「村を飛び出したのか」
「村長は許してくださった。俺に今できることは、村の無事を祈る事と、リュビを助ける事だ」
「だったらエスクードを取った後、村に戻れ」
「誰が」
「この国の魔法騎士伝説は、異世界から来た人間でなければ成就できないんじゃないか?」
「でないと僕らがセフィーロから来た意味ないもんね」
「確かに、異世界より来たれり伝説の魔法騎士がセカイアを救う、というのがこの国の伝説だ。だが果たして二人でメルビルを倒せるのか…?」
『三人』
「え?」
「俺たちは三人で旅をしているんだ」
「今はプレーリーの家で留守番をしている筈だよ。僕らがエスクードを取ったら今度は彼が行くんだ」
「な!?じゃぁそいつは一人で動くのか!?」
「心配するなって。俺たちが二人がかりでも叶う相手じゃねぇよ」
「そうそう。セフィーロ最強の男なんだから。ていうか、君も一人じゃん」
「…女は弱いのか?」
『ぜ〜んぜん』
「へ?」
「セフィーロで最も強いのは、俺よりも年下の少女だ」
「な、何ぃぃぃ!?じょじょじょ冗談だろ!!」
「本当だよ。それに、彼女を支える二人の女性もいるしね」
「あいつらを本気にさせれば俺たちの世界では勝てる奴はいないさ」
「な…何者だよ…!?そいつら…」
『異世界の少女』
二人はアッサリと笑って述べた。
「は?」
「まぁ、気にするな」
「ホントは気になってるクセに」
「それはお前には言われたくないな」
「…恋人、か?」
「フェリオはそうだよ」
アスコット、イジルつもり満々。
「お、おい。俺たちは…」
「だってそうじゃないか。全員が認めてるよ」
「…」
まいったなぁ的な顔。
「で、アスコットは?」
「…良いよ別に」
『お、おいおい』
「どうせさ、彼女の好きな人は僕じゃないよ」
『え?』
「お、おい!?初耳だぞ!!」
「…ウミが好きなのは、導師なんだ」
「な…!?ちょ、ちょっと待て!!導師は…!!」
「…もし今でもウミの気持ちが変わらなくて、セフィーロに来でもしたら大変な事になってるんじゃないかな…」
さっすが名探偵コナン。
「来てると思うのか?」
「…分からない。フェリオは?」
「…俺にも想像がつかんな…何せ三年も待っていたんだから」
「三年!?三年も会えていないのか!?」
『あぁ』
「異世界の壁を乗り越えることができないようだからな」
「へ?じゃぁどうやってその3人は来たんだよ」
「…姉上の魔法だ」
フェリオの声が重くなった。
「…?何かあったのか?」
「いや、別に…」
だが事情を知らないリームでも分かるぐらいにフェリオの表情は変わっていた。
アスコットは理由を知っていても言う気はない。
言えばフェリオが傷つくのが分かっているから。
〜セフィーロ〜クレフのお仕事ツアーも終盤
彼は机につくと書類に目を通し始めた。
プレセアとカルディナ、ラファーガもそれぞれ書類に目を通す。
そしてサインをする。
それを見ているだけの光達にとっては暇以外の何者でもなかった。
元々セフィーロの文字が読めない。
教えて貰おうにも皆集中しているから声をかけ辛い。
「…フウ」
「あ、はい」
「もうすぐ客人が来る。すまぬが出迎えてくれないか?」
「はい」
風が立ち上がると同時に光と海も動き出しそうだった。が。
「ヒカルとウミはまだそこにいてくれ」
『え?』
「順番があるのでな」
クレフはニッとした。
風がエントランスに着くと、突然何かが聞こえた。
「ドラ…?」
そして、見覚えのある、赤い龍が迫ってきた。
「あれは…アスカさん!!」
だから自分が出迎えろと言う事だったのか、と意味が分かり納得した。
確かに魔法騎士の中で一番アスカ姫と仲が良いのは風だから。
「…!!」
声が出なかった。
もう二度と会えないと思っていた、姉のような存在が目の前にいる。
「フ…フウなのかや…?」
「はい」
「ほ、本当にフウなのかや?」
「えぇ。本物ですよ」
「正真正銘本物のフウなのかや!?」
「えぇ。正真正銘本物の、鳳凰寺 風ですわ」
アスカの目には涙が浮かんでいた。
そして次の瞬間、風の胸に思い切り飛び込んできた。
風は背の伸びたアスカを抱きしめた。
「フウ!!本当にフウじゃ!!」
「お久しぶりです。アスカさん」
「もう…会えないかと思っておったのじゃ…!!」
「私もですわ。またこうしてお会いできて嬉しいですわ」
「わらわもじゃ!!フウの事を一日たりとも忘れた事はないのじゃ!!」
まるで恋人に向かって言うセリフ。
「また一段と、お美しくなられましたな」
「あ。確か…」
「お守り役のチャンアンですじゃ。そして」
「サンユンです」
「お久しぶりです。チャンアンさん、サンユンさん」
風はアスカと手を繋ぎながら客間に連れて行く。
既にテーブルセットがスタンバイされていた。
尻尾が見えたので、精獣や魔獣がやっただろう事は分かった。
(フウ)
(クレフさん?)
(他の国の客人が来るまでそこでのんびり話をしておいてくれ)
(はぁ…)
「いつも集まってるんですか?」
「いいや、今回は急用じゃそうじゃから来たのじゃ」
急用…なんとなく分かる。
「我がファーレン、セフィーロ、オートザム、チゼータは何かあった時にすぐ首脳会談を開くという条約を結びましてな」
「首脳会談…!?」
「緊急の際に四カ国が力を併せて解決を図る、ということです」
「そうでしたか」
「…で」
『で?』
「王子の姿がないの」
アスカ。ズバリ指摘。
その瞬間、風の顔が沈んだ。
「フウ?」
「あの人は…異世界に飛ばされたようなのです」
『えぇ!?』
「昨日突然、セカイアという国に、アスコットさんやランティスさんと一緒に…」
「なななななんと!?」
「王子が部下の方二名と飛ばされたですってぇ!?」
「…となるとそれが議題、ということですな」
「でも異世界って…」
「行ってみたいのじゃー!!」
アスカ、ノリノリ。
「でもその異世界で何をしていらっしゃるんでしょうか」
サンユンの疑問に風の言葉が詰まった。
魔法騎士の真の伝説を知っているのだろうか。
もし知らないのなら、言わなければならないのだろうか。
アスカの憧れの女性を殺したのは自分だ、と。