テントの中ではフェリオが真剣な顔でランティスと話をしていた。
「どうやって、リュビを救う気だ?」
「俺にも分からない」
「おい!!方法があるんじゃないのかよ!!」
「分かればあんなことにはならない」
「…」
ランティスは昔模索していた。
兄が恋人と結ばれる方法を。
それができなかった悔しさはフェリオにも通ずるものがある。
「…」
アスコットはアスコットで考えることがある。
もし伝説が変わらないのならば、ということを。
魔獣に背をあずけ、星空を見ながら考える。
「じゃぁお前が魔法騎士をやるって引き受けたのはどういうことだ!!」
「そうしなければセフィーロには戻れないだろう」
「く…」
ランティスに突きつけるつもりが、あっさりとカウンターを喰らっているフェリオ。
「殺す以外の方法を見つけ出す事を優先する」
彼はそう言いきった。
フェリオはそれに頷くしかなかったが、もし見つけ出せなければという事を思うと恐かった。
ランティスはやることもなくなったため、早くに寝たらしい。
アスコットが周囲を警戒している。フェリオはその傍にいた。
「そこまでする必要があるのか?」
「何もないにこしたことはないよ」
いつになく真剣な表情のアスコット。
魔獣の力を借りなければ戦えないこの森で、彼一人では生きていけない。
フェリオは剣を手入れしている。すぐ戦えるように気を張る。
今の時点でフェリオは"忘れて"いた。
アスコットがなぜプレーリー一人にここまで動こうとするのかを。
まぁそれどころではなかったのだが。
ガサガサっという音がし、フェリオは一気に構えた。
「魔物か!?」
「うん」
フェリオが踏み出すと同時にランティスがテントから出てきた。
魔物はあっという間に4つ切りにされ、消滅した。
アスコットは思わず拍手をしてしまった。
「な、なに!?」
プレーリー、バスーカランチャーx2を装備。
「魔物だ。だが倒した」
「心配いらないぜ。俺達がいるんだからな」
「ありがとう」
彼女は笑顔で帰った。
「…」
ふと思う事。
「重くないのかな、アレ…」
アスコットの疑問にフェリオもハッとした。
「ま、まぁ創師なんだから軽く作る事もできるんじゃないか?」
「そ、そうだね…」
というどうでも良い会話の間にランティスはテントに篭るのであった。
実際は
「あ〜…効く〜…」
「ぷぷぅ」
肩揉んで貰ってます。やっぱりそれ相応の重量はあるらしい。
ということは細い腕でも持ち上がるという事だろうか…。
心、侮りがたし。
「明日から行くのね」
「ぷぅ」
「そっか…頑張ってね」
プレーリーの笑顔に少しの寂しさを感じた黒モコナだった。
でもどうせエスクードを取ったら戻ってくるんだけど…。
〜セフィーロ〜
ラファーガがドアを開けた。
予想通り、海のいる部屋は女の子らしさが溢れていた。
「ラファーガ…?」
彼女は一筋の涙を流していた。
テーブルに叩きつけた拳から血が滲んでいた。
彼は包帯を取り出すと、何か薬を塗った。
海の手を取り、患部に当てたあと、別の包帯で覆った。
「あ…ありがとう…」
まさかクレフの次に自分の手を取るのがラファーガだと思わなかったから、驚きを隠せず呆気に取られていた。
「…聞いてたの?」
「あぁ。…頼みがある」
「え?」
「カルディナ達を、嫌いになってやらないでくれ」
その言葉に海は少しグッとなった。
「オートザムのジェオという奴から聞いたが、女の争いは男よりも恐いらしいからな」
「…嫌いになんて、なれないわよ」
その言葉にラファーガは胸を撫で下ろそうとした。
「でも…そうよね…3年経ってるんですもの。無理もない、か…」
背もたれに体重をかけ、椅子を斜めにして天井を見る海。
「…二つ、言っておきたい事がある」
「…何?」
「恋愛の争いに関しては自分たちで解決して欲しい。私もカルディナもこれ以上、プレセアを応援はしない。もちろんウミを応援もしないが…」
「ちょちょちょちょっと待ってよ!!」
「伝説の戦いで、我々は触れてはいけないモノに触れていたことを知った。どちらかに加担する事でもう一方に凄く恨まれると、な」
「そ…それってアルシオーネのこと…?」
「もある」
「もあるって…他に誰が?」
「…言えない」
「言ってよー!!」
(ここで私がアスコットの想いをウミに伝えたところで意味はないが…やはり本人に任せた方が良いな)
ラファーガは襟を掴まれ、ブンブンと頭を振られても口を割る気ゼロ。
まぁ今言えば舌を噛むのは確実だし(そっちかぃ!!)。
揺れ終わって。
「も、もう一つ、いう事がある」
「何?」
「…ウミの部屋を用意してある」
「え?」
「私の部屋!?」
「私たちは三人一緒の部屋ではないんですの!?」
「…外で話そか」
カルディナに連れられた。
それはある覚悟の上で。
「理由はちゃんとあるんや」
『え?』
「…ウミが誰を好きなんか、知っとるか?」
「え?えぇと…?」
「海さんからそういう話を聞いたことがありませんわ」
「…導師や」
『え?』
「ウミも導師に惚れてもうたらしいんや」
『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?』
廊下中にその声が響き渡り、ウミとラファーガは廊下にバッと出た。
「な、何!?」
「なんとなく分かった気がする…」
ラファーガは自分の額を抑えた。
「ししし知らなかったよ!!」
「で、でもそうなると…!!」
風はクレフの部屋のドアを見た。
「そ。モロに、な…」
「あ…!!」
光も分かった。
「3年も経っとったし、雰囲気も良ぅなっとぉからスッカリ忘れとったわ」
カルディナが顔を手で覆った。
「ウチ、絶対嫌われてもうた…」
その言葉が光と風に突き刺さる。
『…』
自分たちもそうであると思うと、恐くなった。
部屋を分ける意味もこれで納得せざるを得なかった。