「そういえば自己紹介が遅れたな。私の名はクリーシャだ」
「あなたがこの国一番の魔導師か」
「一応そうは呼ばれているが、大した力は持ってないんだよ」
『…』
自嘲するかのように笑う。
それはクレフが"伝説"を変えられなかった時の様に。

「俺はフェリオ。こいつはランティス。で、向こうで寝てるのがアスコットだ」
「…すまない、フェリオ」
「え?」
「辛い思いをさせる」
「…」
何も言えなかった。
思い出す。クレフが魔法騎士に対して深く詫びた事を。
今それをこの場で言われるとは思わなかった。

「せめて、防具を与えたい」
「その必要は無い」
ランティスが述べた。

「俺達の服は俺達の国の最高位の魔導師が与えてくださったんです。防具も兼ねてるから、心配はいらないですよ」
いきなり丁寧な言葉。
国の代表と分かったからだろうか。
でも"経験"からすればすぐに分かるだろうが…。

「俺達はどこに行けば良い?」
受け入れるという事だろうか。残酷で過酷な運命を。



「魔法の使えない森の中にいる、プレーリーに武器を創って貰え、か…」
フェリオはランティスに呟いたのか、独り言か。
彼らはアスコットの魔獣で移動する事にした。

「どう思う?」
「何も。ただ」
「ただ?」
「この気は誰かに似ている」
「な…俺達以外にいたのか!?いないって言ったのはお前だぞ!!」
「同じとは言っていない」
「…似ている、か…」
「だがその前に戦うようだ」
「!?」
二人は剣を抜いた。


程なくして、この国の精獣と思われる生物に乗った男が後ろから追って来た。

「お前達が伝説の魔法騎士だな!?」
「伝説の魔法騎士だぁ!?」
フェリオ、ますますイヤになった。
辛さを知っている…つもりだから。
本当の辛さは当人にしか分からないのは知っているが。

「冗談じゃねぇ!!ふりきれないか!?」
「これ以上の速度は俺達が振り落とされる」
こんな時にも冷静沈着。

「死ね!!魔法騎士ども!!氷塊斉射!!」
「殻円防除」
冷静沈着に対処。

「な…やるようだな…だがこれはどうだ!!氷塊爆撃!!」
頭上に大量の雹が形成された。

「死ねぇ!!」
一気に魔獣目掛けて降ってきた。
どうやらこの魔道士最大の氷系攻撃魔法らしい。

ランティスの結界にヒビが入った。
彼自身少し驚いた表情になった。

「な…!!ランティスの結界が…!?」
「ここも意志の世界だという事だ」

フェリオはダンとヒビ目掛けて飛び出した。

「どぉぉぉりゃぁぁぁ!!」
逆上げ一刀。ヒビからの侵入は防ぐ。
だがキリがない。

「くそっ!!アスコットはまだ起きないのか!?」
「心を全部使えばアスコットとはいえ時間はかかる」
ランティスも剣閃で、結界の穴から入ってきた雹を捌きあげる。

「じゃぁあいつを倒すしかないよな!!」
「あぁ」

ランティスは魔獣から飛び出した。

「馬鹿が!!血迷ったか!!」
「稲妻召来!!」
「何!?がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
男に雷が襲い掛かった。
十八番、稲妻召来。
男は瞬間移動か何かでその場を去った。

「よしっ!!」
フェリオはグッと拳を握った。
魔獣はランティスを拾いに行った。


「助かったぜ」
「…」
彼にとってはどうってことないこと。
生きるために選択しただけだ。

「王子」
「なんだ?」
「俺の魔力が弱まっている」
「…いよいよ"沈黙の森"、か」
フェリオの腕の見せ所。
ランティスの剣腕も見られる…かも。

「プレセアの家だとだいたいこの辺りなんだろうけどな」
「…」
「どうした?何か分かるのか?」
「王子、気は読めるか?」
「あ?読めるのは魔道士ぐらいだろ。気配ぐらいなら俺にでも分かるが…」
「今分かった」
「何がだ?もしかして誰かの気に似てるってやつか!?」
「モコナだ」
「何!?あいつが来てるのか!?」
「…何度も言わせるな」
「あ。す、すまん…」
モコナの気に似た"何か"がいる。
それだけがフェリオにとっては救いのような気がした。



―その頃の東京―
海は授業中、確かに地獄だった。
授業中に寝るなんて一度も無かったのに、こうも睡魔が襲ってくるなんておかしい。
しかも、夢の中では何故か3人の男がいる。
セフィーロかと思ったが、見たことの無い男がフェリオに掴みかかられている。
でも何故か、その中で一番パンされてるのはアスコットらしい。

(アスコットの夢なんて初めてだわ)
と、授業そっちのけ。

(でもお腹すいた…セフィーロに行けたら叩かないと気がすまないわ)
彼不在ですが。


「ウ…ウミ…?」
夢の中で話し掛けてきた。
切り替わったのだと思っていた。
でもなぜかアスコット。

「久しぶり…というよりは…何なんだろ…」
海は言葉に迷った。
そもそも夢の中に出るのが。

(どうしてクレフじゃないのかしら)
知らんよそんなの。

(ま、いいか)
授業中だよ〜。

「あ…まぁどうせ夢、か…」
「何してるの?」
「あ、いや…い、異世界にいるみたいなんだ。僕たち」
「え?セフィーロが異世界じゃないの」
「違うんだ。セフィーロじゃないらしいんだ」
「じゃぁ何?私たちの住んでる地球に来ちゃったって事!?」
「でも…ウミやヒカル、フウの気は感じなかったんだ」
「じゃぁ…」
「全くの別世界、ってことだと思う。僕の友達を呼ぶのにすごく力を使ったんだ」
「でもどうして?」
「分からない。まぁでもまさか魔法騎士をやれってわけじゃないとは思うけど…」
「冗談で言ってない?それ」
「でも本当に分からないんだ。…もしかしたら、本当に魔法騎士をやるかもしれない…」
一体なんでこんな夢を見てるんだろう…と思ってしょうがなかった。
ただ、魔法騎士を3人の男がやる可能性があるというのは、落ち着きを消された気分だった。

その後授業中に起こされ、お腹の音と共にクラスの視線を集めた。
彼女は小さく縮こまってしまった。

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