「ウミ…?」
プレセアが見た海は泣きそうな顔だった。

「今…何て…」
「だから…私もクレフが好きなの!!」
恋敵に対し精一杯言ってしまった。
プレセアは思わず耳をふさいだ。

「でも…3年も経っちゃったから…プレセアと良い感じになっちゃったはずよね…」
目線はそれている。
海自身、プレセアを見ることが出来なかった。

プレセアは海の突然の告白にどうすれば良いのか分からなくなってしまった。

「ままま待って!!」
「…」
「わわ私、てっきりアスコットだと思ってたのよ!!」
「え?」
「あ、いやその…」
アチャ〜と、やってしまった的な顔をしてしまうプレセア。
自分に降りかかった問題なのに…。
責任問題は一体誰に?

「アスコット…?」
「そ…」
「ど、どうして?」
「どうしてって…気付いてなかったの?」
「え?」
「…彼、ウミの事が好きなのよ」
「ちょちょちょ!!冗談はやめてよ!!そうやってはぐらかそうとしないでよ!!」
「本当よ」
「え?」
「アスコットはウミの事が好きなのよ」
「う…そ…」
「ま、私としてはフラれても想い続けるなんて呆れてモノが言えないんだけど、ね」
プレセアが恐れている事は、自分の想いがクレフに受け入れられない事。
アスコットを例に出すのは、海の気をそちらに引き付ける事だけではなく、自分自身に降りかかるからだと覚悟しているからである。
でもまだ明るく振舞えるのは、かつての親友の最期を目の前で見たからだろう。
アルシオーネ。彼女はシエラの心の中で生きている。
シエラが尊敬するのはそのポジティブシンキング。だからめげずに頑張れる。

「ふった…?」
「…3年前、ウミがチゼータのお姫様に挑みに行く前のアレ、告白だったのよ」
「え?」
「言われたでしょ。好き、って」
「え?で、でもあれは…」
「友達としてじゃなく、恋人にしてくださいっていう意味よ」
「…」
海は動けなくなった。
プレセアにたぶらかされてるのだと思いはしたが、真実だったらどうなのか。
だが、確かにあの時点ではアスコットのことを友人としては見ていた。
その時点でクレフの事を想っていたのだから。
そして今も二人に対する認識は変わらない。

変わったのは、プレセアに対する接し方。
彼女の想いを目の前でフィルター無しで見せられた。
気軽に接する事のできる"親友"が海の心から一人消えてしまった気がした。

「じゃぁ何…私にアスコットを好きになれって言うの!?」
「…そこまで言う権利はないわ」
プレセアはプイと背を向けた。

「ウミが誰を好きになるかは、ウミの自由だもの…」
「…」



音を立てて何かが割れた気がした。



「またかよ!!」
フェリオが見たのは、魔物が木をなぎ倒してやって来たからだ。

「やってみる!!」
「おい!!無茶だ!!」
「なんでだよ!!フェリオにさっき教わった通りにやるんだ!!」
「まだ技のキレとか精度が不十分なんだ!!今行けば確実にやられるだけだ!!俺に任せろ!!」
「お、おい!!フェリオ!!」
アスコットの声も聞かず、フェリオは横薙ぎ一閃。
その横の魔物はいつの間にかランティスが切り刻んでいた。

「…よく寝起きで動けるな」
「慣れている」
彼はそう言うと、今度はテントに入らずアスコットの許に行った。

「無茶はするな」
「なに!?」
「この森は魔法が使えない。怪我をしても回復魔法を使う事ができない」
「で、でも!!」
「新たな事に挑戦するのは良い。だが、下手をすれば死ぬのは俺達だ」
『…!!』
「焦りは隙を生む。この森を抜けるまでは俺達に任せろ」
「ランティス…」
彼はクルリと向きを変え、テントに引き返した。
アスコットは呆然としたが、その後膝から崩れ、思い切り地面を叩いた。

「…」
フェリオはしゃがみ、何も言わなかった。

「ご…めん…」
「言うな」
「僕…足手まといだ…」
「誰がそんなことを言った?」
「言わなくてもそうだろ!!魔法しか使えない僕はこの森じゃ何もできない…!!」
「ごちゃごちゃうるさいんだよ!!」
「かはっ…!!」
思い切りミゾオチに蹴りいれた。
アスコットはその反動で木に叩きつけられた。

「お前は俺達をどう思ってるんだ!!」
「…?」
「人間一人で何でもできると思うなよ!!」
「で…でも…」
「俺も悔しいんだ」
「え?」
「だが後悔はしてないんだ。魔法が使えないことは、な」
「フェリオ…?」
「だからこそお前がいれば安心感があるというか、なんて言えばいいんだろうな…」
「…ランティスはどうなんだよ」
「あ、あいつは…」
フェリオ、グサリと刺さった。

「弱点ないのかなぁ…やっぱり」
「普段から隙がないしな…」
万能な人に何も言えなくなったフェリオだが…

「ま、魔法なら導師の方が上だよな」
「剣は?」
「…ラファーガと良い勝負じゃないのか?」
「…」
アスコットがニヤリとしてるのは、強き万能を知っているから。
彼を引き合いに出されてはフェリオもたじろぐ他ない。

「と、とととにかく、ここは俺達に任せろ」
「…たく…」
アスコットはフェリオの肩に腕を廻した。
だがダレ〜ンとして引き摺られる。

「自分で歩け」
「うわぁ!!」
ドサットな。

「蹴り飛ばしておいてそれはないだろ!!」
「防御した奴の言う言葉じゃないぞ、それ」
「先にやったのはフェリオじゃないか!!」
「お前が頑固だからだろ」
「なんだとー!!」
「ハハハハハ」
「ちょ!!おい待ってよ!!」
置いてかれそうなアスコットだった。


彼らの知らない弱点。
それは今セフィーロにいる。



〜セカイア〜

「やっぱり…」
光は海とプレセアのことを言っている。

「すまん、ウチが行くべきやったな…」
カルディナはどういう展開になったのか、なんとなく予想できていた。

「どうした?何かあったのか?」
『あ…いやちょっと…』
意識を取り戻し、テーブルについていたクレフ。
魔法騎士が部屋でノンビリしてる間に目覚め、横で倒れているプレセアに驚いた。
魔法騎士達を"各々の"部屋に案内して戻ってきたカルディナとラファーガが全てを説明し、一応納得できた。

カルディナ達は口が裂けても言えない事があった。
クレフを思い切り抱きしめたのはプレセアでも海でもなく、テーブルについたクレフを見た光と風だったことを。
彼女達が思い切り抱きしめた等と言えば、あの二人の溝に地を裂く"何か"が来るのは必至。
クレフだけが何も知らない重苦しい空気の中、食事はどうなるのかが恐ろしくて想像もできなかった一行であった。

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