襲う側が襲われるのはよくあるパターンだが…
それが今目の前で、大勢の人が目撃した。
「な、なんだあいつらぁ!!」
「け、剣、本物なのか!?」
「人殺しー!!」
誰かがそう言った。
フェリオはそういう経験がない。
だがアスコットをビクッとさせた。
その隙を突く。
「どわっ!!」
「いい加減にしなさいよ!!」
「あなた、これ以上私たちに関わったらどうなっても知らないわよ!!」
「ひぃっ!!」
男は一人で逃げた。
アスコットを取り押さえたのは海とプレセアだった。
運動神経がずば抜けてるから出来たことだ。
「何考えてるのよ!!」
「なんで逃がしたんだよ!!」
「当たり前じゃない!!」
「あいつは謝ってないんだ!!」
『!!』
フェリオは未だに男の首に剣を添えてる。
アスコットが取り押さえられたのを見て、更に隙が無くなった。
下手をすれば取り押さえた時に首が飛ぶかもしれない。
「どうするんだ?」
「も…もうしません…」
「大きい声で言え」
「も…!!もうしません!!許してください!!」
「…ごめんなさい、は?」
「ご、ごめんなさい!!」
ようやくフェリオが解放した。
男は一目散に立ち去り、剣は宝石の中に消えた。
ふ…と溜め息をついたときだった。
両方の頬に痛みが走ったのは。
風と光が思い切り叩いたのである。
「…!?」
「誰もそこまでしろなんて言ってませんわ!!」
「それで本当に殺しちゃったらどうするんだ!!二人とも!!」
「…じゃぁお前達ならどうするんだ?あいつらはろくなことを考えてなかったと思うぜ」
「そ、それは…」
「アスコットに少し嫉妬していたしな。俺は」
「え?」
「あいつはサユリに何かあっても魔獣がなんとかしてくれる。だが俺にはこういう時でないと守れない」
「…!!」
「それに、あいつらは俺自身許せなかったんだ」
恋に破れた者の気持ちが分かるという意味ではない。
自分の姉に起きた悲劇が、彼をそうさせたのかもしれない。
アスコットはいつのまにか顔に傷が多かった。
多分叩かれるではすまなかったのだろう。
「ごめんね、傷モノにしちゃって」
「良いの良いの」
海が許してるし…
プレセアにセッカンされたらしい…
「大体よくあんな言葉が言えたわね」
「…多分、あの時から」
『え?』
「プレセアを呼ぼうとしたとき、力だけを求めちゃったんだと思うんだ。それで多分少しだけ昔の僕に…」
『なんでそんなことが分かるのよ(汗)』
「違和感はあったんだよ。でも、今日になってそれが分かり始めたんだ」
だから親父狩り退治の時にはシエラが嫌いなアスコットになったのだ。
さて、早百合と秋奈はどうなったのか。
彼女達は呆然としていた。
自分をふったのに自分を守ってくれる人達がいる。
その事実は彼女達を少し混乱に導いた。
さっきまでは凄く悲しかったのに、自分たちを意識してくれている。
それが嬉しかった。
光はアスコットの話を聞いた時、頭の中にとある存在が浮かんだ。
「アスコット、ちょっと来てくれないか?」
「え?」
怪我の治療もままならないのだが…
「自分の中にもう一人の自分がいる感じなのか?」
「う〜ん…そうかもね」
「…」
「もしかして、ノヴァって人のこと?」
アスコットの言葉に、少し頷いた。
「なら大丈夫だよ」
「でも」
ぽんとアスコットが頭に手を置いた。
「もしそうなったら…なんとかしてくれる人がいる」
「それって…海ちゃん?」
光の問いに、彼は首を横に振った。
「ま、大丈夫だよ」
「アスコット…」
彼は光と共に戻ってきた。
ノヴァのような存在がアスコットに出来るのではないかという予測。
一応それはないとされたが、思っていたのは光だけではない。
プレセアもまた、同じことを考えていたのだ。
ファンファンファンファンとサイレンが鳴り響く。
その音に全員驚いた。
それは先ほどの件を誰かが通報したということだろう。
『やっば〜!!』
「アスコット!!東京タワーに早く移動して!!」
「え?」
「良いから早く!!」
「でもそうしたらサユリとアキナが!!」
彼は優しさを失ってはいなかった。
「ぷぷぅ!!ぷぷぷぅ!!」
「え!?分かった!!皆手を繋いで!!」
『え!?』
「早く行くんだろ?」
「あ、うん」
こうして、早百合と秋奈も含めて手を繋いだ。
アスコットが念じた。
同時に、モコナの体が光った気がした。
一向は、入場料も払わずに東京タワーの特別展望台に入った。
『うわぁ!!』
出す位置が悪く、ドサッと落ちてしまった。
「いたた…」
「お前、もうちょっと考えろよな…」
「重い〜!!」
「ご、ごめん…」
さて、アスコットとフェリオは土産を…選べない。
日本語が読めないのだ。
しかも、支払うのは地球人。高価なものは買えない。
「予算は…そういえばフウの親に貰ってたんだったな」
「この紙キレが?」
「破らないでよ。一万円札なんだから」
何か恐いので、結局風が持つことになった。
予算は2万円。充分だと地球人全員が頷いた。
さりげないこと。
早百合はアスコットの、秋奈はフェリオの傍にいる。
ただ、海と風がきちんと腕を組んだし、彼女達に先導権があった。
二人が見た男たちは、楽しそうだった。
それは初めて見る物だとか、恋人と一緒にいられることとか。
改めて思い出す。
彼らは自分たちに優しくしてくれた事を。
そして、守ってくれたことを。
光は一歩退いた位置からそれを見ている。
二人の切ない笑顔に、胸が痛かった。
全てを"運命"という言葉で片付けたくない。そう思った。