「ザズ!!」
「これで全部だよ!!」
「よぉし、帰還する!!」
GTOは腕についた魔物の死骸を地面に落とし、その場を去った。
同じ通信が入ったため、チゼータの二人もジンを戻す事にした。

「ハハ…出てきた意味がなかったな」
「えぇ…でも助かったわ」
ラファーガとプレセアは苦笑気味に彼らを見送った。

「プレセア」
「何?」
「もう…決着をつけたらどうだ?」
「決着…!?」
「私もカルディナも、正直に言えばウンザリしている」
「あ……………ごめん…なさい………」
「お前達の不安が尽きないから、また新たな魔物が生まれてくる…一般の者に被害が出ていないのが不思議なくらいだ」
一応地方自警団みたいのがなんとか持ちこたえてたのだが、GTOとジンが動いてたので誰にも被害を出さなかった。
流れ弾を民間人に当てなかったのはジェオの厳しい訓練とタータ、タトラのコンビネーションの賜物と言えよう。
だが、いつまでも幸運が続くはずが無い。死者が出る前に対策を。
それは大きな不安の解消。

「…」
敗れる確率も50%、いやもし自分達以外の人も絡めばそれ以上…。
勝てる見込みが少ない戦いは苦しさしか生まない。
だがそこに光りが見えればそれは変わる。
挑むのか挑まないのか…彼女は人生で最大の選択を迫られていた。
親衛隊長が猶予を許さないのは国のため。自分のせいで国が壊れるなど、辛いにも程がある。
シエラとてその気持ちはよく分かる。愛する者の住む国であり、なによりも自分の住んでいる国なのだ。
過去に予想もしなかったような悲劇があったとはいえ、この国を愛している。
だから時折試運転を兼ねて魔物退治に出かける。
この愛する国を自分たちが滅ぼしてしまうなど、恐ろしいにも程がある。






「ダメだ!!殺すなんて絶対ダメだ!!」
「いい加減にしろ!!」
リームは思い切りアスコットの胸倉を掴んだ。

「あれはもう敵だ!!事実を認めろ!!でないと死ぬぞ!!やられるのは俺たちなんだぞ!!」
「だから説得するんじゃないか!!」
「それでなんとかなるんだったら俺があいつをどうにかしてる!!」
『!!』
「だがもうこうなっちゃった以上、戦うしかないだろ!!」
怒りの顔に悔しさが少し混じっていた。
フェリオは自分と同じ人間だと思っていたが、ここで相違を感じた。

(やっぱり…個人差っていうのはあるんだな…)
話でしか聞いたことのない、光の心の生んだ影の存在。
ノヴァは魔物を城の中に多数招換し、子供たちの不安がそれを強くした。それを破ったのは子供たちの心と魔法騎士二人だが。
今思えばよくツルむ奴は愛する者もそうかもな、となったが、今はそれどころではない。

「リーム…でもこのままじゃいけない!!」
「なんだと!?」
「もしあの子を殺せば、今日一日中アリーナと戦い続けることになるんだ!!」
「何!?」
「友達を殺されて何度も何度も復讐しようとして戦った。…僕はね」
「僕は…?どういうことだ?」
「僕は何度となく魔法騎士と戦ったんだ。…ザガート側の人間としてね」
「ザガート?」
リームはその名を初めて聞いた。

「ランティスの兄だ」
フェリオが代わりにに答えた。

「ザガートは魔法騎士を幾度となく殺そうとした。愛する人を守るために、な」
「愛する人…?」
「あぁ。セフィーロの"柱"であった、エメロード姫。俺のたった一人の姉上だった人だ」
「柱…!?」
リームはまさかと思った。

「そうさ。セカイアのすべてをリュビが決めるように、姉上はセフィーロの全てを決めていたんだ」
「ちょっと待て!!魔法騎士はセカイアを救う!!それが伝説だ!!」
「俺たちの国でもそうだったよ。そして、セフィーロは魔法騎士によって完全な平和を取り戻した」
「じゃぁなんで…ザガートは魔法騎士を殺そうとしたんだ?あ、そうか…」
リームの推理。

「互いにエメロード姫を守ろうとしたけどその意思が伝わっていなかったのか…」
「違う」
「え?」
「言っただろ。…セフィーロの伝説は悲しみしか生まなかった…と」
フェリオは淡々と語っている。
もはや真下にいるアリーナの魔獣なんて意識にはなかった。




「どうするの?フェリオ達と合流する?」
「あぁ」
「今度は間違ってないでしょうねぇ」
「ぷぷぅ!!」
モコナの額飾りから一筋の光が出てきた。

「あら、モコナ、ありがとう」
「ぷぅ!!」
「…」
なんて便利な生き物なんだ、モコナよ。

「精獣招換」
ランティスはクセでやってしまった。
だがここは異世界。アスコットよりも心が強く魔力があるとはいえ、招換魔法のトップにいるわけではない。
アスコットに襲い掛かった心の負担が、自分に予想以上に大きく襲い、顔がゆがんだ。

「ランティス!?」
「ぷぷぅ!?」
「くっ…」

結局、自分が倒れてしまう前にし魔法をキャンセルした。
だが彼はその場でヒザから崩れた。

「ランティス!?ランティス!!大丈夫!?」
プレーリーが彼の肩を担いだ。
だが砂地で体重差がある男を持ち上げると…
彼女は足首まで埋まってしまった。

「心配…ない…」
彼はゼーハー息切れしながら言った。

「大丈夫じゃないじゃない!!何をしようとしたのよ!!」
「呼ぼうとした…」
「え?」
「俺の精獣を…」
「あなたの精獣を!?ここはセカイアなのよ!!あなた達のいた世界とは違うわ!!」
「だがアスコットは呼べた…」
「!!」
「俺には…無理らしい」
「ランティス…でもどうして呼ぼうとしたの?それこそアスコットに頼めばよかったじゃない」
「魔獣が近い…アスコットのじゃない」
「なんですって!?」
プレーリーはあたりを警戒した。
だが、それが下からやってくるとは思ってもいなかったので…

「な…!?きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「くっ…うぉぉぉぉぉぉ!!」
「ぷっぷぷぷーーーー!!」
二人+一匹は空中に投げ飛ばされた。


「ランティス!!プレーリー!!モコナ!!」
アスコットの魔獣が急加速。
当然…

『うぉ!?うゎぁぁぁぁぁぁぁ!!』
犠牲者二名。
二人は魔獣から滑り落ちてしまった。

「しまった!!フェリオ!!リーム!!」
もう遅い。

「くっ…魔獣招換!!」
もう一体空中戦が可能な魔獣を呼び出した。
ただし、それはフェリオとリーム向けに。
アスコットはランティス達の方に急行した。





光達が起きると、海はもう着替え終わっていた。

「海ちゃん…おはよう」
「おはようございます。海さん」
「おはよう。…ねぇ、一つ…訊いていいかしら…」
『え?』

「夢が…!?」
「つながってる…!?」
海の話に二人は驚きを隠せなかった。

「アスコットは…自分の夢だってハッキリ言ったの。私の夢のはずなのに…」
「じゃ、じゃぁちょっと待って!!じゃ、じゃぁ」
「私は…本当にフェリオと話をした…と…?」
「で、でも!!そ、そんなことが本当にあるのか!?」
光は震えていた。恐怖ではない、奇跡とでも言うべきことに。

「わ、分からないから訊いてるんじゃない!!」
「あ…」
「でも…夢の中のフェリオは…」
風の言葉にピクとなった二人。

「セカイアの事を話しますわ」
「ランティスもだよ!!」
「でも…」

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