三体の"敵"は倒れた。
残るは5つ。
そのうち一体は味方にビームを喰らってたんだけど…。
「…!!!」
セカイアの招喚士の心に大きく傷が入った。
「う…そ…う…嘘でしょ…」
意識しなくても流れるモノがあった。
彼女を乗せてる魔獣の背に染み渡る。
「どうして…!?どうしてあの子達がやられちゃったの!?」
セフィーロ城。
光は撫でられていた。
「ほんまに凄いやっちゃ」
「あぁ」
「え?あ、あえ〜と…」
さすがに皆に頭を掻き回されては髪型もそうだが何やら恥ずかしくなってきた。
本心から褒めてくれてるのは分かってるけど。
ようやく頭を整えた。
魔物が一斉に消え、真実を確認しにきた。
それが光の祈りだと知って誰もが驚いた。
口には出せない事も思った者も、何名かいた。
「もう夜も遅い。寝るとしようか」
クレフの言葉に反対する者はいなかった。
アスコットは昔を思い出していた。
アタランテの死が100%の精度で思い出された。
何故なら、現状はそれと変わらないからだ。
「…」
遅すぎた。
フェリオとランティスは人命を優先した。
伝説に最も複雑な思いを抱き、この戦闘では最も関係無い者。
彼等の覚悟は、魔獣の命を奪う事ではなく、伝説に立ち向かう事にあるかもしれない。
涙を拭いてもまた出てきた。
それを袖で抑えながら、彼は立ち上がった。
「…ごめん」
涙を拭き終えた。
右手には倒れている人が創ってくれた武器をしっかりと握った。
(この人を守る…今はそれが一番大切なことだ!!)
覚悟を決めた。
「いける…!!凄いぜこいつぁ…!!」
フェリオは魔獣を斬る事に躊躇いが薄れてきた。
守るべき存在は今は一人だからだ。
だがアスコットには悪いと思っている。
(謝って許してくれるような奴じゃないからな…どうしようかなぁ…)
二体目を倒した後に考えてもなぁ…
「稲妻召来!!」
ランティスは剣を介した。
この剣も魔法剣と同じく媒体効果があるらしい。
流石に"たった一人の為の武器"である。
(この剣で、俺は何をすれば良い…?)
2体目を倒した後の事。
(メルビルを殺し、リュビを殺すために俺は武器を創らせたのか?)
剣を見て、その後の運命を問う。
(運命を変えるには…どうすれば良い…?)
自問しながら、次を迎え撃つ態勢をとる。
「うわぁぁぁ!!」
「!?」
突然の叫び声にフェリオが驚いた。
「アスコット…」
「…」
彼はデスサイズを使った。
慣れていないので、唐竹をすると地面に刺さってしまう。
だがそれは魔獣の頭を割った。
「お前…」
「…」
何も言わず、アスコットは力ずくで剣を引き抜いた。
「ごめんよ…」
「!!」
アスコットの言葉は"死者"へなのか、それとも"これから死ぬ者"へなのか。
セフィーロで心を傷ついた魔法騎士が選んだ道、命を終わらせる事。
彼はそれを、今実感している。
そしてフェリオはそれを感じると、自分たちに降りかかるであろう運命を恨んだ。
「何故だ…姉上…」
雨が降り始めた。
鱗粉が雨の重さで地面に叩きつけられる。
どちらも有利であり、どちらも不利となった。
「稲妻召来!!」
ランティスの魔法が威力を増す。
雨に雷は合う。
「…」
一旦戦線離脱。
彼はプレーリーの許に向かった。
「ぷぅ?」
「テントを」
「ぷぅ」
額飾りからテントが出てきた。
ランティスは濡れ始めた彼女を担ぎ、その中にモコナも入れた。
体を拭くのはモコナに任せたらしい。
彼がテントから出ると、アスコットとフェリオはそれぞれ2体目を倒していた。
フェリオはそうでもなかったが、アスコットの心が大きく乱れているのが分かった。
雨のせいではない。彼は泣きながら斬っていくのだ。
「少し休め」
彼の肩に手を置いた。
「ランティス…」
「お前にその選択をさせたのは、俺たちだろう」
ランティスの言葉に彼は首を横に振り切れなかった。
「俺達に任せろ」
彼はそう言うと、アスコットの前方に出た。
「…ごめん」
最初は呟く程度だった。
「ごめん…ごめん…!!ごめんなさい!!」
次第に叫び始めた。
誰に対しての侘びなのか。戦いを肩代わりする二人か、殺される魔獣達か、それを大事にする招喚士か。
戦力になれないからか、戦いを放棄したからか、確実に命を奪うからか。
いずれにせよ、フェリオとランティスの心には何かが響いたのは間違いなかった。
戦闘開始から2時間。
生き残ったのは"仲間"だけだった。
シエラは落ち着いていた。自分でも不思議なくらいに。
同じ創師が死んだという事を感じなかった。
「…大丈夫、てことかしら…」
「ぷぅ…」
モコナの言葉が分からない。
でもそれでも良かった。モコナが悲しい顔をしていないだけで元気になれたのだから。
「ありがとう、モコナ」
「ぷぅ」
頬にキスをした。
『おやすみなさ〜い』
光たちは一つのベッドで寝た。
多分、今日一日の"報告"が入るかも、と思いながら。