創師
オートザム視察
「プレセア、オートザムに行ってみないか?」
クレフの突然の提案に戸惑った。
「あの…どうしてですか?」
セフィーロ復興がようやく終わりを迎えたときのことだった。
「私とランティスはオートザムに視察に行こうと思う。お前もどうかと思ってな」
クレフは少し微笑みながら語る。
「これからのセフィーロは色々なことを学ばなければならないからな」
クレフは空を見上げていた。
オートザムの戦艦、NSXがやって来た。
橋渡役になってるらしい。
ランティス以外は初めてNSXに搭乗した。
「ようこそNSXへ」
右手を折りお辞儀をする人物。
ジェオ・メトロ。現在はNSX艦長を務めている。
他の乗組員はセフィーロからの客人に敬礼をしている。
プレセアは創師としての興味が溢れていた。
なんせ高度に機械化されている国、オートザムの戦艦に乗っているのだ。
ジェオにより貴賓室に通されるが、プレセアは艦内見学を申し出た。
「あの、艦内の見学をしたいのですが」
「見学?」
ジェオはそれが意外だった。
「オートザムまで2日はかかるから、ゆっくり休んでくださいよ。貴方達は大切な客なんだから」
「2日もあれば、ゆっくり見学もできる、ってことですよね」
「こんな軍艦、見学してどうするんです」
「あなたたちには見慣れてるかも知れないけど、私は初めてですから…」
「まぁそんなに言うなら良いですが…でもこいつは軍艦だから見せられない部分もありますよ」
「見れるところで構いません」
ジェオの案内でプレセアはNSXを見学している。
レーダーやエンジン、そしてGTO等を見ていたプレセアの目は子供のようだった。
「機械に興味があるなら最初から言ってくれっつの。おいザズ!!」
「どうしたんだ?」
「悪いがこのねぇちゃんを案内してやってくれ。機械への興味はお前並だ」
「へぇ。よし分かった。引き受けてやるぜ」
「頼むぜ」
こうして案内役が代わった。
「俺はザズ・トルク。このNSXのチーフ・メカニックだ」
「私はプレセア。宜しくねザズ」
「こちらこそ。で、どんな機械が見たいんだ?」
「そうねぇ…とりあえず全部かな」
「全部!?…なるほど、ジェオの言ったとおりだ…」
「何が?」
「機械への興味は俺並だって」
こうしてNSX探検は続く。
機械の構造やシステムはザズにより少し具体的に説明される。
だがそれを真剣に聞き、プレセアは武器や道具を作る際の参考にしていた。
2日後、オートザムの基地に到着した。
そこにはオートザムの大統領が。
「ようこそオートザムにおいでなさった。あまり良いところではないかも知れませんが宜しくお願いする」
「こちらこそ、できる限り力になれるように努力することを約束する」
クレフと大統領はガッチリと握手を交わし、その様子がTVでも報道されていた。
クレフ、ランティス、プレセアはオートザムの各所を廻ることにした。
「我々が考えていたよりも深刻なようだな…」
「だからイーグルは柱となり、柱システムを解明しようとしていた」
「でも…オートザムに柱があったとしても、これを変えられるの?」
「…」
二人はプレセアの意見に答えることができなかった。
意思の世界かもしれないが、仕組みが異なる。
柱一人でオートザム全体の精神エネルギーを賄うことは到底無理だろう。
そのレベルにまで達していた。
「とりあえず、精神エネルギーをどう節約するかを考えるべきだな」
クレフは当面の目標を考えた。そこで各所を廻ることにしたのだ。
発電所とでも言うべきか。電気らしきものを作っている建物がある。
人々の生活には欠かせなくなってきており、需要が高い。
その為精神エネルギーの消費も大きい。
「これ…セフィーロの鉱物でなんとかなるかもしれないわね」
プレセアはジェネレーターとでも呼ぶべき部分を見てそう思った。
「本当か?」
ランティスが横にいる。
「えぇ。グラシアという鉱物が発するエネルギーに近いわ」
「聞いたことがないな」
「そりゃぁ、あなたは専門家じゃないですもの」
珍しいコンビの会話にクレフは意外、という表情を見せるが、すぐに微笑んだ。
ランティスは確かに孤独を好むが、光との出会い以降、また元の彼に戻りつつある、と。
次にやってきたのは工場。移動用のホバーを作っている。
プレセアは流れ作業の工程を見ていた。
ベースとなる骨格が流れていき、次々と部品が装着され、完成していく。
彼女は創師である。ここで改めて"物を創る楽しさ"を実感した。
色取り取りのホバーが出来ていくさまは、見ていて飽きなかった。
クレフたちはオートザムの幾つかの街に出た。
自分達に何ができるかを考える。
しかし今結論は出なかった。
「何回か来て、何かを見つけていくしかないかも知れないな」
クレフは無力感に襲われかけたが、とあるものを見つけた。
諦めの表情をする人と、諦めない強い瞳を持つ人。
諦めた表情の人の心を読むと、精神エネルギーが少ないことが分かる。
逆にやせてはいるが諦めていない人の精神エネルギーの量は多い。
「まさか…もしかしてそうなのか!?」
「導師?」
「考えてみればオートザムもセフィーロと同じ世界だ。そうであってもおかしくはない!!」
「導師!?何か分かったのですか!?」
「大統領の所へ行くぞ!!」
大統領の職場。
そこには戦死した息子の写真が飾られている。
「大統領。もしかしたら案外早く解決するかもしれません」
クレフのその言葉は大統領を驚かせた。
「本当ですか!!」
「まだ決まったわけではないが、可能性が高い!!」
「一体なんです!?」
「…信じる心です」
「信じる心!?」
部屋の外。応接間らしき場所でランティスとプレセアは待機していた。
「まさか信じる心で救われるっていうの?」
「分からん。まだ可能性の域を出ていない」
「でも…だったら今ごろオートザムもセフィーロと同じようになってるはずよ」
「お前も信じられないようだな」
「え?」
「だが確かに同じ世界にあるとはいえ全てが同じとは限らないかもな」
大統領の部屋にて。
「信じる心が力になる…?」
「我々の住んでいるセフィーロでは、その心の強さで全てが決まる」
「だがしかし…」
「この世界ができたとき、もしセフィーロからでき、最後がオートザムだとしたら?」
「どういうことです?」
「オートザムでも通用するかもしれん」
「…分かりました。会議を開き、議論していくことにしましょう。どうやって国民全員が信じるかを」
「あぁ。頼む」
やがてセフィーロに戻る日がやってきた。
彼女は色々なものを見せてもらったお礼がしたかった。
オートザムで採れる鉱物を手にした。
彼女の服装は武器を創るそれだった。
彼女は踊りだした。その華麗な踊りに誰もが目を奪われた。
彼女が創ったのは、ある一人の男の像だった。
その名はイーグル・ビジョン。かつてのオートザムの英雄。
セフィーロを救うために協力してくれたこと、何よりオートザムを救うために戦った彼に敬意を表して。
その像の笑顔は、彼そのものだった。
今のセフィーロ最高位の創始に誰もが拍手を止めなかった。
彼女がNSXに乗り込み、NSXが発進しても、拍手で見送った。
セフィーロにて。彼らは視察業務を終えていた。
「プレセア、お前のオートザムに対する感想を聞こう」
クレフが書類に目を通しながら質問する。
「確かにあそこの問題は深刻です。ですが優しい人々ばかりなんですね」
「そうだな。イーグルも爽やかな笑顔を持つ青年だったよ」
クレフはかつてFTOが爆発した場所を見ていた。そこにはもう面影は無い。
「導師」
「なんだ?」
プレセアの、いやシエラの顔は自信に満ち溢れた笑顔になっていた。
「今度のオートザム視察で決めたことがあります」
「なんだ?」
「いつか必ず、姉を超えてみせます。セフィーロ最高位の創師として」
「あぁ」
クレフの顔は今までで最高の笑顔だった。
その後、彼らは約束の握手をガッチリと交わした。
だが、そこで思わぬ展開となった。
なんとクレフから口付けが来たのだ。
「!!!!!」
シエラは真っ赤になった。
「期待してるぞ、シエラ」
そう言ってクレフは外に出た。
ある日の昼下がりのことだった。
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