ランティスは何も問わなかった。
二人が何かをしてプレーリーを怒らせたのがなんとなく分かったからだ。
分かっていることは訊かない。
続いて乗り物を見た。
「…砂か」
「そうなのよ。それを除去しようとしてたらあの二人がうるさくてね」
「…」
ランティスはプレーリーから離れ、手に魔力を込めた。
「ランティス?」
「招換来物」
ランティスの手に大量の砂が出てきた。
「ランティス!?ちょっとあなた何を!?」
「ぷぅ!!」
「え?」
プレーリーが振り返ると、
「乗り物がキレいに…まさかランティス!?」
バッと彼の方を見た。
彼は平然と立っていた。
足元埋まってるけどね。
「ランティス!!足元!!」
「…」
彼は言われて下を見、あぁ、とつぶやいた。
気づいてなかったのか…?
砂は排除された。あとはこれから凄腕のメカニックに任せる。
プレーリーは気を引き締めなおし、メガネラチェットレンチを握った。
「行っくわよ〜」
こうして、乗りものは修復完了となった。
「ぷっぷぷ〜♪」
モコナは大喜び。
「ぷぅ!!」
「あら」
「…!?」
モコナからのお礼のキス。
プレーリーは慣れている様子だが、ランティスは戸惑っていた。
なにせファーストキスの相手だから…
「導師だけで太刀打ちできるのか…!?お前たち、そいつは頼んだぞ!!」
『ラファーガ!!』
「…ウチは残ったるで」
カルディナは腰付近からナイフを出した。
「もっとも、コレでイケるかどうかは分からんけどな」
カルディナは汗一つたらして笑った。
「大丈夫だよ」
光は剣を構えた。
「私たち、魔法騎士なんだもの」
「セフィーロを守ることが私たちの使命なんですから」
「お嬢様方…」
「と…言うわけで!!紅い稲妻!!」
「蒼い竜巻!!」
「緑の旋風!!」
『閃光の螺旋!!』
光達も魔物に容赦なく襲い掛かっていた(なんて表現だ)。
魔物は大きな断末魔を上げながら消滅した。
「…強なっとんねんなぁ」
カルディナは彼女たちの心の成長に驚いていた。
「多分アレ、ウチらの不安が生み出したものなんやろうけど、それをいとも簡単に倒してまうんやもんなぁ」
『え?』
「だってあないに強い魔物やってんで。そんなんウチらが生みだしたに決まっとうやないか」
「そっか…不安が魔物を生むんだった…」
「光が柱を消してもそれは残っているのね…」
「意思が全てを決める世界…だから平和を祈れば平和になり、不安になれば魔物が徘徊しますわね…」
「ま、な。せやからラファーガは導師達の所に行ってん」
「導師!!」
ラファーガがクレフを見つけた。
彼は死んだように寝ていた。
ラファーガはクレフとプレセアの手首の脈に触れた。
「…ホォ…」
二人とも心臓は普通に動いている。
「お前は…まだ姉のもとには行かせない…!!」
心身ともに限界を訴えていた。
何かが軋みまくっている感覚だった。
「プレセア…エメロード姫…力を…貸してくれ…!!」
届きようのない懇願。
だが、願わずにはいられなかった。
しかしそれでも"限界"を感じざるを得なかった。
太いレッドゾーンの悲鳴。
オーバーレブ(エンジン回し過ぎって意味)を長時間続けると、エンジンが壊れる。
クレフは昔からレッドゾーンに突入することが多かった。
それは自分の身を犠牲にしてでも守りたいものがあったから。
しかしそれは本人以外を心配させる以外の何物でもなかったが…
今回は違う。
「私は…お前を失うわけにはいかない!!」
全ての"無理"を無視した。
クレフの体が光る。彼の魔力が収まりきれていないことの証。
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
シエラの体も光りだし、そして…
クレフは力尽きて倒れた。
だがそれは偶然か否か、彼女の胸に頭を預ける形になってしまった。
「魔物は!?…導師が倒されたのか」
破片すら残っていない。
そして周りの木も結構倒れている。
魔力のない彼だが、とんでもない魔法を使ったことはなんとなく分かった。
「さて…」
ラファーガは剣をしまい、肩を鳴らした。
『クレフ!!プレセア!!』
4人が見たのは、二人がラファーガの肩に担がれている姿。
ラファーガは平然とした顔で運んでいるが、足取りを見れば実はそうでもなさそうだなと分かる。
「心配ない。意識を失っているだけだ」
「魔物は!?魔物はどうなったんですの!?」
「いなかった」
『え?』
「おそらく導師が倒されたのだろう」
『クレフ!?』
"倒された"…敬語って難しい…。
「魔物の姿はなかったが周りの木々が倒れていた。消滅したのだろう」
「消滅…」
「私が駆けつけたときには全てが終わっていた、ということさ」
二人を抱えたまま、城に戻ろうとするラファーガだった。
『ン…』
フェリオとアスコットは意識を取り戻した。
「あ。起きた」
『ヒィッ!!?』
抱き合って怯える二人。
一体どんなセッカン喰らったんだよ…。
「さて、行くわよ」
スッキリしたプレーリーとは対照的に…
『は、はいっ!!』
すっかり、部下になってしまった二人。
ランティスは心の中で少し唖然となってしまったが、気にしない。
「あ、あの…」
アスコットがおずおずしてる。
「何?」
「フェ…フェリオの剣…なん…だけど…」
虐待を繰り返し受けてきた子供のようだった。
まぁ実際に折檻喰らったし、実年齢は子供だし。
すっかりプレーリーに怯えてしまっているのだ。