「…原因が分からない以上、お前達にやらせるなど、導師もお許しにならないだろうし、…私にも耐えられない」
ラファーガは搾り出すように述べた。
「私達は大丈夫です」
「証拠があるのか?」
「いえ、勘ですわ」
風はニッコリ述べた。
「また、か…」
カルディナは部屋を後にしようとした。
ラファーガもそれに気付いた。
「またか」
「せや…悔しいけど、な…」
「何がおありなんですの?」
風がまた心配そうに訊く。
「…知る方が辛いで」
「…覚悟、します」
光と海もカルディナの言葉を待った。
プレセアは"え…"となった。
「ちょっと待…」
「限界や」
アッサリ言った。
「うちかて救える命は救いたいんよ。のたれ死になんて嫌やさかいな」
「…!!」
ラファーガが溜め息をついた。
「…任せる」
そう言って部屋を後にした。
「この城に住む"人"は確かにうちらだけや。せやけど、人だけやあらへん」
「確か…アスコットの友達も手伝ってるって言ってたわよね」
「せや。他に精獣もおるし、プリメーラのような妖精もおる」
「でもそれがどうしたの?」
「もしかして…!!」
「風ちゃん!?何か分かったのか!?」
「どうして…どうしてもっと早く…!!」
「何があったのよ!!風!!」
「死んでいくんや…」
『え?!』
「精獣もアスコットの魔獣も…無理に城を支えようとして、何匹かは既に死んでもうたんや…」
『…そんな!!』
「うちらが何べん止めても聞こうとしいひん。心を使いすぎてもうて…な」
「じゃぁラファーガは…」
「死骸を埋めに行ったんや…。城の庭に」
光の涙は流れたままだった。
海も目を瞑り、涙が床に落ちた。
(こうなるから言うたんや…辛なるて…)
見ているほうが胸が締め付けられる。
なりふり構ってられない。
プレセアとカルディナが今強く思っている事である。
自分達で決めた事を破ってしまう悔しさが襲う。
3年の月日が経っても力になれない自分達を。
原因不明な事態にまた魔法騎士を巻き込むことを。
魔法騎士は涙を拭いた。
そして、プレセアの許に来た。
「…すまん」
カルディナは悔しさを隠さない。
「何が起きとうかうちらも分からんのに…」
と言った時、誰かがポンと肩に手を置いた。
「大丈夫だよ」
「ヒカル…」
「私たちがアスコットやフェリオに負けるわけないでしょ」
「私たちはデボネアを倒したという自負がありますもの」
「それに私は柱の証を掴んだんだ。やらないわけにはいかないよ」
光は微笑みながらそう言った。
プレセアはクレフに向かって何かを呟いた。
その顔が切なかった。
顔つきが変わった。
キリリとし、今までのような弱気な顔ではない。
光の額に指を突き出す。
心を使い教えていく。
言葉ではない、感覚的なものが光の中に入っていく。
目を閉じ、静かにそれを受け入れる。
それはまるで、クレフが光の"炎の矢"を使えるようにした時のような感じだった。
指がス…と離れた。
同時に、気のせいか城の"感覚"が変わった気がした。
プレセア達がこれを支えていたのかと思うと、彼女達が弱くない事を知る。
そして、それ以上の力を自然に出せた。
同時に、城が少し光ったかと思うと、随分マシな状態になった。
セフィーロの柱の証を掴む者の心は強い。
プレセアは海と風の二人にも同じようにした。
海と風も"感じ"、そしてどうすれば良いのかが分かった。
城は輝きを増し、いつしか元の状態に戻っていた。
いや、それ以上の状態になっていたのだが、それは後で判明する。
フラ…とプレセアが倒れこんだ。
「うぉぉ!?」
カルディナが支えた。
『プレセア(さん)!!』
「だ、大丈夫かいな!?」
「ク〜…」
ズザーとスライディングする者あり、ドカーンと吹っ飛ぶ者あり、床に頭から突っ込んでいく者あり…
「ね…寝てるの…?」
「驚かさないでよ」
「まぁそう言うたらんといて。いっちゃん無理しとったんはプレセアやねんから」
『え?』
「確かに普段以上の負担はウチらにもあったんやけどな、導師が城に全神経使うてもうて倒れた時に少しでも負担をやわらげようとしたんやろ」
「…!!」
「ではプレセアさんが少しやつれていらしたのは…」
「予想以上に心を使うとったんやな。その状態で更に心を使うたさかい、倒れても仕方ないっちゅうもんやな」
よ…っとプレセアをかつぐと、限界が早かったのかクレフのベッドに乗せてもうた。
それが海にショックを与えた。
「ね、ねぇ…」
「ん?」
「そ、その…その二人って…」
「ん?あぁチャウチャウ。ウチも体力ないねんもん」
と苦笑気味に話すカルディナ。
海はホ…っと溜め息をつく瞬間、
「まぁ起きたら真っ赤になっとぉやろうけどな」
とクスクス悪戯な笑顔で言ったので溜め息が途中でおかしくなった。
海に気付いていない二人はパァァと顔が明るくなった。
カルディナの行動や、何より先ほどまでの本人の動きから、そう感じる意外になかったからだ。
「え!?告白してないのか!?」
「私たちが帰ってから3年も経ちますのに!!」
「それが度胸がないねんもん。ウチも早よ言い早よ言い言うんやけど、顔を真ぁっ赤にして俯いてまうねんもん」
カルディナも苦笑しながら楽しそうに言った。
「まぁせやから導師関連の仕事はうちが王子と相談してな、プレセアにまわしとるんよ。まぁ強制的に一緒におさせとぉから半分バツっぽいけどな」
『アハハハハ』
とコロコロ笑う光と風。
「ねぇ、海ちゃんもこの二人が幸せになったら良いって思わない?」
光は嬉しそうにそう言ってしまった。
だが海はそれに耐え切れず、バンとドアを開け、走ってしまった。
「海ちゃん…?」
「海さん…?」
「な、なんや?どないしたんや」
『さぁ…』
「まぁまさかウミも導師のことが好きとかいうオチちゃうやろな」
カルディナは冗談のつもりでそう言った。
そう言えば昔そんな会話をしたような…とふと考えた。
ヤバ…という顔で。
魔法騎士が以前借りていた部屋にて。
海は机を思い切り叩きつけた。
「悪かったわね!!」
誰もいない部屋で思い切り叫んだ。
「どうせ私なんて3年もいなかったわよ!!プレセアは美人で優しいし!!クレフは私のことなんてなんとも思ってないわよ!!」
語尾のたびに机に拳が叩きつけられる。
ラファーガは様変わりした城…〜壁には小さく可愛い花やぬいぐるみが凄く多く、レースもあしらわれている〜…に絶句しながら、海のグチを廊下で静かに聞いていた。