているが、GTRクルーはそのつもりはない。
「と、言うわけで34番に編入ということになった。まぁ俺が副長だがな」
「じゃぁ俺達は"下"で働けってことですか!?」
「冗談じゃねぇですよ!!」
「あぁ。だから士官は今の位のままだ。向こうの士官を何人か降格させちまうけどな」
互いに艦長同士が話し合い、譲歩した形となった。
「言いたいことはおれも色々あるがそうも言っていられないんでな。合流準備を速やかにするように」
『男たちがこの艦に乗る〜!?』
34番もまた、反発が出た。
「そうよ」
「ちょっと待ってくださいよ艦長!!」
「そんなの私反対です!!」
「私もです!!」
「向こうもこっちも人手が少ないの。今のまま戦ったら確実に犬死によ」
艦長としてこの騒ぎを静める必要がある。
「部屋割りはランサーと話し合ってあるわ。何人かは移動してもらうことになると思うの」
『えぇぇぇ!?』
「じゃぁ男と同じ部屋が良い?」
『うっ』
「女同士で固めるために部屋を移動してもらうのよ」
冷静に淡々と語った。
34番クルーは渋々荷物を移動させた。
合流時、少しピリピリしたムードだった。
女艦長の下で働かされる男たち。
男達が来たせいでお気に入りの部屋を追い出された女達。
両方の艦長は思った。
((上手くやっていけるかどうか自信がなくなってきたな…))
苦労しとりますなぁ。
「でやぁぁぁ!!」
「はっ!!」
フェリオとラファーガの修行は続く。
ラファーガは傷一つ負っていないが、フェリオは一撃ごとに傷が増えていく。
「ちぃっ!!」
「隙アリ!!」
ラファーガは容赦なくフェリオを襲う。
それは剣の師として。
実際に戦いに赴いたものとして。
甘い事等言ってられない。
剣闘師は剣闘士を試す。
心の強さと、技の強さと。
そして強くしていく。彼がそう望んだのだから。
自分同様、魔法に頼る事無く剣技のみで守る力をつけるために。
「そのままでは何回死んでもおかしくないですよ!!」
「くっ…!!どぉりゃぁぁ!!」
フェリオの体力は予想以上に消耗されていく。
日頃から身の丈ほどもある剣を自由自在に振り回す彼の体力は凄い。
だがそれでも、やはり新たな剣圧が体に想像以上の負担を与えているという事だろう。
それがまた、見守る風を心配させている。
傷は自分の魔法で癒す事が出来る。
でも、疲労までは魔法で治せない。
それが悔しい。自分だけでなく光や海、そしてフェリオのことを考えると。
ウィークポイント。
以前FTOとGTOと戦った時に最初にやられた。
自分がやられたから海がやられ、そして城への進入を許した。
一応結果オーライだったのが救いだったが…。
だが、今度はそういうわけにはいかない。
この戦いの初日に死にかけたのは誰でもない、自分なのだ。
それに、目の前で"人の死"を見た。この戦いでも。
仲間がそうならないようにするためには、自分が強くなければならない。
新たな決意。
それは以前から思っていたことの繰り返しかもしれない。
だが、その思いの強さが魔法騎士を強くしていく。
風は拳を強く握り、心で誓った。
「癒しの風!!」
フェリオの傷は綺麗に消えた。
「すまんっ!!」
フェリオは風の方を見ていない。
ラファーガがいつ仕掛けてくるか分からなかったからだ。
でも風はそれでも良いと思った。
自分に気を取られて攻撃を受けるなど、嫌だったから。
もう自分のせいで誰かが傷つくなんて、嫌だったから。
「がんばってください。フェリオ」
聞こえてなくても良い。ただ言いたかっただけだから。
風の見守る目は、心配と共に穏やかな面もあった。
それは自分に自信を持つ為に。
自分が強ければ目の前の愛する人や大切な仲間が傷つく事などありえないのだから。
セフィーロは意志の世界。
それが風を強くしていく。
さっきの言葉は、共に強くなろうという意味だったのかもしれない。
雨は降り続く。
クレフは窓辺に立ち、夜の雨を見ていた。
「こんな雨は久しぶりだな…」
エメロード姫が生きていた頃を思い出す。
魔法騎士による伝説の成就がなされる前、強い雨と風にみまわれた。
それはエメロード姫が祈る事ができなかったから。
人々の不安が呼び起こしたものだった。
この雨はオートザムの兵士の涙だろうか。
それとも、戦争に怯えるセフィーロの民の涙だろうか。
どちらにしろ、いい意味ではない。
眠れぬ夜を過ごす者が何人いるのだろうか。
考えるだけで嫌になってきた。
自分の性分に気付いたのは、傘を片手に持った時だった。
何も考えていないのに、いつのまにか左手に握られていた傘。
ふ…と溜め息をつくと、長い杖も持ち、部屋を後にした。
「精獣招喚!!」
フューラが出てきた。
魚なので水は大の得意。雨などへっちゃらなのだ。
「どこ行きますのん?」
カルディナが見ていた。
「この雨だ。不安な住民がいてもおかしくないだろう」
「ほなウチ行きますわ」
「いや、子供の世話をしておいてくれないか?」
「せやけど…」
「ま、これが私の性分なのだ」
ふっと笑ってクレフはそう言った。
カルディナはやれやれという顔だった。
「せやけどオートザムの戦艦が2隻もすぐそこにおるんやから、気ぃ付けて下さいよ」
「あぁ。じゃぁ行ってくる」
「傘で?」
「ん?あぁこれか。まぁ何かの役には立つだろう」
クレフはフューラに乗ると結界を張り、そのまま出かけていった。
カルディナはそれを見送った後、ラファーガとフェリオの許に行く事にした。
まぁただの報告なのだが。
『分かった』
修行を中断してしまったことにカルディナは反省した。
考えてみれば導師がそんなことしてたらこの二人が動かないわけがないのだ。
「あかん…なんかウチ空周りしとぉ気がする…」
「それはないと思いますよ」
「フウ?」
「クレフさんのことを皆さん心配してらっしゃるんです。ですからこの雨の中どこかに出かけるなんて聞いたら」
「…そない言うてくれるん、フウだけや」
カルディナは優しく風を抱きしめた。
「やっぱ、あんたええ嫁はんなれるで」
その言葉に、風がボボンと赤くなった。