「つ、繋がってるって言っても、大したことないわよ!!」
海は何か慌てている様子だった。
「だ、大体、それがどうしたっていうのよ!!」
「ヒカルとフウもそうなのだよな?」
「ちょっと!!無視!?」
そうみたいで。
「う、うん…」
「ですが…」
「分かっておる。…ふと気になっただけだ」
『え?』
「セフィーロの伝説とランティス達のいるセカイアの伝説は似ている…だが、大きな差がある」
「それって…プレーリーのこと?」
「あぁ。今のところ、それが一番大きな差であろう」
「う、うん…でも…」
光が何か言おうと思ったとき、クレフは杖を地面に突いた。
『?』
彼が書いたのはただの線。
「クレフ?」
「この線は…?」
「ここを魔法騎士…お前たちがセフィーロに来た時、これを伝説が成就されたときとする」
線の端にそれぞれ点をマークした。
「アスコットの魔獣が初めに襲ってきたのをここだとすると、ここからが分岐点となるな」
『分岐点…』
「世界の時間から見ればほんのササイな差かもしれないが…このことがキッカケで」
クレフはそう言いながら、もう一本の線を書いた。
「伝説がズレてくれてくれれば…な」
『…』
「バタフライ効果…ですか」
『バタフライ効果?』
地球人も聞いたことのない言葉。
「蝶が北京で羽ばたいて、それによって生み出された気流が1ヵ月後、ニューヨークでハリケーンのような嵐を生む可能性もある、というものですわ」
風はサラリと説明した。
が、何人もの人間が首をかしげた。
「北京で蝶が羽ばたくだけで」
「ニューヨークが大嵐に!?」
「あくまで可能性なんです」
「ペキン?」
「ニューヨーク?」
「なんやそれ?お嬢様方の世界の地名か?」
「えぇ。二万キロ以上離れております」
『…二万キロって?』
単位の問題もあるらしい。
「ん〜と…ようはとんでもなく遠いということですわ。セフィーロからだとおそらく隣国に到達する距離ですわ」
『なにぃ!?』
「な!?こ、こんな小さいチョウが羽ばたくだけで」
「隣国に嵐を生むやとぉ!?」
嵐の意味はフェリオから聞いていたらしい。
「んんんんなアホな!!」
「でも、もはやそれに賭けるしかないだろう」
クレフがそう述べた。が…
「あか〜ん!!セフィーロで蝶が飛んどるだけでチゼータが大変な目にあうんやないかぁい!!」
「そ、そういう意味ではない!!」
カルディナにズズィと迫られれば迫力満点。
クレフは少しビビッた。
「プレーリーが死ななかったことが、私たちの伝説とは違う道を辿るかも、と…?」
プレセアの言葉にクレフは頷いた。
「…」
プレセアは胸に手をあて、キュッと握り締めた。
「そういやぁ朝飯食ってなかったからな」
「そんな状態で魔法を使えば心を多く消耗して当然、か」
「モコナ、食べ物出して」
「ぷぅ!!」
セカイアでようやく朝ごはん。
朝から戦っていたため、いつもよりも多くの朝食が出てきた。
ただ、地球ではコレをインスタント食品と言うのだが…。
「今どの位集まったんだ?」
「大きなカケラは集まってきてるけど、完全じゃないわ」
「そこに小さな欠片が必要になってくるのか…」
ハァ…と三人はため息をついた。
「ぷぅ」
モコナはお茶も出してくれた。
『ありがとう』
三人は受け取り、ズ…と飲んだ。
「アスコットもランティスもまだ意識を失ったまま、か…」
「そういやぁ…さっきのなんなんだろうな」
アリーナがパンを頬張りながら。
「ん…アレか」
フェリオはパンを手にした状態。
「魔物の死骸が突然光って…」
「球になったかと思えば今度は空に向かって行きやがった」
「俺も詳しい話は知らないが…ちょっとだけ聞いたことがある」
『え?』
「あれは…死者の魂を弔う魔法らしい」
「魂を…」
「弔う…?」
「あぁ。…あれも魔物じゃなくて魔獣だったんだろ」
「だが、仕方ないだろ。敵だったんだからな」
「…」
フェリオは睨むような、訴えるような横目でリームを見た。
「俺たちの旅は−」
フェリオはパンを頬張った。
「誰かが死んで良い旅じゃねぇよ」
モグッとしながら言葉を続けた。
「味方も敵も、誰も死なせない」
フェリオの瞳にまた一つの強い意思が宿った。
「…」
リームはその瞳を見ながら、アムッとパンを頬張った。
プレーリーは伝説の真相、と言うには早すぎるが、"一例"を知っている。
"誰も"とはメルビルも指すんだろう。…愛する人の仇。
彼女が旅に同行する理由の一つ。
クリーシャを元に戻すため。…例え彼が自分に振り向いてくれなくても。
彼女の中に、改めて大きな意思が。
『…』
目を開けたのはほぼ同時だった。
見えるのは雲一つない、青い快晴。
二人はムクッと体を起こした。
「お。よぉやく起きたか」
「たく…いつまで寝てるんだよお前らは」
「ほら、朝ごはんあるわよ」
「ぷぅ!」
「…」
アスコットは4人(?)を見た後目を瞑り、そしてまた開けた。
「いただきます」
「…」
ランティスは何も言わず、パンを自分の口の中に入れた。
5人は今後の予定を話し合うことにした。
「お前はどうするんだ?」
フェリオはリームに訊いた。
このままパーティに加わるのか、それとも別行動をとるのか。
「そうだな…俺は魔法騎士になれなかったようだし…別行動を取るさ」
「別行動?」
「一回村に帰って、村長にお前たちの事を話す。…セカイアは救われる、ってな」
彼女は少しニッといながらそう言った。
『…』
セフィーロの"伝説"を知っている彼らはその言葉に頷けなかった。
セカイアを救うには柱であるリュビを殺さなければならない…柱がセカイアよりも大切なモノを想っているのだから。
伝説の真相を話そうか、と思った時だった。
「全くの他所から来たお前たちには何もできなかったが…がんばれよ」
『あ』
リームはスックと立ち上がった。
「じゃぁな、伝説の魔法騎士。また会おうぜ」
リームは背を向け、歩み始めた。
彼女は自分たちを信頼してくれている、いや信用だろう。
応えられるのだろうか。彼女の期待に。
真相を伝えるべきか。例えそれで自分達とも再び戦う第三者になろうとも。
結局、彼女の背中が遠くなっていくのを黙って見送るしかできなかった。