「なぁ」
「何?」
「このままじゃ俺達、死ぬよな」
「うん。死ぬね」
「じゃぁとっとと魔獣を出してくれ!!」
青年の青年による青年に対する苦情。

3人の男が空から落下中。

「でもよくこんな状況で寝てられるよね」
「良いから早く出せ!!」
「はいはいっと。魔獣招喚!!」



『出ない…?』
「お、おい!?うそだろ!?」
「あれ?おかしいなぁ…もう1回!!魔獣招喚!!」
でもシ〜ンとな…。

二人は顔を見合った。

「…本気?」
「うん。ということは…」
『異世界!?』



セフィーロ〜デボネア亡き後3年目〜
それはお昼過ぎの事。

「また寝てるのか…」
クレフはフェリオとランティスを見て呆然としていた。
彼らは同じ木で寝ている。

「お〜い!!フェリオー!!起きろー!!」
アスコットが木の下から声をかけても無反応。

「どうします?」
「たたき起こすか」
「い?」

クレフはまるでバッティングのスイングのように、大きな杖を振った。
大切な杖をそんな使い方するなど考えられもしないが。

ドーンと大きな音がした。
フェリオは無重力になった瞬間目を覚ました。
ランティスは無重力でもまだ寝てる。


そのときだった。
突如まぶたを突き破り網膜を焼きつかせるような強烈な光りが発生した。

『なんだ!?』



そして現在に至る。
3人の男はパラシュートなし、魔獣無し、とにかく生存可能な手段ナシの自由落下を繰り広げている。
つか約一名、自分の体で風を切ってるのに全然起きる様子が無い。

「もう一回やってみる!!」
アスコットは集中し始めた。

「…来い!!魔獣招喚!!」
魔力の中にいる彼の体が、青白い光を放った。
3度目の正直。
彼の手の先に魔方陣が現れ、そこから大きな4つの翼を持つ黒い龍が現れた。

「よっしゃ!!」
フェリオは指をパチンとならし喜んだ。
ひとまず自分達の命が地面にグシャッはなくなったからだ。
だがアスコットを見ると、彼は意識を失っているらしい。


魔獣は何がなんだか分からなかったが、とりあえず3人を背中に乗せた。

(こいつが招喚魔法で気絶するほどの心を使うとなると…本当に異世界に来てしまったのか…)
フェリオはアスコットの心の強さを数値的には知らない。
だが彼の心は自分よりは強いという意識はある。
年齢的にはまだ幼い子供のはずなのに、ある少女を守る為に成長し、強くなっていった少年。
もっとも、会えなくなって3年経っているし、その少女の想う人はアスコットではないと彼本人から聞かされたときには驚いたが。

(この状況でもまだ起きないのか、こいつは)
さすがに寝るのが好きな自分でも呆れてしまった。
ランティスは純粋に寝ているだけ。
魔獣が拾う際にそれなりの衝撃は走ったはずなのだが、それにもめげずに寝ている。
いや逆に衝撃で気絶したという説も…。

「とりあえず他の奴がいないかどうか見てくれ」
魔獣にそう呼びかけた。
コクンと頷き、速度を上げた。

(もっとも、いてももう間に合わないか…!!)
拳の中にはあせりが滲みでた。


魔獣は地上に降り立った。
フェリオは意味を解釈できなかった。

「いたのか?」
その問いに首を振る事により、ようやく意味が分かった。

ふと思いついた。

「フウは!?フウたちはいないか!?」
異世界という言葉から発想されるべくして出てきた言葉。
セフィーロの魔法騎士は異世界からやってきた少女たち。
自分達が異世界に来たと言うことは、会えるかもしれないということである。

だが首を傾げてしまった。
そもそも魔獣は気が読めるのかどうかが問題だった。
いや、下手をすれば自分の言葉が通じているのかどうかが問題だ。


突如ムクッと起きた男がいる。

「…?」
ランティスは周りを見回した。

「王子」
「お。起きたか」
「ここはどこだ?」
「俺が知りたいよ。だがアスコットが魔獣を出すのに苦労したって事は異世界らしいな」
その言葉を受けて、横で寝てるアスコットに気付いた。

「得意中の得意の"魔獣招喚"ですら3回目で成功したんだ。それでも心を使い果たすって事は異世界以外ありえないんじゃないか?」
「異世界…」
「ランティス、他の奴の気を探れないか?」
「やってみる」

ランティスは目を瞑り、気を探っているらしい。

「どうだ?」
「いない」
「そうか。じゃぁ俺達3人だけが何らかの原因で異世界に飛ばされたってわけか」
「魔法騎士の気も感じない」
「そうか…」
大きな期待に踊る心がこけて谷底に、と思う瞬間。

「ま、まぁいいか。とりあえず偵察に行って来る」
「…その必要はない」
ランティスの視線の先にフェリオも目線を合わせる。

「誰か来るのか?」
「導師のように強大な魔法力を持った人間だ」
魔物でなくて良かった、という顔。
だが、浮かれていられない。
自分達を襲うなら戦う必要がある。
二人は剣を抜いた。

だが、それだけが不安の理由ではない。

「…嫌な予感がするな」
「あぁ」

頭の中によぎる、辛く悲しい記憶。

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