『でも?』
「夢の中では…彼に触れることすら…できませんでした…」
風の沈む声に共感したのは光だけだった。
同じだからこそ、その苦しさが彼女を襲う。

「私の夢なのに…!!もし…夢が本当に繋がっているのなら…何故触れることもできないんですか…!!」
風は悔しさと悲しみを隠せなかった。
日ごろ溜まっているものを吐き出すように。

「セフィーロから帰って、一度も彼を忘れたことがなくて!!他のどなたでもなくフェリオ以外愛せませんでした…!!なのに…!!」
「風…」
「風ちゃん…」
光は風の手をギュゥッと握った。

「その気持ち…分かるよ…痛いほど分かるよ!!」
光は涙目になっていた。

「何回もランティスの夢を見るのに…!!東京でも何回も見たのに…!!セフィーロに来てからはもう…ランティスの夢しか見ないんだ…」
「光さん…」
「ランティスに好きだって言った…そしたらランティスも好きだって言ってくれた!!なのに…なのにランティスの手に触ることができなかったんだ…!!」
「光…」
「せめて夢でなら…って思った…!!でも…ランティスは透けてしまうんだ!!絶対に触れないんだ!!」
光はボロボロと涙をこぼした。
風はそれにつられるかのように涙を流し、光をギュ…と抱きしめた。

愛する人の夢を見てもそれを実感することのできない。
彼が本物であったとしても、愛するもの同士を引き裂く夢。
セフィーロに来てから自分だけが苦しんでいると思っていた海は大きく反省した。
彼女たちの苦しみを分かってあげられなかったことに。
そして考えさせられる。

(じゃぁ…どうして私は…)



「おう、おかえり」
「ぷぅ!!」
カルディナがモコナと共にラファーガとプレセアを出迎えた。

「朝からご苦労なこって」
「いや…行っても無駄だったよ」
「は?」
「オートザムとチゼータの姫様がだいたい倒しちゃったのよ」
「なんやと〜!?」
カルディナ、さすがにビックリ。

「あんた親衛隊長やろ!!なぁんで助けてもろうてばっかりやねん!!」
「す、すまん…」
ラファーガ、負け気味。

「明日からは…もっと早く出る」
ラファーガの誓い。セフィーロはこの手で守る。
ラファーガが去ったあと、

「プレセア」
「な。何?」
「…うち、もう言いたくなかってんけど…言わせてもうらうわ」
「…分かってるわよ…そんなこと…」
「…うちまだ何も言うてないんやけど」
「聞き飽きたわよ。…夫婦揃って同じことを言うんでしょ」
「へ?」
「でも…じゃぁ教えてよ!!」
プレセアはカルディナに詰め寄った。

「一体どうしろって言うのよ!!どうしたら私の心は救われるのよ!!」
「プレセア…」
「どうすれば良いのよ…!!」
カルディナの肩を思いきり掴んですがった。
周りが簡単に言ってしまっても、本人がそれで済むのか?
そんなことで済むのならこんなに悩んでなんかいない。
こんなに苦しんでなんかいない。
親友が最大の"敵"、しかも彼女に勝てる要素を自分で見つけ出すことができない。
彼女は素直だが、自分は自分を偽っている。でもそれは彼女たちのためなのだが。
親しい人たちにウソをつき続けていることへの罪悪感、そこに襲い掛かる戦い、心への攻撃。






『…んのやろぉっ!!』
二人、怒り心頭。
そりゃいきなり振り落とされたらなぁ…
フェリオは痛そうに頭を抑えている。
一応魔獣は間にあったんだけどね。

一方でアスコットの魔獣はランティスたちを救助した。

「どうしたんだよ!!」
「ランティスが精獣を呼ぶとか言ってやったんだけど、心を使いすぎた見たいなの!!」
「え!?」
「しかも呼び出せなかったのよ!!」
「なんだって!?そんなバカな!!僕よりも何倍も強いランティスが!?」
アスコットはランティスの強さをよく知っている。
彼は生身でオートザムのファイターメカに対抗できる存在なのだから。
柱を巡る戦いで初めて出会ったが、彼の強さは皆が知った。
そしてセカイアでも。
だがその彼が精獣を呼び出せなかったというのだ。
自分ですら苦労しながらでも魔獣を呼び出せるのに…。
その時

『おいてめぇ!!』
"被害者"がすぐ横にやって来た。

『もう少しで死ぬところだったぞ!!』
「ご、ごめん…」
彼らのやり取りにプレーリーは一瞬呆然となった。


さておさらい。
彼らはアリーナの魔獣と戦っている。


「まっかせて!!」
プレーリーは例の如く、ダブルガトリングガンを出した。

「ダメだ!!」
アスコットがまた制止する。

「え?どうして?」
「殺しちゃダメだ!!絶対に!!」
「いい加減にしろ!!」
リームはアスコットの魔獣の飛び移ると、彼を思い切り殴った。

「プレーリー、そいつをどうにかしておいてくれ」
「リーム?」
「理想は理想だ。だが…現実は現実だ」
リームはそういうとアリーナの魔獣を睨んだ。

「こんなところで、俺は立ち止まっていられない。先に進むために!!」

フェリオはアスコットの気持ちも分かる。
だが、リームの言うことも分かっている。
彼女が抱いている思いは、昔自分が抱いていた思いそのものなのだから。

「…悪い」
「え?」

ドッと音がした。

「カ…ッ…!!フェ…リオ…?」
「すまん」
「フェリオ!?アスコット!!」
アスコットはみぞおちを殴られた。
彼はそのまま崩れそうだったが、かろうじてプレーリーが支えた。

「フェリオ!!どういうこと!?」
「こいつの言うことも分かるんだ。でも…リームの言うことも間違っちゃいない。…アスコットには悪いが…な」
フェリオはそういうともう一体の魔獣に乗った。

「フェリオ!!」
「後で好きなだけ…殴ってもらうさ」
彼なりの償い。

「待て!!俺も行く!!」
リームは急いで飛び乗った。

こうして、ようやくマトモに戦いを挑むことになった。




セフィーロの食事は"いつも通り"だった。
二人の間の溝を確認できる。その理由を大体が知っている。

ラファーガとカルディナは早く終止符を打ってほしい為に言った。
決着をつけろ、と。

光たちはそこまで言えなかった。
それどころではなかったのだから。
だから、朝の話題が決まってしまった。

「…あの…」
風は照れながらも沈んでいた。

「なんや?」
「海さんが仰っていたのですが…私の夢は…本当にフェリオと繋がっているようなのです」
『なにぃ!?』
「あ…昨日…そういう話に…なったの…」
「どういうことや!?」
カルディナが海の両肩を掴んだ。

「私の夢の中で…アスコットは…自分の夢だって…」
『…』
カルディナは皆の方を見た。
シエラも驚きを隠せなかった。

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