「落ち着け」
マスク男が声をかける。

「まだ"負けた"訳ではない」
その言葉の意味は何?

「分かってる!!絶対勝てるのは分かってるよ!!でも」
「王子」
「ちょっ…!!人に話を振っておきながらなんだよ!!」
アスコット、違う方向に怒ってる。
でも自分に関係なきゃ聞かないランティス…。

「ダメだ。俺の腕じゃぁもう斬れない」
「本気で言っているのか?」
「あぁ」
フェリオは右手の痛みなど感じなかった。
グリップが血で赤くなっているのにも気付いていない。

「フェリオ、アスコット…」
プレーリーは疲れ果てながらも呼ぶ。

「受け取って」
『え?』

武器が自らの方向に飛んできた。
二人はそれをキャッチした。

「これは…まさか!!」
「エスクード!?」
二人の問いに彼女は小さく頷き、その後意識を失った。

『プレーリー!!』
「…命に別状は無い」
マスクのおかげ?
ランティスはサラっと言ってのけた。

「心を使い切っただけだ。夜明けには戻るだろう」
ランティスの言葉が、アスコットに大きなため息を与えた。
横顔でそれを見たフェリオも少し笑顔になった。

「それにしても…今まで使っていたやつとはあまり変わらないんだな。俺のは」
フェリオは先程受け取った剣を見た。

「こいつもやはり俺たちの心次第で変わるのか?」
「さぁ…でも僕のはコレ何だろ?」
アスコットが手にした武器は、普通の剣ではなかった。
地球では昔、西洋の死神は大きな首狩鎌を持っていた。
それと同じ物が、今彼の手に握られている。

「横になぎ払いながら斬るか、叩きつけるようにして斬るんだろうな」
フェリオが解析中…

「扱えそうか?」
「やってみないと分からないよ。ところで」
「何だ?」
「二人とも、その武器を使うの?」
アスコットの指摘は、既に自分の武器を持っている人間に対して。

「ま…使わせてもらうさ」
フェリオはプレセアの剣をしまい、プレーリーの剣を握った。

「でないと、何のためにこいつがここまでしてくれたのか、分からないだろ」
「そりゃそうだね」
と談笑する中、ランティスは魔法剣を背中に収め、プレーリーの剣で戦う態勢を採った。

「王子」
ランティスは何かを投げ、パシッと受け取った。

「悪い」
フェリオはマスクを装着した。

「行くぞ」
「あ、ちょっと待って!!」
アスコットがランティスを止める。

「この戦いは…僕に任せて欲しいんだ」
「…」
「彼女はどうしても守りたい。もう…あんな事はあっちゃいけないんだ」
「俺が退く理由にはならない」
彼は前進した。

「ランティス…」
「あいつに当たっても仕方が無いだろ」
「分かってないんだ…」
「ん?」
「あの子達を殺せば、ズルズルと長引くってことが…」
「…お前のように、か」
「僕は復讐に燃えていた。きっと、ここの招喚士だってそうに決まってるよ。…僕にソックリなんだから」
フェリオは何も言えなくなった。
そして考えてしまう。伝説の結末を。

「…で、どうするんだ?」
今は悲劇の結末を考えたくない。
今は守るべき存在がいる。
フェリオは頭を切り替えようと必死だった。

「…交渉を続けていくよ」
そう言うと、アスコットは相手の魔獣に近づいた。
フェリオは警戒を怠らない。

「まだ、戦う気?」
アスコットは余裕を見せていない。
どちらかと言えばやはり悲しそうな声だった。
蛾はまだまだ戦うとばかりに鱗粉を撒いた。

「もうやめろ!!」
アスコットの両目から涙が落ちた。

「君達じゃ僕らに敵いっこない!!もう勝負は見えてるんだ!!」
再び響く涙な声。

「だから…やめてくれ…!!」
だが訴えは届かなかった。
それはやはり、触角からビームを出した。
先に撒いた鱗粉がそれを乱反射していき、どこに当たるか分かったものではない。
ランティスは人間の分だけの結界を張り直した。

それは交渉決裂を意味した。

「…お前は、充分戦った」
フェリオがアスコットの肩に手を置く。

「付き合ってやるよ。ズルズルと」
そう言って、フェリオは前進した。

「行こうぜ、ランティス」
「…」
二人はダンと飛び出していった。

アスコットの魔獣は声もかけてないのに集まってきた。
おかげで結界が濃くなった。
何かをアスコットに言い続けている。
だが彼はこの"運命"に涙を流し続けていた。

「僕じゃ…どうにもならないのか…!?」
涙が落ちるが、それを魔獣は否定した。

「…」
魔獣の言葉に我に返った。
振り返ればそこには最も守るべき存在が寝ている。
夜明け時に目覚めるというのだ。まだ終わってはいない。

「…君達は戻って良いよ」
アスコットは涙を拭き取り、立ち上がった。


「どりゃぁぁ!!」
フェリオのチャレンジ。
毒鱗粉の影響は無いが、ビームの方が恐い。
だが…
蛾はストレートにビームを当てようとした。

「うお!?」
しかし、鱗粉に反射され、あらぬ方向に飛んでいった。
それが味方だったりして…。

「ビ、ビックリさせやがって…」
で、気を取り直して唐竹。

(いけ!!頼むから効いてくれ!!)
それしか考えていなかった。
今は刃が刺さっていない。

「くっ…!!」


ランティスは難なく倒してみせた。

「王子」
「なんだ!!」
「願うのではなく、思う事が大切だ」
「…ありがとよ!!」

フェリオの剣が入っていく。
だが彼の目にはそれ以外にも入ってくる映像がある。
それは生命の終わる瞬間だった。

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