木々の間から誰か出てきた。
ランティス達は覚悟を決めないといけないかと思った。
「お前達が…、か」
フェリオとランティスの前の男はそう語った。
「その生き物はセカイアでは見ないな」
『セカイア?』
「それがこの国の名前…ということか?」
「そうだ」
「こいつはあそこで倒れてる奴が招喚したんだ。最も、異世界だから一筋縄ではいかなかったらしいけどな」
「心を使うのか?」
「話が早いな。あいつは心を使いすぎて眠ってるんだ」
―東京―
〜お昼休み序盤〜
「海〜、眠いの〜?」
「ん〜…」
海は睡魔に襲われたらしい。
「御飯食べないの?」
「あ…ごめん…何か…すっごく眠くなっちゃって…」
「寝とく?5時間目地獄よ」
「…」
警告は響かず。海はまた眠ってしまった。
―フェリオたちは―
「お前達にはやってもらうことがある」
「殺しか?」
ランティスは間髪いれずに訊いた。
男は少したじろいだ。
「柱を殺すために俺達は呼ばれたのか?」
フェリオの表情も、怒りと悲しみが支配していた。
「柱?」
その男のほうがキョトンとした。
「この国を救う、というタテマエで俺達に人を殺させようっていうことかって訊いてるんだよ!!」
ガッとフェリオが胸倉を掴んだ。
男は咳き込んだ。
「ゴホッ!!な!?」
「柱がこの国セカイアのことよりも愛する者のことを想ってセカイアが崩壊するのを嘆いて、自分を殺すために俺達を招喚したんじゃないのかってことだ!!」
「…!!なぜそれを…!?」
その言葉がフェリオを絶望に陥れた。
手の力が一気に抜けた。
「ふ…ざ…けるな…!!」
フェリオは近くにあった木をグーで横薙ぎに殴った。
―東京―
〜お昼休み中盤〜
(何!?)
風は心が痛くなった、気がした。
「どうなさったの?風さん」
「あ、いえ…今何かあったような気がして…」
「え?別になにもないみたいですが…」
「ですよね…なんなんでしょうか…」
「あ。ひょっとして」
横の友人がポンと何か思いついた。
「虫の知らせっていうものかしら!?」
「あ〜…風さん、今大切な方いらっしゃるの?」
「え?」
ちょっと固まった。
ちょっと赤くなった。
すごく切なくなった。
『いらっしゃるのね!!』
「…でも、3年もお会いしていないのです…」
「え…?」
風は教室の窓から空を見上げた。
「フェリオ…」
―セカイア―
「セフィーロの伝説と同じじゃないか…!!」
「なんだと!?」
「なぜ…他の国に…異世界に同じような伝説がありやがる…!!」
フェリオは殴った木に押し付けるように言葉を掠らせた。
「あんなことが…なんでまた起こりやがる…!!」
「殺す必要があるのか?」
ランティスがそう述べた。
「ランティス…?」
「経験があれば対処法もあるかもしれない」
「な…に…!?」
「本当か!?」
セカイアの男が一番に訊いて来た。
「俺にも分からない」
その言葉に一名吹っ飛び、一名豪快にヘッドスライディングをしながら木に頭をぶつけた。
『おい!!』
フェリオはタンコブ付けてツッコミ。
「だが方法があるなら教えて欲しい」
「…我々でも分からなかった」
辛そうに顔を背けた。
「…行くぞ」
「お、おい!?ランティス!?行くってどこにだよ!?」
「…どこに行けばいい」
『うおい!!』
―東京―
〜お昼休みも終盤〜
「光?食べ足りないの?」
「え?あぁううん、違うんだ。ただ…胸が苦しくて…」
「食べすぎ?お茶飲み」
ペットボトルのお茶を分けてもらった。
「ありがとう」
「気をつけてよ」
(…まだ胸が苦しい…)
お茶を分けてもらった友達にはそう言えなかった。
(体じゃない…心…?)
そう思うと、ある名前が出た。
(セフィーロ…)
そう思ったとき、瞼の裏に何か映った。
ほんの一瞬だが、ペンダントの贈り主が映った。
「ランティス!!」
『うわぁぁ!!』
「な、何?」
「ビックリしたぁ〜…」
「どうしたのよ」
「あ、ご、ごめん…」
光は小さい体をもっと小さくして俯いた。
(でも…もしかして…ランティスに何かあったのか!?)
―セカイア―
「魔法は使えるのか?」
「俺は剣闘士だ。あとの二人は魔法を使える」
「ならば魔法を」
「いらない」
「え?」
「俺は剣一筋で生きる。そう決めてるんだ」
フェリオは正直、好きになれなかった。
異世界に飛ばされた目的が、異世界からきた少女達と全く変わらないのだから。
それでも仕方なく、またランティスの述べた"可能性"というものがあるのなら、その為に行くしかない。
伝説を成就させなければセフィーロには戻れないのは知っているから。
やりきれない思いを胸に、魔獣に乗るしかなかった。