プレーリーとアスコットの雰囲気は険悪というべきか。
互いに対立はしていない。むしろ一方的。
だがアスコットはそれを覚悟していなかったわけではない。
彼の背には彼女の考えられないほどの重圧がのしかかっている。
「あの時のことを二度と繰り返さないように、こいつは色々考えていたんだ」
フェリオが諭す。ランティスは何も言わない。
「俺たちもある意味似た様なもんだ」
「え?」
「言っただろ?セフィーロの悲しい伝説を始動させたのは俺の姉上だったと」
「…」
「伝説の真意を知らぬまま戦っていた魔法騎士もまた…」
フェリオはそれ以上言おうとはせず口を閉じた。
言いたくなかったのだろう。彼女達の辛さを分かりたいから。
「魔法騎士の伝説は」
ランティスが立ち上がった。神殿のほうを見ているらしい。
「終わらせる」
セフィーロ城。
タータとジェオのにらみ合いが続いていた。
「またかよ…」
『また?』
「あぁ。あの二人は何かあるたびにぶつかるんだよ」
『へぇ〜…』
「あら、でも」
風がきりだす。
「喧嘩する程仲がいい、と言いますわ」
「ほえ?どうしてなのじゃ?」
「さぁ…私たちの国のことわざなのよ」
『ことわざ?』
「えぇと、格言というか、教訓、だっけ?」
「さぁ…とにかくそういう言葉があるのよ。この世界にもあるんじゃない?」
『えぇと…』
捻りだすほどなのか?と光たちは思わずにはいられなかった。
そしてそんなことを話してるのにも気付かなかったジェオとタータだった。
「終わらせるって…あなた達が魔法騎士じゃない」
プレーリーはそこにツッコミを入れた。
「いや、違うんだなぁこれが」
フェリオも否定した。
「どうして?」
「俺は魔法は使えないからな」
「はぁぁぁぁぁ!?」
プレーリー、凄く困惑。
「俺は剣士だ。魔法は使わない、な」
「そ、そういえば見たことなかったわね…」
「ランティスのように魔法も剣も使える方が良いに決まってるが、俺は敢えて剣だけにしたのさ」
「どうして?」
「俺はこいつらほど心が強くないからな」
「!?」
「そうなの?」
「フェリオは弱くなんかないよ!!」
アスコットが叫んだ。
「いきなり王子だって知って、お姉さんが死んで、そしてセフィーロを任されて、それでもフェリオは折れる事無く今までずっと!!」
「もう良い」
フェリオ自身が止めた。
「だが、お前やランティスに比べれば俺は未熟さ」
「そんな!!」
「考えてもみろよ。姉上が亡くなった後他国に攻め込まれたが、俺はほとんど何もできなかったぜ」
「フウを童夢まで助けに行ったんだろ!?僕なんか助けようにもカルディナの術にかかってたんだ…」
その悔しさはある。だから積極的に動きたかったのだ。
「…」
プレーリーはなんとなく重いなぁと思った。
ランティスはどちらかというと聞いていなかった。
とある街。
リームはその近くにいた。
「おい」
「きゃ!!」
少女は驚きまくった。
「ビ、ビックリした〜…脅かさないでよ!!」
「い、いや、悪い。そんなに驚くとは思ってもいなかったんだ」
「で、何?」
「それは俺のセリフだ。何をコソコソとしてるんだ?」
「…復讐よ」
「復讐?誰にだ?」
「…伝説の魔法騎士」
「何!?」
そこに驚いた。
「フェリオ達が何かしたのか!?」
「フェリオ?」
「あ、あぁ。一人はそういう名前なんだ」
「他の奴は!?」
「え、えぇとアスコットって言ってたか。それとランティスか」
「フェリオ…アスコット…ランティス…」
覚え刻み付ける。
「何か…あったのか?」
「…殺されたの…」
「親か!?」
「…友達…大切な大切な友達だったの!!」
彼女はボロボロと大粒の涙をこぼし始めた。
その様子に、それが嘘では無いことを知った。
「…」
ギリ…と歯軋りがした。
ギュ…と拳を握った。
「え?」
「とにかく話は酒場だ!!」
「え!?ちょ、ちょっと待って!!」
「何だ!?」
「…私…この町に入れないの…」
「あ?どういうことだ?」
「友達を見たら…皆…逃げちゃうし…襲われるの…」
「…見せてみろ」
「え?」
「良いから見せてみろって言ってるんだよ」
「で、でも!!見たら絶対嫌っちゃう!!」
「良いから見せやがれっつってんだ!!」
その声と迫力にかなりビクゥッ…となった。
仕方が無いので渋々という感じだった。
「魔獣招喚!!」
「え?」
そこにリームはキョトンとした。
「…」
招喚士は気まずそうだった。
友達というのは、魔物といわれてもしょうがない存在だったから。
「…」
リームは何も言わず、腕を組んでいた。
「…おい」
「な、何!?」
「お前の名前は?」
「え?」
「俺はリーム。お前は?」
「え?ど、どうして?」
「決まってるだろ。組んでやるぜ」
「え?」
「だぁかぁらぁ!!お前と組んでやるって言ってるんだ」
「!!!」
その言葉だけで、充分だった。
「お、おい!?」
リームが驚いたのは、目の前の涙だった。
「な、泣くなよ!!」
「だって…!!だって…!!嬉しくて…!!」
「だ、だからって泣く事はないだろうが」
「…アリーナ…」
「え?」
「アリーナって言うの、私…」
「そうか…じゃ、よろしくな、アリーナ」
「え…?」
彼女が驚いたのは、差し出された手。
アリーナはリームの手を握ると、嬉しそうな涙を流し、頬を摺り寄せた。