二人は背中を押さえて上を見ると、そこには少し驚くしかなかった。
姿形は違うが、緑の髪に金の瞳をしたショートヘアの女性―倒れてる男と同い年位―が自分達を助けてくれたのだ。

「立てないのか?」
「あ、いや、悪い」
二人は何とか立ち上がった。

「ごめん、助かったよ」
「大した腕でもないのにこの森でウロウロするからだろ」
女の言葉がグサリと刺さるアスコットだった。

「死んだと思ってたんだが、どうも仮死状態だったらしい」
フェリオはコキコキ関節を調整中。

同じ色の髪と瞳の持ち主の目が合った時、二人は電撃のようなものが体に流れた。

『な…何だ!?』
「何かあったのか!?」
アスコットが心配して訊く。

「…まさか、な…」


「ぷぷ〜!!」
モコナの声がする。魔獣が乗せて、自分達の所にやってきた。

「まだいたのか」
『え?違う!!』
だがその声は届かなかったらしい。

「く…!!」
無理矢理にでもダッシュする。親友を守る為に。
唐竹を決めようと高くジャンプした隙にアスコットは魔獣の傍まで来れた。

「バカ!!死ぬ気か!?」
「この子はやらせない!!」
「な…に…!?」

そしてフェリオが着地点で待ち構えた。

「悪いが、そいつを殺すと俺じゃどうにもならないぜ」
「どう言う意味だ?あれは魔物だ!!」
「違う!!魔物なんかじゃない!!」
アスコットが叫んだ。

女は着地し、男二人に囲まれる形となった。

「お前ら…!!メルビルの配下だったのか!!」
『メルビル!?』
「だったら容赦はしない!!リュビは俺が助ける!!」
その言葉にフェリオは確信を持った。
アスコットも分かった。が、信じられないという顔をした。

「お前…リュビの妹か…?」
「知らん!!」
『え?』
「俺は捨て子だったと育ててくれた人から聞いた」
「じゃぁ…恩か」
「いや…俺はリュビを見た時、衝撃が走った。絶対に守らないといけないという衝撃が!!」
フェリオに切りかかりながらそう言った。

「くっ…!!強いな」
「女だと甘く思うと死ぬことになる!!」
「へっ…残念だったな」
カンッと弾き、二人は後方宙返りをして着地した。

「女が男に勝てないとでも?」
「い〜や、俺より強い女が三人いるんだよ」
「お前よりも…!?」
「あぁ。まぁ剣だと二人か。俺も修行はしているんだが、今そいつらと勝負しても勝てる気がしないね」
「…フウは?」
アスコット、戦いに割って入る。

「あいつは元々弓を使っていたからな…あ〜でもどうだろうな」
何か余裕を見せ始めるフェリオとアスコット。
それにプツンとなった女剣士。

「じゃぁフェリオ、がんばって」
「あぁ」
二人はパンッと手をタッチした。

一瞬にして剣の音が森に響く。



〜セフィーロ城、大広間〜

魔法騎士がまた何か手伝いたいと申し出てきた。
だが、城の誰もがそれに反対していた。

「どうして!?私たちにだってできることはあるじゃない!!」
「そうだよ!!ランティスとフェリオとアスコットがいなくなったんだよ!!」
「彼らがいない分は私たちが穴埋めしないと、またクレフさんが倒れてしまいますわ!!」
「気持ちだけ、受け取っておくよ」
と言って、彼はどこかに行こうとした。
自分達の使っていた部屋を今は誰が使っているのかという謎はクレフにより隠されたまま。
そして光達も、夢の中の出来事はまだ述べていない。
もしそれが自分達の想像なら、そんなことで混乱に陥れてはいけない、と自分で決めた。
ただ、リアルだった。忘れられないほどに。

クレフは精獣達の許に来た。
彼が話し掛けると嬉しそうな表情をしてるのが光にも伝わる。

「うわぁ〜…!!」
光を見て何かを感じたのか、光の許に多くの精獣が集まってきた。

「良かったじゃない、光」
「光さん、本当に動物好きですから」
「うん!!」
彼女は精獣たちが自分に集まってくるのが嬉しかった。

「ねぇ、ランティスもこの位集まるのか?」
「お前に勝てるのは私ぐらいだろうな」
クレフはニッと笑う。

「そんなぁ」
「ハハハ。だがあいつも好かれていてな。こいつらはよくランティスの話をする」

精獣の間では海と風にも肩や腕に色んな生き物が集まった。
ただ、やはり光の方が人気で、彼女は慎重に歩かざるを得なかった。

で、その間にクレフは先に行こうかと思ったが、ふと足を止めた。
海と風が見ると、彼は目を瞑り、頭を下げた。
墓標。字は読めないが、墓に見えた。

「これ…」
「無茶をした奴らの、な…」
クレフは寂しそうな顔を浮かべた。

光たちも手を合わせた。それがクレフには嬉しかった。


次に向かったのは、アスコットの魔獣が集まっている場所。

「クレフってアスコットの友達もお世話してるの?」
「いや、ただ彼らと言葉が通じるのが私とアスコットしかおらんからな」
「クレフって凄いね」
光、純粋に褒めてる。

「そ、そうか?」
「そうですわ。人間でない他の生き物と平然と会話ができるんですもの」
「だが…彼らと会話するのに三日もかかってしまったんだがな」
『三日でできるなんて羨ましい…』
英語だの古文だの、学生さん達はクレフの頭のよさを羨んだ。

さて当然、海の許に魔獣が集まる。
このモテ度は精獣の中の光と同じ状態であろう。
海自身、魔獣には何度も助けられたし、仲は悪くはない。
だが、彼らに囲まれていると思い出す。夢の中で会った人を。
切ない顔をするのは恋しいからではなく、彼の想いに応えられないということが原因だった。
その事に気付いている者は魔獣を含め誰もいなかった。

ふと風が気付いた。

「あら?ここにはお墓はありませんの?」
『え!?』
「…魔獣はアスコットの願いの下、彼の故郷に墓がある」
『アスコット(さん)の故郷に…?』
「この城じゃなくて?」
「…忘れたわけではあるまい。プレセアのことを」
その言葉が彼女達にかつての記憶を蘇らせた。

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