海は光達に気付いていないのか無視しているのか、コッ…コッ…コッ…と廊下を歩いていった。
その雰囲気は声をかけられない空気を醸し出していた。声も出せないぐらいに。
その方向は魔法騎士が借りていた、現チゼータ・ファーレンの姫が寝ている部屋だった。
ほどなくして、クレフが部屋から出てきた。
目の前には光がいた。
「クレフ…」
「どうした?」
「部屋で何をしていたんだ?」
「…思っていたのさ」
『思っていた?』
さっきの覗き見集団もいる。
「あなたも、寂しいと感じておられるのですね」
タトラの意見に、彼は切なげに笑顔を浮かべた。
「戦いでの心配はほとんどないが、心とかではどうか、とかをずっと考えていたよ」
「あや?心?」
「あぁ…セカイアに行った三人は確かに心が強い、が…それが砕るような旅をしている…と思うとな」
『……』
光と風もシュン…となった。
「心が砕けそうな旅…いくらなんでもそれはないでしょう」
チャンアンは励まそうとしてそう言った。
「…そうである事を皆、心の底から願っておるよ」
ドンッとジェオはNSXの司令室でふんぞり返った。
彼は自分で仲間の旅を考えるようだ。
「ジェオ」
「…なんだ?」
「何…怒ってるんだよ…?」
ザズが少し怯えている。
「不安を抱えたままの奴らに無駄弾を供給したかと思うと腹が立つんだよ」
「でもセフィーロを守るためだろ!?それがイーグルの為だって言ったのはジェオだよ!!」
ザズの言葉にジェオは背を起こした。
「あぁ…確かにそうだ。だが、それをする為にも色々な条件や制約がつくだろ」
「そりゃそうだけど…」
「不安を俺たちにも相談しないまま抱え込んじまってるんだ。俺たちがいくら魔物を倒しても結果は一緒さ」
彼はそう言いながら何かをモニターに出力した。
それはGTOのインジゲーターであり、何をどの位消費したのかが一目で分かるのだ。
また、スカウターのようなもので精神エネルギーの状態を見る事もでき、ザズはジェオが疲れきっている事を知っている。
「イーグル…お前ならどうする…?」
「僕はセフィーロの伝説で、魔法騎士を何度も殺そうとした」
『!!』
セカイアの二人はそこに驚いていた。
「それに…人を…殺した事がある…」
「……」
リームは刃をアスコットに向けた。
この時ばかりはプレーリーも何もしようとできなかった。
「友達を殺されてその復讐に燃え、何度も友達を送り込んで、…殺されたよ。全員」
刃を突きつけられても汗一つ出さなかった。
「俺がそれと重なるとでも言いたいのか!?挑んだから殺されて、だから挑むなとでも言いたいのか!?」
彼女の問いに彼は首を横に振った。
「君は何を言っても挑むだろうね」
そう言うと彼はフェリオを見た。
(君はフェリオと同じだから)
「だから君はアリーナと戦う事になるよ。明日にでもね」
「…何故そうなる?」
「言っただろ。俺たちの伝説にあまりに似ている、と」
フェリオが再び話をしたいらしい。
「俺もアスコットと戦った事がある」
「え?」
「今のお前と同じさ。こいつと協力して魔法騎士をおびき出したんだ」
「じゃぁ何故…?」
「魔法騎士の一人に惚れた」
彼はニッとした。
その瞬間、リームは一瞬何もできなかったが…。
「俺はそいつを守る為、アスコットと戦ったのさ」
「…」
セカイア人は呆気に取られていた。
「僕は多分一番多く…いや二番目かな…その位魔法騎士と戦ったよ」
「じゃぁなんだ?アリーナは何度でもお前達と戦うと言いたいのか?」
「このままじゃ、ね」
『?』
「明日、アリーナは仕掛けてくる」
「どうやってだ…?」
「手紙か何かがくるよ」
『は?』
「君を殺す、と」
『!!?』
「そして、君の力じゃ勝てないよ」
「なんだと!?」
刃が首に触れる。
「そいつの言う通りだ」
フェリオが言った。
「あの時、俺は勝てなかった」
「!!」
「え?でも生きてるじゃない」
「まぁそりゃぁ…な…」
「うん…」
顔を合わせてポリポリと後頭部を掻く二人。
マジメモードではなくなっていた。
「お、おい!?」
「夜も遅いし、寝ようぜ」
「そうだね」
「お、おい待てよ!!中途半端すぎるだろ!!」
「話は後でゆっくりとしてやるよ」
フェリオはそう言い、男三人は部屋を後にした。
「おい!!どういうことだ!!出しやがれ!!メルビル!!」
「お前では勝てない」
メルビルは冷たくあしらった。
「待てよ!!まだ完全に負けたわけじゃねぇだろぉが!!」
「何度挑んでも勝てはしないよ」
「くっ…!!氷槍撃射!!」
「ふん」
「!!」
メルビルの姿が消えた。
「お前を死なせるわけにはいかない」
牢の入口で彼はポツリと呟いた。
「閉じ込めとくんか?」
「あぁ。下手に外に出ればまた魔法騎士に挑むだろうからな」
「だがあいつは…」
「分かっている。だから入れておるのだ」
「メルビル…私やっぱり真実を言った方が良いと思うわ」
女の言葉にピクっとなった。
「でないとまた…無実の人を…それにアリーナはまだ子どもなのよ」
「……」
「いくら"利用する価値がある"からって…」
「だがそれを望んだのはアリーナ自身だ」
「……」
「ま、アリーナがやられたら次はウチがいくさかい」
「カイシア…」
ギュッ…と彼女の手を握った。
「触らんといてぇな」
「!!」
「ウチの手、汚れとるんよ。あんたのキレイな手、汚しとぅない」
「カイシア…」
「キェナ、お前にはお前のやる事がある」
「…えぇ…」
「それにお前も、自ら俺たちに協力すると言ってきたんだ」
「分かってるわ…でも…これ以上不要な殺しはもうやめて欲しいの」
「お前にはまだ、分からないかもしれないな」
メルビルはキェナの顎を握った。
「手段を選んでいる暇は、私には与えられていないのだ」
「……」
キェナは死を覚悟した。
が、メルビルは何もせずに離れていった。