光たちは走る。
クレフの部屋の位置をぼんやりと思い出しながら。

「中もボロボロじゃない!!」
「どうしてこんなに荒れてるんでしょうか…」
「とにかく何があったか聞くんだ!!」
『えぇ!!』


バンッと扉が開いた。
そこにはクレフだけではなく、顔見知りがいた。

『魔法騎士!?』
「みんな!!」
「どうしたのよ一体!!」
目を疑った。
セフィーロの人からすれば、来るなんて思ってもいなかった。

「ぷぷー!!」
モコナが思い切り光の胸に飛び込んだ。

『モコナ(さん)!!』
「ぷぷ〜…」
「どうしたんだ?いつものような元気がない…それに皆もだ!!」
「なんで痩せちゃってるのよ…!?健康的じゃないわ!!」
「何があったか、お教えいただけませんか?」
と、その時に気付いた。

『…クレフ(さん)!!』
3人は駆け寄った。
彼が昼間に寝るなど考えてもなかったのだが…。
彼の手を握っているのがプレセアであることに気付いた海は二つのショックを受けた。

「…意識が戻らないらしい」
『え!?』
ラファーガがポツリと呟いた。

「中庭で導師が倒れたんや」
『倒れたぁ!?』
バッとクレフの顔を見た。

「心を読んでみたんやけど、おかしいんや」
『え?』
「アスコットと王子とランティスが目の前から姿を消してもうたみたいなんや」
『あの3人が!?』
「導師は城が崩れないように心を使って倒れたらしいの…」
プレセアが呟いた。ギュッとクレフの手を握って。

「私たちも弱い方ではないと思っていたが、城の維持をするのが難しかった。だから城を見たときは驚いただろう」
ラファーガが壁にもたれて述べた。
プレセアとカルディナは椅子に座っている。

心なしかクレフ以外痩せた気がするのは、
心の使いすぎによる影響なのだろうか。そう考えると恐かった。

カルディナは幻惑で椅子を出した。

「まぁ座ってぇな」
彼女は立ち上がり、別の部屋に行くつもりらしい。

「どこ行くの?」
「やらんでええちゅうのにやりようアホを、な」
『え?』
ラファーガがそれ以上言わせなかった。
二人は部屋を後にした。


落ち着けない静かな空間。
プレセアはクレフを見て切ない顔を浮かべる。
今度は光たちがそれを見て切なくなる。
海の感じ方と二人の感じ方は違うが。

「プレセア」
我慢できなくなった光が口を開いた。

「何?」
「クレフが倒れたのは、城を支えようとしたから?」
「カルディナからはそう聞いてるわ。今心を読めるのは彼女だけなの」
「あの3人のいない分を補おうとして、ですか」
「私たちもやってるんだけど、ね」
ボロボロになった城に自嘲気味の苦笑を浮かべるプレセア。
だが彼女達の体にも影響が出てしまっている。

「じゃぁ教えて欲しいんだ。お城を支える方法を」
光は立ち上がって述べた。
海と風は光の顔を見て同じく立ち上がり、頷いた。

「…気持ちだけ、受け取っておくわ」
「どうして!?クレフが倒れて皆変な痩せ方してるじゃない!!」
「でもまた魔法騎士に頼ったら意味が無いじゃない」
『え?』
「魔法騎士がいなければ維持できない平和なんて、情けないにも程があるわ」
少しこけた頬のプレセアは彼女達の方を見た。

「仲間が困ってるから力をお貸ししたいのです」
「ありがとう。でも、皆で決めた事だから」
プレセアもソ…とクレフの手をベッドに置き、立ち上がった。

「セフィーロも隣国も平和だし、貴方達は"観光客"よ。この国のためにできるのは、平和になったことを実感してほしい、ってこと位」
『平和じゃない!!』
ガタンと大きな音をたて立ち上がった。

「ランティスとフェリオとアスコットがいなくなったんだろ!?」
「それでお城を保つためにクレフが無理して倒れて、皆の体にも影響が出てるんでしょ!!」
「こんな状態で"平和"だなんて、腹立たしいですわ!!」
「私たちは"みんな"の幸せを望んだんだ。国が平和になってもクレフやプレセア達がこんな状態になるなんて放っておけないよ!!」

光はプレセアの許に歩み寄った。
その時、カルディナ達が部屋に入った。

「な、なんや?」
「どうしたというのだ?」
「あ…」
プレセアはカルディナ達の方を見た。
カルディナは目を閉じ首を横に振った。

「ウチらよりも心が弱いのに無理矢理やってまうねんもん…」
「何があったんですか?」
風が心配そうな顔で伺う。

「…言えへん」
とだけ返した。
ただ辛そうな顔で。

海は残ったラファーガを見るが、彼も目を瞑り、言いたくないという態度。

納得いかない。
プッツンと魔法騎士がキレた。
平手打ちが入る。

「いい加減にしろ!!」
「何さっきからカッコつけたり大事な事を隠したりしてるのよ!!」
「私達に心配させないようにですか!?ふざけないでください!!そっちの方がよっぽど心配ですわ!!」
「もうエメロード姫やイーグルのようなことは嫌なんだ!!教えてくれ!!」
『何が起こってるのか、城を支えるにはどうしたら良いかを!!』

叩かれたほうは一瞬目を見開いたが、すぐに視線を逸らした。
それをむりやり自分の方に向かせた。

「エメロード姫はセフィーロの平和を願っていたのよ!!」
「今の状況であの方々が喜ばれるとお思いですか!?」
「私たちは魔法騎士だ。セフィーロを平和にする事がエメロード姫に託された事なんだ!!」

プレセア達は目を見合った。
困った表情になっている。魔法騎士の目が真剣そのものだから。

「言うてへんの?」
「言ったわよ」
「だ〜か〜ら〜!!私たちに気を遣わないでよ!!」
「世の中"持ちつ持たれつ"。互いに協力することが大事ですわ」
「それに…クレフはこのままで良いのか!?私達は絶対嫌だ!!いつまでも元気でいて欲しい!!皆もそうだ!!」
光が叫び、カルディナ達はハッとクレフを見た。

「このままじゃ…死んだっておかしくないじゃないか…!!」
光は泣きそうな顔になっていた。

「だから…教えてくれ!!みんなが死ぬなんて絶対に嫌なんだ!!」
そう顔を上げて叫んだ光は涙を流していた。

海はプレセアの許に歩み寄った。

「このままクレフが死んじゃって良いの!?」
「良い訳…ないじゃない…!!」
プレセアは涙を一筋流した。
カルディナはここでようやく思い出した。

プレセアはしゃがみこみ、クレフの手をギュッと握った。
海は胸が締め付けられそうな気分になった。
プレセアの涙がシーツに落ちる。

「お願い…」
そう聞こえた。

「クレフを…助けて…」
搾り出した本音。
プレセアの涙は愛する者と、"負けた"ことについて。
魔法騎士に頼らないといけないことに涙を流す。
辛い思いをしてきた彼女達に、これ以上辛くさせたくないという、矛盾の現状。

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